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NASA探査衛星「TESS」の観測データから新たな手法で「周連星惑星」を発見

sorae.jp / 2021年11月19日 17時12分

連星を公転する太陽系外惑星「TIC 172900988 b」を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

【▲連星を公転する太陽系外惑星「TIC 172900988 b」を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのVeselin Kostovさんを筆頭とする研究グループは、「かに座」の方向およそ820光年先で連星を公転する木星サイズの太陽系外惑星「TIC 172900988 b」が見つかったとする研究成果を発表しました。

映画「スター・ウォーズ」シリーズの舞台のひとつ、双子の太陽を持つ惑星「タトゥイーン」のように連星を公転する惑星は「周連星惑星」と呼ばれています。人類はすでに4500個以上の系外惑星を発見しており、そのなかには木星サイズの系外惑星はもちろん周連星惑星も幾つか含まれていますが、TIC 172900988 bはその公転周期と比べて短期間の観測データから発見されたという点で特筆すべきものとなったようです。

■連星を組む2つの恒星を5日間隔で横切った系外惑星、短期間の観測データから発見

NASAによると、TIC 172900988 bは直径が木星とほぼ同じ(地球の約11倍)で、質量は木星の2.6~3倍程度と推定されています。主星である「TIC 172900988」は太陽よりも1回り大きな2つの恒星からなる連星(※)で、TIC 172900988 bはこの連星を約200日周期で公転しているとみられています。

※…公転周期約19.7日の食連星

研究グループは、NASAの系外惑星探査衛星「TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)」の観測データからTIC 172900988 bを発見しました。TESSは系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに系外惑星を検出する「トランジット法」を利用して、系外惑星の探査を行っています。

▲系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画▲
※連星ではなく単一の恒星の場合が示されています(Credit: ESO/L. Calçada)

TESSには4台のカメラが搭載されていて、「セクター」と呼ばれる24度×96度の範囲を一度に観測します。セクターは全天で26個設定されていて、TESSは1つのセクターを27日間観測し続けます。NASAによると、TESSの観測によってこれまでに150個以上の系外惑星が見つかっており、約3500個の系外惑星候補が確認を待っているといいます。

研究に参加したアメリカの惑星科学研究所(PSI)シニアサイエンティストのNader Haghighipourさんによると、トランジット法で検出された系外惑星の軌道を決定するには、少なくとも3回のトランジットを観測しなければならないといいます。TIC 172900988 bの公転周期は約200日なので、200日間隔で起きるトランジットを3回観測しなければならないことになります。

NASAの系外惑星探査衛星「TESS」を描いた想像図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)

【▲NASAの系外惑星探査衛星「TESS」を描いた想像図(Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center)】

ところが、前述のようにTESSが1セクターを観測する期間は27日間しかありません。この期間内にたまたまTIC 172900988 bが起こしたトランジットを捉えたとしても、次のトランジットが起きる200日後にはこのセクターを観測していないため、通常ならTESSの観測データだけではTIC 172900988 bの軌道を知ることはできません。

それにもかかわらず、研究グループがTESSの観測データをもとにTIC 172900988 bの軌道を決定できた理由は、地球との位置関係にありました。研究グループによると、地球からはTIC 172900988 bが連星をなす2つの恒星を両方とも横切る様子を観測できるといいます。研究グループがTESSの観測データを分析したところ、TIC 172900988 bが片方の恒星を横切った約5日後に、もう片方の恒星を横切っていたことが明らかになりました。

TIC 172900988 bによるトランジットの様子を示したイメージ図。連星を組む恒星のうち片方(右)を横切った約5日後に、今度はもう片方(左)の恒星を横切る様子が検出された(Credit: PSI/Pamela L. Gay.)

【▲TIC 172900988 bによるトランジットの様子を示したイメージ図。連星を組む恒星のうち片方(右)を横切った約5日後に、今度はもう片方(左)の恒星を横切る様子が検出された(Credit: PSI/Pamela L. Gay.)】

実は、研究グループは連星で観測されたトランジットから周連星惑星を特定する新しい手法を研究しており、1つのセクターを観測する27日間に2回のトランジット(連星をなす2つの恒星で1回ずつ)が捉えられていれば、TESSの観測データから周連星惑星の公転周期を推定できるとする研究成果を2020年に発表していました。この手法を用いたことで、今回のTIC 172900988 b発見に至ったというわけです。

Haghighipourさんによると、周連星惑星は地球から見て1つの恒星だけを横切るとは限らないため、観測されるトランジットの様子は単一の恒星を公転する系外惑星と比べて複雑だといいますが、研究グループはその特性も利用して周連星惑星を見つけ出しました。Haghighipourさんは「この発見によって、私たちの新たな手法が機能し、より多くの系外惑星発見をもたらすものだと示すことができました」とコメントしています。

 

関連:2つの恒星の周囲を公転する太陽系外惑星、TESSの観測史上初の発見

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: PSI / NASA
文/松村武宏

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