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約33光年先の恒星でスーパーアースを2つ発見、大気の観測に期待

sorae.jp / 2022年6月20日 21時31分

【▲ 2つのスーパーアース(地球よりも大きな岩石惑星)を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

【▲ 2つのスーパーアースを描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

アンダルシア天体物理学研究所(IAA)/シカゴ大学のRafael Luqueさんを筆頭とする研究チームは、太陽に比較的近い約33光年先の恒星を公転する2つの太陽系外惑星を発見したとする研究成果を発表しました。研究チームによると、今回見つかった系外惑星は大気の観測に適しており、本格的な観測を開始した「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡による観測に期待が寄せられています。

■サイズは地球の1.2倍と1.5倍、ウェッブ宇宙望遠鏡による大気の観測に期待

今回発見が報告されたのは、「ふたご座」の方向32.6光年先にある恒星「HD 260655」を公転する系外惑星「HD 260655 b」と「HD 260655 c」です。2つの系外惑星はどちらもスーパーアース(地球よりも大きな岩石惑星)とみられており、半径・質量・公転周期はそれぞれ以下のように発表されています。

●HD 260655 b
・半径…地球の約1.240倍
・質量…地球の約2.14倍
・公転周期…2.77日

●HD 260655 c
・半径…地球の約1.533倍
・質量…地球の約3.09倍
・公転周期…5.71日

地球に近いサイズの岩石惑星ということで生命の居住可能性が気になるところですが、表面温度は「HD 260655 b」が摂氏435度、「HD 260655 c」が摂氏284度と推定されており、地球の生命にとっては厳しい環境のようです。なお、主星(親星)の「HD 260655」は、半径と質量がどちらも太陽の半分弱(約0.44倍)、表面温度が摂氏約3500度の赤色矮星(スペクトル型はM0.0 V)とされています。

2017年に約41光年先の赤色矮星「TRAPPIST-1」で発見が報告された7つの系外惑星をはじめ、既知の地球型系外惑星の一部はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測対象になっています。系外惑星の大気を通過してきた主星の光をウェッブ宇宙望遠鏡で捉え、そのスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を調べることで、系外惑星の大気を構成する分子や大気中に含まれている物質などが明らかになると期待されています。

研究チームによると、「HD 260655」は赤色矮星としては明るく、太陽からの距離も比較的近い星であることから、「HD 260655 b」と「HD 260655 c」も系外惑星の大気特性を調べるのに適しているようです。ウェッブ宇宙望遠鏡による両惑星の観測が行われれば、大気の有無や組成についての貴重な情報が得られるかもしれません。

現在のところ「HD 260655 b」と「HD 260655 c」に大気があるかどうかはまだわかっていませんが、もしも大気があるとすれば主成分は水素だと考えられています。Luqueさんは「岩石惑星の大気に関する知識を深めることは、地球のような惑星の形成と進化を理解するのに役立ちます」とコメントしています。

■系外惑星の観測に用いられるトランジット法&視線速度法

研究チームは今回、「トランジット法」という手法で系外惑星の探査を行っているアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査衛星「TESS(テス)」の観測データから「HD 260655 b」と「HD 260655 c」を発見し、その半径を測定しました。また、W.M.ケック天文台の「HIRES」やカラー・アルト天文台の「CARMENES」といった分光器による主星の観測データを使って「視線速度法」による分析を行うことで、両惑星の質量を測定することができました。

「トランジット法」とは、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から系外惑星の公転周期を知ることができます。

また、トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、系外惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

▲系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画▲
(Credit: ESO/L. Calçada)

もう一つの「視線速度法(ドップラーシフト法)」とは、系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。

惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、周期的に変化します。こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測を行うことで検出されています。視線速度法の観測データからは系外惑星の公転周期に加えて、系外惑星の最小質量を求めることができます。

▲系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画▲
(Credit: ESO/L. Calçada)

 

関連:ハッブルが探る超高温系外惑星「ウルトラホットジュピター」の異常気象

Source

Image Credit: NASA/JPL-Caltech IAC - Two new rocky planets in the solar neighborhood NASA - Two New, Rocky Planets in the Solar Neighborhood

文/松村武宏

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