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消滅時効が完成しても貸し倒れにはならない?(松嶋洋)

相談LINE / 2017年2月24日 21時0分

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民法上、時効という制度があります。これは、ある事実が一定期間が経過したことをもって、その事実が法律上有効になるという制度を言います。いつまでたっても法律上の効果が確定しないと、取引が不安定になることからこの制度が設けられており、時効には大きく分けて取得時効と消滅時効があります。
取得時効とは、一定期間の経過によって法律上の権利を与えるものをいい、例えば不動産を所定の期間占有していれば、その占有者が取得時効によって不動産を取得できることになります。
一方で、消滅時効とは、一定期間の経過によって法律上の権利が消滅するものをいい、例えば売掛金の回収をせず所定の期間放っておけば、その回収が消滅時効によって不可能になることになります。

■時効と貸倒損失の関係性

消滅時効については、よく貸倒損失との関係で問題になります。先ほど申しました通り、消滅時効が完成すると債権の回収はできませんので、消滅時効が経過した段階で債権の貸倒損失が認められるのではないか、という疑義が生じます。

この場合の消滅時効の期間ですが、債権の種類ごとに分かれており、代表例を挙げますと、現状のところは以下の通りとされています。

1 商売上の債権(商人間の貸付金や未収家賃など) 5年
2 商品の売掛金など 2年
3 交通事故などの損害賠償金 3年

このような定めがあるにしても、実務においては時効の期間が経過しただけでは貸倒損失を計上することはできません。といいますのも、時効には時効の援用が必要とされているからです。

■時効の援用とは

時効の援用とは、時効に関する利益、貸倒でいえば債権を支払わないことですが、それを活用することを債権者に伝えることを言います。このため、上記の期間を経過したとしても、債務者が債権者に払わないと伝えない限り、債権は消滅せず貸倒損失の計上は認められないことになります。

問題になる伝え方ですが、実務上は債務者が債権者に対し、時効援用通知書を、配達証明付きの内容証明郵便で郵送するという方法によります。貸倒損失を主張する債権者としても、このような書面が税務調査においては大きな証拠になりますので、確実性を期すために、これらの書面の提供を債務者に求めるべきと言われます。

■回収の努力も記録に残す

その他、単に消滅時効を主張するだけではなく、回収の努力をしたことも必要になります。回収の努力もせず、時効の完成をただ傍観していた、となれば、債務者に債権を贈与したのと同じとして、寄附金課税のリスクも発生します。

専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。

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