他人の建物を賃借した場合の造作の耐用年数と減価償却の注意点
相談LINE / 2017年10月30日 19時0分
建物を賃借して造作を施す、ということはよくありますが、ここで問題になるのが造作に係る費用については、減価償却の対象になるということです。
税務上、賃借した建物に対する造作は、原則として造作をした建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して合理的に見積もられた年数により、減価償却を行うこととされています。
■造作の資産区分
この場合、その造作は建物に該当するとして減価償却を行うと考えられています。ここで問題になるのは、造作の区分について、誤って建物附属設備として経理してしまう場合です。
平成28年度改正により、従来は定率法という有利な減価償却の計算方法が認められていた建物附属設備について、定額法という不利な減価償却の計算方法で処理することとされました。このため、区分を間違えてしまうと、不利な減価償却の方法で再計算を行う必要がありますので、ミスがないように注意する必要があります。
■見積以外の特例
ところで、賃借した建物の減価償却を行う年数については、①建物について賃借期間の定めがあり、②その賃借期間の更新ができないもので、かつ、③有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、その賃借期間を耐用年数として償却することができるという特例があります。
このようなケースについては、造作を行ったとしても、賃借期間が終了すれば造作に対する利益を享受できませんので、賃借期間で処理できるとされたものです。契約内容を検討し、上記の要件を満たすかどうか、確認する必要があります。
■特例に似て非なるものとして
この特例と、似て非なるものとして、事業用定期借地権により土地を賃借し、自分で建物を建てる場合があります。事業用定期借地権とは、事業用のために土地を賃借する定期借地権であり、定期借地権の一種であるため契約期間が更新できないものです。
契約が更新できないのであれば、土地の上にある建物について、上記に準じて定期借地権の存続期間で償却できる、と考えがちですが、自己所有の建物と賃借する建物は性格が違いますので、上記の取扱いは適用できないとされています。このため、このような建物は通常の耐用年数で減価償却する必要がありますので、注意してください。
■専門家プロフィール
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は税理士向けのコンサルティングを中心に118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開するとともに、法律論や交渉術に関する無料メルマガを配信中。
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