相続税を計算するときと遺産分割協議で揉めたときのそれぞれの財産評価方法は異なる

相談LINE / 2019年11月14日 19時0分

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相続財産をどう分けるか指定する遺言書がなく相続が発生した場合、遺産分割協議において被相続人の財産をどう分けるかで往々にしてトラブルになります。兄弟仲がいいのでこのようなことは起こらないという方も多くいますが、被相続人に財産がある場合、相続は多額の財産を一時に取得できる限られたタイミングですので、おいそれと妥協しません。
最悪のケースとしては、相続財産の総額を計算して、そのうち法定相続分に応じて分割する、ということがありますが、ここでいう相続財産の総額の計算方法は、相続税ではなく、実際に取引されるべき時価によります。

■相続税評価額は相続税や贈与税の計算のみ

税理士でも誤解している方が多いのですが、税理士が相続税の計算上使う、財産評価基本通達に基づく相続財産の財産評価方法と、遺産分割が揉めた場合などに計算する必要がある相続財産の評価(相続税評価額)は異なっています。ごく簡単に言えば、相続税の税額が大きくなり過ぎないように、相続税評価額は時価より2割程度低く抑えられていますが、遺産分割協議などで参照する相続財産の時価は、文字通り、市場で取引されるような価格を意味する時価(市場価格)です。このため、一般的には後者の時価の方が高い金額が算定されます。

あくまでも、相続税の評価額は相続税や贈与税の金額を計算するためだけに使うものです。このため、相続税の評価額で遺産分割協議の際の財産の金額を計算すると、間違えることがありますので注意してください。とりわけ、相続財産の市場価格を計算する際、注意しなければならないのが土地と被相続人がオーナーを務める会社の株(自社株)です。これらはそもそもの金額が大きいだけではなく、相続税評価額は市場価格に比してかなり小さい金額になるからです。

■遺言書があっても揉める場合がある

こういう事情がありますので、遺言書は必ず作成するべきと言われます。遺言書を作っておけば、財産を分けるということに関しては相続人間でトラブルはないことになりますので、修羅場となりやすい遺産分割協議は避けられます。

しかしながら、法定相続人にはもらえる財産の最低額である遺留分がありますので、遺留分を侵害する遺言であれば、後日その侵害された相続人が訴訟を起こす可能性があります、この場合、侵害される遺留分の計算も、上記の市場価格をベースに行いますので、その金額をチェックしておく必要があります。

■専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ 税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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