本当に「戦後最長の景気拡大」? 人手不足を外国人労働者で補う現状

日刊SPA! / 2019年4月8日 15時51分

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― 連載「佐藤優のインテリジェンス人生相談」―

“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆まったく「戦後最長の景気拡大」を実感できません……

★相談者★パイの実(ペンネーム) 会社経営者 男性 56歳

 間もなく戦後最長の景気拡大を記録するようですね。しかし、製造業に携わる身から言わせてもらうと、まったく景気の良さを感じることはありません。コストダウンの圧力は年々強まるばかりですが、それに対して受注量が増えるかといえば、ここ2、3年の深刻な人手不足で生産が追いつきません。

 同業者の中には人手不足を理由に廃業してしまった会社がいくつかあります。改正入管法で外国人労働者が雇いやすくなったら変わるのでしょうか? 中国やアメリカの状況を見ていると’19年も不安でなりません。オリンピック景気はあるのでしょうか?

◆佐藤優の回答

 景気回復が実感できないというのは、ほとんどの国民が抱いている感情と思います。アップルパイにたとえてみるといいでしょう。パイが大きくなっても、中小企業経営者や労働者に与えられる切り身が小さくなったようなものです。こういう状況は、実はバブル経済の頃から始まっています。早稲田大学の橋本健二教授の以下の指摘が興味深いです。

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 一九八六年前後から、地価と株価の急上昇が始まって、日本はバブル経済の時期を迎えた。株価は八五年から八九年の五年間で二・九七倍に上昇した。地価は少し遅れて上昇を始め、八九年の時点では一・二八倍、九一年には一・六二倍となり、東京圏に限れば平均でも二倍以上、都心の一等地は五―六倍にもなった。

(中略)雇用も拡大したが、問題はその中身である。オイルショックのあと雇用は低迷し、一九七八年(一―三月期以下同じ)には有効求人倍率が、パート労働者で○・九三倍、パート以外の一般労働者で○・五二倍にまで低下していた。その後、次第に回復するのだが、一般労働者の求人倍率がわずかな回復にとどまったのに対して、パートの求人倍率は上昇を続け、八○年には一・四三倍(一般労働者○・七五倍)、八五年は一・五三倍(同○・六四倍)、八九年には三・七五倍(同一・○四倍)に達した(『労働経済白書』二○○五年)。

(中略)企業はコスト削減のため、労働力の調達を非正規雇用に頼るようになっていたのである。

(『アンダークラス』37頁)

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 コストダウンの圧力、人手不足に悩まされるという現実は、現代の資本主義システムが抱える構造的問題なので、あなた一人の力で解決することはできません。人手不足は、賃金を今よりも5割多くすれば解決するでしょう。しかし、それでは会社の利益がマイナスになります。そうなると低賃金でも働いてくれる外国人労働者に頼らざるをえなくなります。

 政府が入管法を改正して、単純労働に従事する外国人を受け入れるようにしたのは、そうしなくては日本経済が立ちゆかなくなるという切羽詰まった状況があるからです。おそらく、政府は段階的に外国人の受け入れを増やし、最終的には移民を認めるようになると思います。日本人だけで、現在の生活水準を維持するような経済を運営することはできません。

 東京オリンピック・パラリンピックに向けて、しばらくは景気も上昇しますが、’19年後半になると、’21年以降に対する不安感が高まると思います。米中の対立も貿易・経済だけでなく、政治、軍事を含む全般に拡大していきます。日本としては、外交の舵取りがますます大変になります。

 もっとも、人間は自分自身が生活するのに必要な物資やサービス以上の富を作ることができます。だから、われわれが食べていくことができないほどの危機は生じません。

 ただし、生活水準は現在よりもなかなか向上しないと思います。

★今週の教訓……日本は移民に頼らざるをえなくなるでしょう

【佐藤優】

’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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