お金がなくて介護を受けられない「明日は我が身」の惨状

日刊SPA! / 2019年4月14日 8時54分

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「真面目に働いていたはずなのに、悲惨な老後が待っていた」。これが今の日本の現実なのか。

「65歳以上のいる世帯」の相対的貧困率は27.0%にのぼり(厚生労働省の「国民生活基礎調査」2015)、生活保護世帯の45.5%が65歳以上なのだ(厚生労働省「生活保護制度の現状について」平成29年5月)。



◆お金がないと介護も受けられない実情

 心身が衰えて一人だけでは生活していけなくなったとき、貧困老人たちはどうなるのだろうか。行き着く場所の一つが介護施設だ。月額20万~30万円払えるなら民間有料老人ホームに入れるが、お金がなければ公的な特別養護老人ホーム(特養)などに入るのが現実的。だが特養は満杯で、一施設平均117人もが入居待ちの列をなし(2017年、福祉医療機構調べ)、何年も入れないこともあるのだ。

『絶望の超高齢社会』(小学館/2017年)の著者で、自らも介護施設を経営した経験のある中村淳彦氏は「最もひどいのが『お泊まりデイサービス』。まさに生き地獄でした」と、その惨状を語る。

 お泊まりデイサービスとは、高齢者が通所して日中の介護サービスを受けたあと、そのまま施設に宿泊できるというもの。特別養護老人ホームなどが満杯で入れない人の受け皿として、お泊まりデイサービスが利用されているのだ。

 もともと日中用の施設で、お泊りは介護保険対象外なので規制がゆるく、きちんとした施設とひどい施設の差が大きいと言われている。

 

◆施設で大暴れした認知症の元組長

 こうしたお泊まりデイサービスで、現代の「姥捨て山」のような場面に遭遇したことがあると中村氏は言う。

「ある利用者さんを迎えに行くと、家族が離れのような蔵の南京錠を開けて、中から『早く連れていけ!』と言わんばかりに利用者さんを連れてくるのです。『早く死ね!』とも罵倒していました」

 また、認知症になると、本性が剝き出しになる人が多いという。かつて中村氏の施設には、認知症になった70代のヤクザの元組長がいた。

「認知症を理由に、組織から追放された組長です。全身和彫りにオムツ一丁で施設の中を徘徊し、誰彼構わず暴力を振るおうとする光景は凄惨でした。組長は風呂嫌いだったので、職員が『組長、こちらへどうぞ』などと言ってうまく誘導するのですが、風呂だとわかった瞬間に大暴れでしたね」

◆誰にとっても「明日は我が身」

 また、省庁勤めをしていたという元公務員の70代男性が、当時の地位をかさに周りに威張り散らすさまには辟易したという。

 入浴介助に際して、女性職員に男性器を「触ってくれ」と懇願するようなセクハラは日常茶飯事。認知症ゆえに、本人にはそうした行動をした記憶すら残らない。異常な環境に耐えかねた施設職員による虐待事件も、報道されているものは氷山の一角にすぎないという。

 認知症の人が、威張ったり暴力をふるったり性的な行為をするのは、よくある症状で、本人が悪いわけではない。適切なケアを受ければおさまることもある。だが、介護職員もギリギリの状態で頑張っているため、その余裕がない現場も多い。

 いずれ高齢者になる私たちにとって「明日は我が身」の問題なのだ。

【ノンフィクション作家・中村淳彦氏】

貧困、介護、AV女優、風俗、虐待、借金、自傷などさまざまな社会問題について取材・執筆を行う。最新刊『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)をはじめ著書多数

<取材・文/週刊SPA!編集部>

― [貧困老人]絶望の現実 ―

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