アメリカがずっと日本を守ってくれる、と思う人達の幼稚さ

日刊SPA! / 2019年6月15日 8時54分

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※首相官邸Instagramより

小笠原理恵「自衛隊ができない100のこと 58」

◆護衛艦「かが」でトランプ大統領は感謝を述べた

 5月28日、令和時代の最初の国賓として米国のトランプ大統領が招かれました。天皇・皇后両陛下と会見され、安倍総理と会談を持った後、最終日の訪問先は海上自衛隊の護衛艦「かが」でした。トランプ大統領と安倍総理はともに「米軍、自衛隊」の最高指揮官として日米(自衛隊と米軍)500人の前で訓示をしました。

 これは同時にトランプ大統領が海上自衛官を前に訓示をすることでもあり、安倍総理が米軍を前に訓示をすることでもあります。日米の最高指揮官が互いの強固な同盟関係を確認する強い意思がそこに現れています。同盟軍(自衛隊と米軍)への2人の最高指揮官の同時訓示は強い内外へのアピールになったはずです。

 安倍総理も「日米両国の首脳がそろって、自衛隊、米軍を激励するのは、史上初めてのことであります。日米同盟は、私とトランプ大統領の下で、これまでになく強固なものとなった。この『かが』の艦上に、我々が、並んで立っていることが、その証であります。」と訓示で言っていました。

 護衛艦かがの訪問では、「F-35Aの戦闘機を105機購入」と安倍総理が発表した件や「護衛艦『かが』の空母へのアップグレードとそれに伴うF-35Bの42機の搭載機配備」の購入計画が大きく報じられています。トランプ大統領の「F35など兵器売り込み」という表現の報道がほとんどでした。しかし、そのすぐ後のトランプ大統領の言葉はあまり注目されていません。

 トランプ大統領は「護衛艦かがのアップグレードと戦闘機配備に伴い日米両国がこの地域の様々な複雑な脅威から防衛することを助けます。これは日本の防衛能力の向上のみならず、米国の安全保障も助けるものです。(同時通訳より)」と続けています。さらに、大統領は海上自衛官も含めた全兵士に対して、「全てのアメリカ国民を代表して、我々の国民を守るためにしているすべてのことを感謝します(同時通訳より)」とお礼を言いました。米軍兵士のみならず、海上自衛官もいる場での言葉だったことが最重要ポイントです。

 日米双方が自国を守る能力を高めなければ、このアジア太平洋地域の平和を維持することはできません。米軍だけでは軍拡を続ける中国や核兵器をもつ北朝鮮など様々な脅威に対処することはできません。これまでの秩序が壊される危険を感じるほど、アジア太平洋地域での米中の軍事バランスは均衡してきました。日本の防衛能力の向上はアジア太平洋のみならず、米国の防衛力向上だという認識が大統領の訓示の最後にありました。

 ここには日本も応分の軍事力を持つことを期待するという意思を感じます。

◆同盟国をアメリカは見捨てることがある

 日米同盟、日米安保は日本の防衛力を考える最も重要な条約です。

 昭和26年の平和条約で独立を取り戻した日本は、同時に日米同盟、日米安保条約を米国と締結しました。旧日本軍は戦後、徹底的に解体され、日本には警察予備隊程度の自衛力しかなく、米軍に頼るしかありませんでした。日米安保条約はその後、昭和35年に新日米安保条約(いわゆる60年安保)に改定されます。この新日米安保体制が現在も続き、日本の防衛力を支えています。

 私たちは日本が武力攻撃されれば、米軍が自衛隊とともに必ず戦ってくれると思い込んでいます。昨年、マティス元国防長官は「尖閣諸島の問題は米国の対日防衛義務の適用対象だ」と言っていました。そのような言葉を過信してはいけません。米国が日本を守るためにいつでも自国民の命をささげて戦うと思いますか?

◆国同士の約束に「絶対」はない

 条約など、国同士の約束に「絶対」はありません。評論家の江崎道朗氏は著書「知りたくないではすまされない」で同盟軍が見捨てられる場合の例をあげています。ベトナム戦争末期に米国は同盟国「南ベトナム」に北ベトナムが軍事侵攻してきた際には、武力介入を約束しました。

 しかし、2年後に北ベトナムが軍事侵攻した時、米国は武力介入せず、南ベトナムは滅びました。米国は軍事同盟を破り、同盟国「南ベトナム」を見捨てました。米国は同盟国を見捨てることがあるのです。

 イザという時に必ず米軍が期待通りに動くと妄信するのは浅はかです。日米安保条約や日米同盟があっても、日本は十分な防衛力を持たなければなりません。米国は何度も日本に必要な自衛力を整えるようにと言っています。米国だけではアジアの平和を守ることはできないというメッセージも出しています。

 パートナーとして失格の烙印を押されたらどうなるかを想像してください。日米安保条約の第10条に「この条約が10年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意志を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後1年で終了する」とあります。すでに10年以上経過していますが、日米双方が日米安保を継続している状態です。日米安保が通告後1年で条約を終了できるものだということは知っておく方がいいでしょう。

◆米軍はいつまで日米同盟への依存を許してくれるのか

 日本の頼みの綱である日米安保条約には、日米双方が「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる」という条項があります。日本も軍事力を維持し発展させる義務を負っています。

 米軍が戦争を開始するには「戦争制限法」という法律があり、米国議会への説明、承認が必要です。また、議会が戦争の継続を認めない場合、大統領は“即座”に軍事行動を中止し、軍を撤退させることが義務付けられています。日米安保があっても議会の反対があれば大統領は武力行使できない場合があります。

 米軍への従属を警戒する報道が多いようですが、逆です。米軍がいつまで日米安保・日米同盟への依存を許してくれるのかを心配すべきです。日米安保に頼り切っている我が国は継続して戦う能力を軽視しています。弾薬や燃料の備蓄、戦いが長引いた時の交代要員や物資の輸送能力等にはほとんど予算をかけていません。日米安保で米軍が助けに来るまでの僅かな期間を耐えきればよいと考えています。

 「最低限の軍事力しか持たないこと」が我が国の原則です。防衛予算を増やし備蓄、輸送、人員等のロジスティクスを考えなおし、自衛隊だけでも迫りくる危機に対処できるように自立すべきです。同盟国でも見捨てられることがあることを知っておくべきです。

【小笠原理恵】
国防ジャーナリスト。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰

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