「月20万で全てを犠牲にしなければならない」働き方改革の理想と現実

日刊SPA! / 2019年6月18日 15時54分

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 毎月50万もらって生きがいなしか、毎月30万だけど仕事が楽しいほうがよいか――。関西の大手私鉄・阪急電鉄の「働き方啓蒙」に関する中吊り広告が、その文言によって大炎上した。ネット上では「毎月30万で生きがいなし」「20万で生きがいもない」などといった、若者の置かれた状況を物語る意見が飛び交っているが……。

「働き方改革など、あくまでも政府と企業側、経営者側が旗振る制度であり、彼らの都合に合わせて語られているだけ。我々労働者側の本音は『賃金を上げろ』の一択であり、細切れな休みを強要されたり、残業を持ち帰って処理しなければならない労働者の置かれた実態を“お上”は全くわかっていないのではないか?」

 こう吐露するのは、都内の中小広告代理店に勤務する村田俊郎さん(仮名・30代)だ。

◆労働者の実態を理解していない、上辺だけの“良い働き方”

 村田さんは働き方改革によって、月に7~8万円はもらえていた残業代がほぼゼロになり、手取りは20万台前半になってしまった。休日に顧客から連絡を受けることも多いが、わずかな対応でも「業務」として報告しなければならず、その分は平日の勤務時間から差し引かなければならない。

 タイムカードによる勤怠管理が厳格化されたことで、わずかにでも勤務時間が超過してしまえば、上からの猛烈な叱責を受けるハメになる。

「働き方改革が労働者のためのものではないのは明らか。改革を強いられている会社の上司たちは、社員の休息を“時間”という数字でしか見ていません。土日に仕事をした分を、金曜の午前休に振り替えろとか言われてもね……。子どもと過ごす時間もなく、とても休息をとったと実感できません」

 改革の目標からは遠く外れ、改革のおかげでやりがいも給与も、プライベートまで犠牲にせざるを得ない労働者たちのこうした実情を知らないからこそ、今だに「やりがいか給与か」などといういかにも上から目線の言説を、いかにもな“美談”として広告に載せたのではないか、ということだ。

◆阪急電鉄の炎上を関西エリアの人はどう見る?

 一方、騒動の発端となった関西エリアでは、こうした格差がよりローカルな目線で語られているようでもある。

「阪急の広告ってのがミソやね。尼崎や西宮、神戸市内では阪急沿線とJR、阪神沿線では生活水準も文化も、天と地ほど差があるんです。阪急はカネ持ち、その他は庶民っちゅーイメージですわ。阪急に乗るような人たち、例えば芦屋に住んでるエリートやマダムにとってみりゃ、うちは80万もらっとるけど仕事が大変やわ、庶民はやりがいがあってええわ、なるんちゃいますか?

 私みたいな阪神電車ユーザーなんか、工場で働いて月10万円代の給与で生きるか死ぬかでしょ? そもそも働き方云々考える前に、今日の飯、銭の支払いのことで頭がいっぱい。電車に乗るのも節約せなあかんのに、広告なんて見てる暇ない。阪急に乗る方々は、そうやって私らのこと見下してんのかなって思いますね(笑)」

 神戸市に住み、尼崎市内の鉄鋼メーカーで働く桑野四郎さん(仮名・50代)がこう話すように、カネ持ちから見た「働き方」と、庶民が思う「働き方」へのギャップ。こうした格差を国民全体が感じているからこその「広告大バッシング」なのではないか。<取材・文/山口準>

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