「安倍-枝野体制」という、ふざけた共犯関係/倉山満

日刊SPA! / 2019年7月29日 8時30分

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第25回参議院選挙の応援演説後、支持を訴える安倍晋三首相。最大の争点だった「景気回復」も望めぬ今、我々有権者に、「自民党」の何を支持しろと言うのだろうか(写真/時事通信社)

― 連載「倉山満の言論ストロングスタイル」―

◆今こそ、ふざけた政治に宣戦布告すべきだ。「安倍枝野体制を不信任する!」と

 本稿執筆時に参議院選挙の結果は出ていないが、大勢は決まったようだ。残念ながら、安倍内閣を大敗させ、消費増税を阻止する、という結末は迎えられそうにない。
(編集部注:開票結果は、改選124議席中、与党の自民57+公明14が改選過半数を占めた。野党は、立憲民主17など合計53を獲得)

 今回の参議院選挙は、野党がよほどの愚か者でなければ、安倍内閣は間違いなく退陣だった。選挙公約で「消費増税10%と憲法9条改正」を掲げる。増税の方は財務省に逆らえないので言わば開き直りの形で堂々と掲げたが、さすがの自民党も九条論議からは逃げた。

 野党からしたら、「安倍おろし」の好機到来だ。デフレ期の増税の不可を説き、国民に訴えれば間違いなく支持を得られ、上手くすれば衆参同日選挙に追い込んで、一気に政権奪取すら夢ではない展開だった。

◆政権を取る気がない野党

 この状況で、野党第一党である立憲民主党党首の枝野幸男は何をしたか?

 そもそも、勝つ気が無かった。

 枝野も、悪い頭なりにソロバンをはじいた。今回の自民党は6年前に勝ちすぎているので、議席減を何議席に抑えられるかと言う選挙だ。野党第一党の座を維持しておけば、何もしなくても票は自分に流れる。10議席も増えれば躍進となる。それより、他の野党に対して優位に立つことだ。

 下手に政権など目指せば反動も大きいし、何かの間違いで権力を握ってしまえば、責任をとらなければならない。だったら、最も無責任な立場で最大の権力をふるえる、野党第一党の地位を確固たるものにする戦いに邁進すべきだ。

 これで許されるのだから、日本に民主主義など存在しない。そして、こんな人間が野党第一党に居座る限り、マトモな野党は伸びられない。「まさか野党に任せるわけにはいかない」と、自民党の政権は半永久的となる。

 これを昔は、「55年体制」と呼んだ。常に与党でいたい自由民主党と、政権は取りたくないが野党第一党の地位を守りたい日本社会党の談合体制だ。自民党と社会党は、表では反対党を装いながら、裏では常に談合を繰り返していた。

 やる気のない野党第一党と、消去法で選ぶしかない与党。多数の国民は政治そのものに不信を抱いていく。今の政治の原点だ。民主党など社会党の焼き直しにすぎない。

 枝野幸男は、55年体制の蜜の味を吸い尽くしたいらしい。そして、救いようのない野党が、国民を地獄に連れていく「安倍一強」を長引かせる。言うなれば、「安倍枝野共犯体制」だ。国民は今こそ、ふざけた政治に宣戦布告すべきだ。「安倍枝野体制を不信任する!」と。

◆「安倍か、反安倍か」の二択しかない不幸

 思えば、安倍内閣には常に救世主が現れた。海江田万里、岡田克也、蓮舫、そして枝野幸男。安倍内閣など「民主党よりマシ」以外に何の実績もないのに、6年もの長期政権化したのは、ひとえに野党第一党の絶大な支援があったからだ。

 今回の選挙で最大の争点だったはずの、経済政策を例にあげよう。

 安倍内閣は、アベノミクスと呼ばれる金融緩和政策により景気を回復軌道に乗せている。しかし、消費増税が金融緩和の効果を破壊している。結果、不十分な景気回復しかしていない。

 本来ならば、「デフレ脱却前の増税など論外である。金融緩和をもっと徹底しろ」と批判すべきである。

 ところが、今の野党の批判は的外れだ。今次選挙になってようやく増税反対を旗印に掲げたが、日ごろは財務省の顔色を見て、本気で反対は主張しない。それどころか、金融緩和への批判ばかりを続ける。

 無能な安倍内閣と的外れな野党。日本国に、「安倍か、反安倍か」の二択しかないことが不幸なのだ。そして、決して正論が発言力を得ることはない。正論の封殺。これが「安倍枝野体制」の本質である。

 間違ってはならないのは、「安倍か枝野か」の二択ではない。安倍と枝野は共犯関係なのだ。

 はっきり言わせてもらうが、安倍晋三さん、あなたの存在自体が日本の害悪なのだ。そして、それを許容しているのは、枝野幸男さんら、歴代野党第一党の党首だ。

 財務省を恐れ、たかが景気回復すらできない人間が「戦後レジームからの脱却」など、もはや冗談だ。政治家が官僚の言いなりなら、選挙の意味がないではないか。

 かつて私は、「安倍救国内閣」を切望し、行動した。それは、「救国」を求めたのであって、何もせずに政権に居座る今の安倍内閣を望んだのではなかった。

 確かに最初の半年は、いい夢を見せてもらった。日銀人事に介入し黒田東彦総裁と岩田規久男副総裁を送り込み、景気回復を推し進めた。あのまま2年も続けていれば景気はとっくに回復、戦後レジームからの脱却にも手をつけていたかもしれない。

◆安倍自民党は自分で「民主党よりはマシ」と言い出した

 ところが、政権復帰からたった半年後の平成25年10月1日。半年後の消費増税を発表させられた。消費増税を求める時の財務事務次官木下康司に、抗しきれなかったからだ。安倍首相は「デフレ脱却前の消費増税はやらない」と言い切っていたが、あれは何だったのか? 財務省の何が怖いのか?

 その後も、だらしない。確かに、二度にわたり消費増税を延期した。あくまで延期だ。しかも、その都度、国政選挙で信を問うている。しかも恥ずかしいことに、「代表なければ課税なし」とまで宣言して。

「代表なければ課税なし」とは、独立戦争以来のアメリカ合衆国の理念で、「選挙で選ばれた代表が認めない限り、増税はしない」との意味だ。「主権者である国民から税金を取りたければ、選挙で信任を得よ」の意味だ。

 ところが安倍首相は、財務省が求める増税を、たかが「延期」するために国政選挙で信を問うた。これでは、国民主権ではなく、官僚主権だ。

 しかも、内実はお寒い限りだ。一回目の延期では、当時の香川俊介財務次官は末期がんで身動きが取れなかった。その後は財務省の凋落が言われたが、三代続けて無力な次官。二回目の延期も、その間にすぎない。ところが、本流で実力者の岡本薫明財務次官就任となるや、たちどころに「増税をやり抜く」と宣言し、今に至る。何のことはない、財務省が弱っていただけなのだ。

 今回の選挙で安倍自民党は自分で「民主党よりはマシ」と言い出した。もはやそれしかないのだろう。

 国民が政治そのものへ不信任しても、責任は政治家にある。

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。’96年中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程を修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員として、’15年まで同大学で日本国憲法を教える。’12年、希望日本研究所所長を務める。同年、コンテンツ配信サービス「倉山塾」を開講、翌年には「チャンネルくらら」を開局し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を展開。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数

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