「大麻は悪くない」と主張してきた男が、逮捕されて全てを失うまで

日刊SPA! / 2019年7月31日 9時50分

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 夏本番を迎え、数多くのフェスやイベントへの出演を控えるなか、RIZE/The BONEZのボーカル・ギターであるJESSE(本名マック・ファーデン・ジェシー・ソラト)と、同じくRIZE/Dragon AshのベーシストであるKenKen(本名金子賢輔)が大麻取締法違反容疑で7月19日に逮捕された。

 RIZEとThe BONEZは今後の出演を見送ると発表。一方でDragon Ashは、サポートベーシストとしてThe BONEZ/PaymoneyTomyPainのT$UYO$HIを迎えてステージに立つという。しかし、Twitterでは「人生のドン底にいる」と苦しい胸の内を明かした。ファンからも落胆の声があがっているが、関係者やスタッフが、今回の件でもがき苦しみ奔走していることは想像にかたくない。

 また、7月31日に発売予定だったロックバンドのMY FIRST STORYのシングル「無告」の収録曲にJESSEが参加していたことで、発売延期と内容の変更が決定された。

 今、彼らにかかわる人たちに大きく波紋が広がりつつあるのだ。

 世界各国で「大麻の合法化」が進むなか、我が国においても「大麻合法化論」を訴える人は少なくない。とはいえ、日本では違法とされる大麻に手を出せば、家族や友人、仕事など、すべてを失ってしまう可能性がある。

◆家族や仕事…大麻ですべてを失った

 都内在住のデザイナーの鈴木義也さん(仮名・40代)は、毎年ゴールデンウィークに都内で開催されるマリファナマーチに参加するなど「大麻は悪くない」と主張してきた。

「大麻は覚せい剤よりも、タバコよりも依存性が低いという調査機関のデータがあるほど。私は酒もタバコもやりません。仕事終わりにくつろぐために大麻を吸っていましたが、誰に迷惑がかかるわけでもない。酒やタバコよりも体に悪くない、なぜ大麻が禁止されているのか、不満で仕方なかった」(鈴木さん、以下同)

 10代の頃からおよそ20年近く大麻を吸い続けたが、結婚と出産、そしてデザイナーとして独立したことをきっかけに、一時期辞めていたこともある。しかし、2~3年を経て結局は大麻を愛用する日々に舞い戻った。

「依存性がないのではなく、低いだけ。大麻を吸って気持ちよくなりたいという葛藤に負けてしまいました」

 デザイナーという職業柄、まわりにはクリエイティブ系の仕事仲間も多く、その中には大麻を始めとした薬物愛好者も少なくなかった。芸能人や歌手が薬物の使用や所持で逮捕されると「制作活動に必要だった」との供述が出るのと同様に、鈴木さんも大麻は仕事に不可欠と考えてすらいたのだ。しかし、事態は一変する。

◆逮捕されてから数年、今思うこと

「仕事仲間から、ブランドものの“いい大麻”をもらって、自宅に帰宅する途中で、運悪く職務質問に引っかかってしまった。ポケットに巻きタバコ用の紙を入れていたことがきっかけで、バックの中身、財布の中まで見られて。小銭入れに入れていた大麻が見つかり、現行犯で逮捕されました」

 警察の取り調べは思っていたよりも壮絶なもので、誰から入手したものなのか、いつから、どれくらいの頻度で使用しているのかなど相当激しく詰め上げられた。事情聴取は、妻や実家の家族、そして取引先にまで及んだ。「大麻は麻薬じゃない」などとは、とても言える状況ではなかったという。

 鈴木さんはここであることに気がついた。

「大麻は悪くない、と私が主張したところで違法は違法。そのために、家族やみんなに迷惑をかけた。それだけじゃない、取引のあった仕事先からは全ての契約を切られたし、大麻仲間だったクリエイティブ系の人たちも僕を避けるようになりました。どれだけ仕事ができようと、いい人であろうと、結局、違法な大麻を吸っている、ということはそれだけで信用を無くす、ということです」

 月に百数十万あった売り上げは十万円台まで落ち込み、大麻仲間からも見放されると、酒に溺れるようになり、当時は繁華街の雑貨店などで購入できた「危険ドラッグ」にまで手を出した。危険ドラッグの吸いすぎで体はやせ細り、最後は肝機能障害で倒れてしまい、病院に担ぎ込まれたのだった。

 そのとき、傍に妻や子どもの姿はなかった――。

「酒に溺れるようになって、妻は子どもを連れて実家に帰りました。しばらくして妻の判が押された離婚届が送られてきました。それからはもう自暴自棄です。大麻は素晴らしい、と言っていた仲間からも裏切られ、すべてを失ったのです」

 現在は、再びフリーランスのデザイナーとして活動を再開し、わずかではあるが、別れた妻に養育費を送金できるようにまでなった。鈴木さんが訴える。

「大麻の合法化を訴えるのはいい。ただ、合法化を認めろと言いながら、日本国内では違法な大麻所持、売買を行なっていてはどうしようもない。家族や仲間に対して無責任な奴、というレッテルが貼られるだけでなく、やはり大麻の合法化は避けるべきという世論になってしまう。法律を変えようとしている人が法を守っていなければ、当たり前ですが信用されない。意見は色々あっていいが、まずは法を守るべき。私のようにすべてを失う前に気がついて欲しい」<取材・文/伊原忠夫>

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