「ちょっと不幸なM気質」――サウナにハマる人の意外な共通点

日刊SPA! / 2019年8月9日 8時50分

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漫画家の大町テラスさん(左)とまんきつさん

 サウナに行くと、20代とおぼしき若きサラリーマンたちが汗を流しながら話していた。「サウナのドラマが始まったけど見てる? 『サ道』とかいうやつ。あれ面白いよね」。タナカカツキのサウナ漫画がドラマ化され、温浴施設がにわかに賑わいを見せている。また、サウナを題材にした漫画も増えている。まんきつ著『湯遊ワンダーランド』、大町テラス著『お熱いのがお好き?』は、先の『サ道』には描かれていない「知られざる女湯の世界」が垣間見えて興味深い。そして「男湯」と「女湯」はもはや別世界であるとわかる。そこで今回はサウナ好きとしても知られる漫画家まんきつ・大町テラス両氏に「女湯の真相」を聞いてみた。

――まんきつさん、『お熱いのがお好き?』を読んでいかがでしたか?

まんきつ(以下、まん):主人公(バツイチのデザイナー・西宮まみ)のサウナにハマっていく描写がとってもリアルでした。サウナや水風呂に入ったときの主人公の表情もそうですが、サウナ好きのマスターがいるバーでの会話とか、何気ない細かいところまで「リアルだなー」と思って読みました。これはご自身の体験がベースになっているのですか?

大町テラス(以下、大町):そうですね。最近まで私もデザイナーとして働いていましたし、主人公のように人に指示を出すのが苦手だったり。けっこう自分がベースになっています。そのバーも実際に通っていたところをモデルに描きました。

――西宮まみは、バーのマスターに勧められてサウナに通い始めます。大町さんがサウナに通い始めたきっかけは何だったのでしょうか?

大町:サウナにハマったのは仕事のストレスが大きい時期でした。美大を卒業して、デザインの仕事に就いたものの、深夜まで働いて体調を崩しながらポスターやチラシを作り続けて。自分がやりたかったことはこれで合っているのか、やりたくないことで日々を消費しているのでは、と悶々としていました。職を転々として、収入は増えていっても満たされない。それでお酒ばかり飲んでいました。夜もなかなかスムーズに眠れなくなり、コンビニに行ってはウイスキーを買って飲んで憂さ晴らし。そんな時に出会ったのがサウナでした。そのモヤモヤをサウナが吹き飛ばしてくれたんです。

まん:わかります。私も以前アル中で、ウイスキーで一気に加速したのを覚えています。あの頃はブログを始めて、最初こそ楽しくルンルン気分で書いていたのに、話題になると「つまらない」とか「早く死ね」とか意地悪なコメントも増えてきて。更新しなきゃというプレッシャーと、更新してもたたかれるという恐怖から思うように書けなくなってしまいました。そのストレスのはけ口がお酒だったんです。最終的には病院に通ってお酒を断ったのですが、今ではそのお酒という息抜きの代わりにサウナがあります。

大町:そういう経緯もあって、サウナを漫画に描こうとしたとき、よくあるグルメ漫画みたいに「おいしいものを食べてハッピー!」だけにしたくなくて、仕事の話だったり恋愛だったり、ちゃんと“失敗”を入れたかった。漫画の主人公も、実体験をまじえて、私と同じように苦労していてほしかったんです。

まん:錦糸町にある「ニューウイング」という温浴施設の支配人が言ってましたけど、「不幸な人がサウナにハマる」んですって。そう考えると、私もその頃は不幸だったのかも。

大町:そういえば夫が「疲れてないとサウナは気持ちよくない。たくさん働いて疲れたあとだからこそ気持ちいい」って。確かになって思いました。サウナは「がんばりすぎちゃう真面目な人がハマる」のかもしれない。そのがんばりすぎちゃう真面目な人の中にはきっと不幸な人も多いのかもしませんね。

――サウナにも向き不向きがある、ということでしょうか。

大町:サウナが「熱くて苦手」って人はそもそも無理で。向いているのは、我慢が好きな、ややM気質な人なんだと思う。ビジネスマンとか、特に経営者とか仕事がデキるタイプの人にサウナ好きが多いのも、探究心とか好奇心が強く、耐性が備わっているからなんじゃないかって気がします。

まん:ストイックな人がサウナにハマっている印象がありますね。芸人さんとか、あとジャニーズの人とか。表に立つ人は人の“念”を常に浴びているから、それをサウナで汗をかくことによりスッキリ流したいというのもあるのかもしれない。

大町:現状に満足している人は、「耐える快感」がわかるまで時間がかかるかも。

――大町さんの漫画は「実体験がベースのフィクション」ですが、まんきつさんの『湯遊ワンダーランド』はエッセイ漫画で全編実話ですよね?

まん:はい。ネタ探しに、毎日のようにサウナに行ったりハシゴしたりもするんですけど、漫画にして面白いような出来事ってほとんど起こらなくて。銭湯は本当に平和な場所。だいたい「あー気持ちよかった」しか残らないので、『SPA!』での週刊連載は常にネタ切れ状態で苦労しました。

大町:銭湯でヌシ(常連客)に「ぶっ殺すよ」って言われたのも本当なんですか?

まん:本当です。しかも笑いながら言われました。東上野にある銭湯なんですけど、ハードモードな銭湯としても有名で。そこのヌシには気をつけたほうがいいです。キツいこと言われて泣かされたって話もたまに聞きますから。時間帯にもよりますが、口開け(開店)直後は避けたほうがいいかもしれない。“具”がちょっとでも見えてると「はしたない! 隠せ!」って詰め寄られます。他の若い女性客にも同じように怒っていたので、“具”を見たくないんでしょうね。

大町:明日は我が身! 気をつけます。よく行く近所の銭湯にも口うるさい常連さんはいますけど、それぞれの“正義”があるみたいですね。まんきつさんの漫画にもありましたけど、明らかなマナー違反の人に対して注意してくれる“必要悪”としてヌシがありがたいときもある。私、マナーが悪い人を見かけてもこわくて何も言えないから……。

まん:確かに。私も言えないなあ。言うと自分がヌシみたいになっちゃう気がして、それもイヤで。

大町:ヌシにより規律が守られている銭湯もあるでしょうけど、なりたくはないですね。

まん:東上野の銭湯のヌシは「口が悪い」からよくないのかも。注意するにしても、やっぱり言い方なのかもなあ。

――ところで、大町さんの漫画では、女性は女風呂で体を隠すことなく裸で、まんきつさんの漫画では、多くが体をタオルで隠しています。実際はどちらなんですか?

まん:私は漫画であまり裸を描きたくないというか抵抗感があって。だからタオルで隠したりしましたけど、実際はみんなすっぽんぽんですよ。

大町:まんきつさんも隠さない?

まん:私は胸の大きさが左右違うのがコンプレックスで、だからそこは隠します。でも下は特に隠しません。

大町:連載ではボツになってしまったんですが、「(主人公が)他人のアンダーヘアを見て研究する回」を描きたかった。実際、見ちゃうから。

まん:えー。私は見ないなー。

大町:女同士で裸を見せ合うことなんて普段ないから、どうしても気になってしまいます。おっぱい大きいなあとか、おばあさんの乳首ピンクだなあとか。

まん:ババアの乳首ってだいたいピンクですよね。

大町:色素が抜けちゃうみたいですね。まんきつさんはなんで人の体を見ないんですか?

まん:うーん、なんでだろう。人にあまり興味がないのかも。でもパイパンは気になる。池袋の「レスタ」とか麻布の「アダム&イヴ」なんかはおまんちょパイパンにしてる人多かったですよ。

大町:え、おまんちょ?

まん:あ、熊谷ではそう言うんです。

大町:初めて聞きました。ちょっとかわいいかも。確かに若くてオシャレな人が多いエリアの銭湯にはマン毛処理女が多い印象です。

まん:マン毛処理女って呼び方あるんですか?

大町:わからない。私はそう呼んでいます。

――『お熱いのがお好き?』では、主人公の恋愛も描かれており、バーで「サウナが趣味」の男性と出会います。サウナ好きのお二人からして、サウナ好きの男性は“お好き”ですか?

大町:バーのマスターも、そこで出会う男性も、「サウナ好き男性の集合体」として描きました。サウナ好きの男性に対する「しゃらくせー」という気持ちを込めています。

まん:サウナ好きは鬱陶しいってこと?

大町:別に嫌いとかじゃないし、話も合うからいいなとは思うのですが、たとえばいきなりフィンランド行ったときの話とか、一日にサウナを二軒はしごするとか、度が過ぎるのには正直引いちゃいます。

まん:サウナ室の木材は何とか、「俺の知識すごいだろ」系のウンチクはきついかも。あと会話で専門用語を使うのも、なんかなーって感じはします。「水風呂がグルシン(シングル=10度未満)」とか「ととのい椅子(休憩をするときに座る椅子)がいくつある」とか。普通に「気持ちよかった」くらいの感想で十分。あ! でもサウナの温度と水風呂の温度は知りたい。

大町:でもまあ私も、「ロッキーサウナが」とか「ikiストーブが」とか言いがちなのでお互い様なところもあるのですが。「サウナ室の換気がどう」とか「ストーブの輻射熱がどう」とかは……。

まん:正直よくわかんないですよね。

大町:早口のオタクみたいにはならないように気をつけたいところです。サウナの話しかしないとか、知識勝負みたいなことはしたくない。

――サウナ好きの間でよく話題にあがるのが、「男湯」と「女湯」で“格差”があること。実際はどうなんでしょう?

まん:同じ銭湯なのに男性側のほうがサウナ室の温度が高かったり。

大町:多いですね、そういうところ。

まん:男性側だけに露天風呂があったりとか。男性側のほうが優遇されているなと感じる施設は多いです。

大町:女性だって熱いサウナに入りたい人多いのに。なんででしょう。

まん:サウナを社交場みたいにしている常連が多くて、そこで長話をするにはむしろぬるいほうがいい。熱さを求めていない。で、そういう常連にかぎって声が大きかったりするわけで、そうなると施設側も温度を上げにくいのかもしれない。

大町:そうなるともう格差が埋まることなんてないんでしょうね。

まん:サウナ好きの女性が満足できるような新しい施設ができてほしいです。もっとサウナが流行って、新規の女性客が増えたら変わるはず。もしくはサウナで井戸端会議しているババアどもが死ぬのを待つか……。

大町:死に待ち……。

――それでもお二人はサウナが好きで通っています。お二人にとってサウナとはどういったものなんでしょう?

まん:うーん、難しい。

大町:「救済」ですかね。小さくて確かな幸せがあるところ、です。

まん:確かに日ごろの嫌なことがあっても「ま、いっか」と思える幸せな場所ですね。

大町:ポジティブになれるんです。体が気持ちいいと前向きになれる。風邪をひいて弱っていると落ち込んでしまう、その逆です。

まん:私にとってのサウナは「浄化」です。ネイティブアメリカンの儀式に「スウェットロッジ」というものがあるんですが、小屋で汗をかくことで身を清める。それってサウナと同じだなって。もちろん、気持ちいいから通うのですが、神社に通うような気持ちでもあり、それは「浄化」されたいから。

大町:本場のフィンランドでも神聖な場ですもんね。

まん:こういうことを言っているとまた「スピってる」とか言われそう。でも、たとえ思い込みだとしても、「浄化してリセットできる場所がある」というだけで前向きになれるし、実際に私にとってのサウナはそういう場所なんです。

 今回、対談を収録したのは新宿区大久保にある「ルビーパレス」、女性専用のサウナ施設として人気だ。サウナを好む女性が増えることにより、新たな女性専用施設が生まれ、そしてサウナは「男性のもの」から「みんなのもの」になる。ひとりのサウナ好きとして、これからのさらなる“ブームと定着”を心から願っている。

大町テラス●サウナと居酒屋をこよなく愛す漫画家。初の著書であるサウナ漫画『お熱いのがお好き?』(イースト・プレス)が好評発売中。『女性セブン』では『まにまに道草』を連載中

まんきつ●漫画家。2012年に始めたブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目され、2015年には自身初となる単行本『アル中ワンダーランド』(扶桑社)を刊行。サウナ漫画『湯遊ワンダーランド』(同)は全3巻が好評発売中

取材・文/高石智一 撮影/杉原洋平

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