人気の女性YouTuberも逮捕。数千万円稼ぐ「わいせつ動画」配信者を警察が狙い撃ちした理由

日刊SPA! / 2019年8月12日 15時54分

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※写真はイメージです

 動画配信サイト「FC2」で無修正アダルト動画を配信、多額の収入を得ていた利用者たちが最近、相次いで「わいせつ罪」で逮捕されている。それはなぜなのか!?

◆相次ぐ配信者逮捕で考える、なぜ違法なのか?

 ネット事業者「FC2」が運営する動画配信サイトを利用していた男女13人以上が6月26日までに、全国で一斉逮捕された。ライブ配信は「公然わいせつ」(刑法174条)にあたり、録画動画配信は「わいせつ物頒布等」(刑法175条)にあたるというのが逮捕容疑だ。逮捕者のなかには、ユーチューバーとして人気の女性も含まれていた。

 下表のFC2逮捕事件は、6月26日に報道されたものの一部。全国的な摘発だったことがわかる。

<最近のFC2逮捕事件(6月26日報道のもの)>

●北海道警……北海道札幌市の25歳のアルバイト女性と26歳の塗装工女性の同性カップルが、わいせつな行為を配信したとして逮捕。

●警視庁……主婦や会社役員、元AV女優、ユーチューバーら男女7人を公然わいせつ容疑で逮捕。会社役員と元AV女優は’17年12月からライブ配信を始め1400万円、主婦は’17年10月ごろから1000万円を稼いだとされる。

●愛知県警……名古屋市中区のアダルトコンテンツ配信会社社長ら男女4人を逮捕。全裸でわいせつな行為をしている動画を不特定の視聴者に閲覧させたとされる。カップルそれぞれ月200万円ほど稼いでいたという。

●京都府警……長崎県の学校職員の女性がわいせつな動画ファイルを投稿したとして、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列容疑で逮捕。交際相手とともに3年半で約1000万円を稼いだとみられる。

●福岡県警……福岡市中央区清川のアダルト動画配信会社の経営者が配信していた動画が、公然わいせつにあたるとして女性とともに逮捕される。

 報道関係者によると「警視庁が今年4月ごろ、北海道警や愛知県警などに対して『FC2上に、個人がアップしたわいせつ動画がある』と情報提供し、合同捜査本部のもとで内偵を進めてきた」という。7月8月に入っても関係者の逮捕は続いているが、他方、一部の容疑者はすでに釈放されたという。

 FC2は米国に本社を置く事業者だが、日本人が事実上経営している。ライブ配信の場合、配信者が任意に無料か課金(1ポイント1円)かを決められる。最初は無料配信で客を誘い、その先の性器の露出などを見たい人はFC2運営からポイントを購入して配信者に支払うのが一般的だ。

 今回の事件では1分あたり5~600ポイントと、課金額はまちまち。「お金のためにやった」者もいれば、“趣味で”性器を見せていた者もいたようだ。得ていた報酬は、複数人で3年間に7000万円、単独で1年半に1000万円、カップルで月収200万円などといったように、人数も期間もバラバラだが、かなり高額だ。警察関係者はこう証言する。

「数千円、数万円といった額なら警察もわざわざ摘発することはなかったはず。高額収入者が狙い撃ちされたということです」

◆なぜ被害者がいないのに犯罪となってしまうのか

「AV倫理機構」理事の河合幹雄氏は、「警察が『公然わいせつ』を摘発するとき何を見ているかというと、社会的影響です。いくら稼いで何人が見たのか、と。もともと警察は、過去にFC2の経営者を逮捕したように、ずっと動画配信会社そのものを叩きたいと考えていました。そんなときにライブ配信で稼いでいる利用者を見つけたので、逮捕したということのようです」と語る。

 さらに、河合氏のもとには、「芸能人をかたる動画などを配信して、視聴者を惑わすようなユーチューバーを取り締まりたい」という話も伝わってきていたという。この2つが重なって、女性ユーチューバーらが“見せしめ”になったのではないかとみている。

「警察関係者と話していると、『すでに性表現のある雑誌は制圧した。AVは自主規制の取り組みが進んでいる。残っているのは、児童虐待とサイバー空間の問題だ』というのが彼らの今の認識です。今後もネット関連の摘発は続くでしょう」(河合氏)

 公然わいせつ罪は「被害者のいない犯罪」といわれる。表現の自由を守るNPO「うぐいすリボン」理事の荻野幸太郎氏は、ポルノ的な動画を配信する海外の老舗ライブ配信サイト「CAM4」をしばらく前から観察していた。

「CAM4は、業者が介在するアダルトビデオやライブチャットとは異なり、基本的には被写体が自分で配信するスタイル。強要や搾取の問題は起きにくい。無料で配信も視聴もでき、視聴者は気に入ればチップを贈ったり、一対一で視聴するときには個人間の交渉で料金を決めることもあります」

 このサイトでは世界中の人が発信しているのに、日本人の配信は極端に少ないという。

 海外発信でも日本人が無修正で性器を露出すれば犯罪だ。自分でモザイクをつけるのも難しい。だが、出たい人が出て、見たい人が見ているだけで、どこにも被害者はいない。なぜそれが犯罪となるのか。一方で、モザイク処理した業者だけが市場で保護される――。荻野さんはそんな疑問を語る。

「モザイクでAV出演者の人権問題は解決されません。だとしたら、モザイクはなぜ必要なのでしょうか? 害された『社会的法益』とは何なのでしょうか」

 社会的法益とは刑法上の考え方で、社会的秩序を守るためのもの。セックスワーカーとして働く人々の安全と健康に関わる活動を行う「SWASH」代表の要友紀子氏は、こう語る。

「世界的にはAV女優もセックスワーカーも、性的なことを自分で表現し、売る時代になっています。それによって自分がオーナー兼プレイヤーとなり、中間搾取をなくすことができる。しかし、日本では『わいせつ』の概念がある限り、誰にも搾取されずに性表現をすることができないのです」

【河合幹雄氏】
’60年生まれ。桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)。法務省矯正局の「矯正処遇に関する政策研究会」委員、警察大学校嘱託教官

【荻野幸太郎氏】
’80年生まれ。同性愛者。NPO法人うぐいすリボン理事。国際日本文化研究センター共同研究員。関心分野は非営利組織論、表現の自由

【要 友紀子氏】
’76年生まれ。セックスワーカーとそのサポーターをメンバーにするSWASH代表。著書に『セックスワーク・スタディーズ』(日本評論社)ほか

取材・文/長岡義幸

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