れいわ新選組は立民へのアンチテーゼ、N国は自民へのパロディーだ/倉山 満

日刊SPA! / 2019年8月12日 8時30分

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8月1日、参議院本会議後の(右から)木村英子議員、山本太郎代表と舩後靖彦議員。れいわ新選組に託された有権者の絶望を、既成政党の諸君は歯牙にもかけないのだろう(写真/時事通信社)

―[言論ストロングスタイル]―
◆れいわ新選組は立民へのアンチテーゼ、N国は自民へのパロディーなのだ

 今回の参議院選挙では、多くの人々が「どこの党にも投票したくない」と悩んだのではないか。

 何が何でも政権にしがみつきたい、安倍晋三の自由民主党。与党になって責任を負うなど真っ平御免だが、好き勝手なことを言える野党第一党の地位を死守したい、枝野幸男の立憲民主党。

 日本人は反省すべきだろう。「安倍か、枝野か?」などと、間違った問題設定をし続けてきたことに。なぜなら、安倍と枝野は「共犯関係」なのだから。今の日本で、この二人ほど利害関係が一致している人間はいない。

 安倍首相は、増税を掲げる選挙で大勝した。殺し文句は一言。「民主党の悪夢を思い出せ!」だ。枝野代表の顔を見れば、嫌でも思い出すだろう。だが、それしか言えないのも、今の安倍自民党なのだ。

 たとえるならば、「殺人予告者」と「前科者」の選択だった。殺人予告に等しい消費増税を掲げた選挙で与党が勝つなど考えられないが、枝野立民が野党第一党に居座り、反安倍の共同戦線を破壊した。むしろ、他の野党の勢力を潰しにいったほどである。枝野の行動は、与党にとって笑いが止まらない。

 野党第一党が本気で増税を阻止してくれないなら、有権者に選択肢は無い。しかも、今回は棄権も与党に対する承認となる。投票率が下がれば、組織票に頼る与党に有利だからだ。どこの誰に入れれば、自分の票を活かせるのか。

 思わぬ結果が出た。山本太郎代表のれいわ新選組が2議席、立花孝志代表のNHKから国民を守る党が1議席、それぞれ比例代表区で議席を獲得した。事前の予想を覆しての、大健闘である。既成政党への不信の表れだ。もし両党が0議席ならば論評の対象ではないが、今はその意義を明確にすべきだろう。

 れいわ新選組は立民へのアンチテーゼ、N国は自民へのパロディーなのだ。

 両党は、立憲民主党など日本に存在しないかの如く、存在感を発揮している。

 れいわ新選組の当選者二人は、重度の障碍を負っている。こうした環境の人が議員になるのは、憲政史上初めてだ。さっそく、国会のバリアフリー化が進んでいる。一方、政治家とそれ以外の国民で差をつけるべきなのか、など福祉のあり方も議論になっている。当事者の二人の議員が、体を張って起こした議論だ。問題提起を望んだ、山本代表の意図通りだろう。

◆健全な野党が絶えて久しいのに、日本人は我慢しかねている

 れいわの政策は大きく八つだそうだ。確かに、その中には荒削りの政策も多い。たとえば、「公務員増加」「国土強靭化」など、まともなブレーンがいたら絶対に載せさせないような政策も並んでいる。この種の政策は官僚支配を正当化し、お上にたかる業者にバラまく政策だからだ。だが、こうした欠点にも目をつぶれる要素がある。

 山本代表自身の原点とも言うべき「反原発」を最後に回し、筆頭政策に「消費税廃止」を訴えている。さらに、他の野党との共闘にも、「せめて消費減税」と条件をつけている。今回の選挙が何の選挙か、わかっていたのだ。

 立憲民主党の目玉候補は、軒並み落選した。その演説では、「夫婦別姓、同性婚」などと訴えていた。

 その主張の、是非は置く(私は反対だが)。問題は、そんな放っておいてもついてくるような支持者向けの政策を訴えてどうするのか? 何の選挙か、わかっていないのだ。

 安倍自民党(財務省と創価学会の傀儡)が推し進める消費増税への批判票が、れいわに流れたのだ。健全な野党が絶えて久しいのに、日本人は我慢しかねているのだ。

 れいわ新選組が、立憲民主党へのアンチテーゼである理由だ。

 れいわ新選組は、党首の人気で1議席は固いと思われていた。一方、N国は泡沫を通り越して、イロモノ政党だった。ところが、見事に議席獲得である。政見放送で、「NHKをぶっ壊す」「不倫、路上…(自主規制)」と連呼しての当選である。

 かつて政見放送で放送禁止用語を連呼し、その発言をNHKに削除されて裁判で最高裁まで争った雑民党の東郷健という人物がいた。たとえるなら、立花氏の当選は東郷健が当選したようなものか。そう考えると、快挙である。

 当選後の立花氏は、メディアジャックしている(NHK以外)。公約は「スクランブル放送の実施」すなわち受信料を払わない視聴者への放送を止めることである。N国は、この一点さえ同意すれば、他の政策のすり合わせは全く行わないと公言している。12人の無所属議員に共闘を呼びかけ、本稿執筆時点で2人が応じた。

 1人の国会議員ができるのは、質問主意書を発するだけである。質疑も行えないし、希望する委員会にも所属できない。

 これを「手段を選ばぬ多数派工作」と批判する者がいる。では、その者は自民党の多数派工作をも、何倍も批判してきたのであろうか。そして、安倍内閣は現在進行形で手段を選ばぬ多数派工作をしている。

◆N国が気に入らないなら、堂々と公開討論で叩き潰せばよい

 安倍自公連立政権は維新を足しても改憲発議に必要な3分の2に、4議席足りない。そこでN国にも食指を伸ばしたが、立花代表は「スクランブル放送に同意してくれるなら改憲に賛成する」と応じた。当然だろう。

「ワンイシュー政党」と小馬鹿にする向きもあるが、政党が最も大事な一つの政策にこだわるのは当然だ。かつて自民党は「日米安保体制と資本主義経済に賛成さえすれば自由」と言われたが、今やその二つとも共通の政策ではない。

 N国が自民党のパロディーである所以である。ただし、立花代表は意図的に演じている。本物のバカは、バカを演じることはできない。

 さて、当のNHKは立花氏を完全無視しようとしている。「5人の議員がいない政党は、討論に出さない」と、よくわからない内規を盾にして。その一方、「不当な発言には屈しない」と幹部自ら発信するのみならず、与党の政治家にも同様の発言をさせている。

 それほどN国が気に入らないなら、堂々と公開討論で叩き潰せばよいではないか。

 老害とは何か? 堂々と表の討論で決着を付けず、自分は安全地帯で裏工作をする輩のことである。

 老害駆逐が求められている。

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。’96年中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程を修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員として、’15年まで同大学で日本国憲法を教える。’12年、希望日本研究所所長を務める。同年、コンテンツ配信サービス「倉山塾」を開講、翌年には「チャンネルくらら」を開局し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を展開。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数
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