ソウル発「反日デモ」に密着。若者たちが絶叫するNO安倍の真意とは?

日刊SPA! / 2019年8月20日 8時29分

写真

 韓国人元徴用工問題を契機にした日本政府のホワイト国除外を受け、日韓関係は過去最悪の状態となった。今、韓国では何が起きているのか。デモや集会がもっとも活発化した8月のソウル市内を緊急取材!

◆日本大使館の前で若者たちが絶叫するNO安倍の真意とは

 反日デモや日本製品不買運動の様子が毎日のように伝えられているが日韓両国は以前のような友好関係に戻れるのか、はたまた破綻の道を突き進むのか。日韓の未来を探るため、記者は韓国へ向かった!

 現地取材を行った8月は韓国にとって日本の統治からの解放を祝う「光復節」を迎える記念月。例年、歴史問題の清算を求める大規模集会やデモが行われるが、今年は日本への批判が一層トーン・アップしていた。

 10日の昼すぎ、ソウル市鍾路(チョンノ)区にある日本大使館前では、若者たちが中心となった集会が行われていた。主催団体は「21世紀青少年共同体 希望」という名前で、ネット上で安倍晋三首相を糾弾する内容の署名を募り、日本大使館に手渡すという。

 署名には「経済報復の撤回」や「慰安婦被害者への謝罪」という要求が含まれているというが、集会に参加していた女子高校生からはこう返ってきた。

「日本が歴史的に謝罪してこなかったことが腹立たしい。まだ慰安婦被害者に対して心からの謝罪をしていないのに、経済的な報復まで行うなんて。とても恥知らずな行動だと思う」

 一方、19時からは同じ日本大使館前で「キャンドル集会」が開催された。キャンドル集会は韓国の民主化を象徴する形態で、過去に朴槿恵前大統領を退陣に追い込むなど、市民が重要な政治問題に批判を向ける際によく用いる手法だ。

 彼らの主張に耳を傾けていると、あることに気づかされる。「NO JAPAN」ではなく、「NO安倍」が強く主張されていた点だ。主催者側は、日本社会や日本人との関係は悪化させてはならないと口を酸っぱくして説明。むしろ日本の“善良”な市民組織と連帯し、安倍政権に対してプレッシャーをかけようと主張していた。

 イベントの途中、主催者と行動をともにする日本人弁護士も登場。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の廃棄や「安倍政権の軍国主義」をやめさせようという主張が続いた。この日は30℃を超える猛暑だったが、ゆうに1000人を超える人々がいた。参加していた20代の男性はこう話す。

「日本のマスコミは韓国こそ対立の原因をつくっていると報じていますが、それ自体が事実ではなく誤り。そんな報道を目にするのが心苦しくて、キャンドル集会に参加しました。ホワイト国からの除外は、日本が一方的に行ったこと。韓国が間違っているというのはとんでもない話です」

◆反安倍デモに交じって朴槿恵釈放求める団体も

 さらに集会の横を通った30代の主婦は「不買運動やNO安倍運動には基本的に賛成」としつつ、「少し心配だ」と吐露した。

「このような集会は、むしろ安倍政権にとって有利になるんじゃないかと心配です。平和的な集会であっても、日本の右派メディアが刺激的に報道し、それを見た日本の人々が、韓国が理由もなく日本を憎んでいると誤解するかもしれない。それは、究極的には安倍が望むことではないでしょうか」

 話を聞いていると、韓国社会で集会やデモに参加する人々の多くは、日韓の関係悪化の根源を安倍政権にあると考えている。「我々は反日運動をしているわけでは決してなく、過去の軍国主義の栄華を復権させようとしている安倍首相や政権運営者を批判している」というのが、彼らの主張のようだ。

「日本でデモを報じる際は“反日”として十把一絡げにされてしまいますが実態はもっと複雑。国旗を踏みつける極右や目立ちたがり屋の政治屋もいれば、安倍首相だけを批判する左派もおり、声に出さずとも不買運動に賛同するサイレント層もいます。ただ今回は過去のものと異なり、全体的に安倍政権が対立の原因だという認識が皆の間で強まっています。デモや集会のターゲットも安倍政権に変化しています」(韓国紙記者)

 ちなみに、韓国には「反共」を標榜して日米韓の関係を重視する伝統的な保守もいる。反日集会が行われていたのと同じ頃、ソウル随一の観光スポット・光化門では、極右団体「ウリ共和党」が集会を開催していた。彼らは文在寅政権が北朝鮮との距離を縮めるため、反日を煽っていると指摘。朴槿恵前大統領の弾劾を無効とし、即刻釈放すべしと主張していた。

 そんな8月のソウルの光景を見ていると、「混沌」という言葉がしっくりくる。両国の政治を取り巻く、それぞれの立場の人々がさまざまな意見を主張しぶつけ合う。その中心にある大きなストリームが「NO安倍」なのだ。

 しかし、これには大きな違和感を覚えずにはいられない。仮に安倍首相が政権の座から降りたからといって、日韓関係は好転するのだろうか。おそらく答えは否だろう。日本および韓国の両社会には、埋めがたい感覚・認識の差があるように思えてならなかった。

「独立運動には参加できなかったが、不買運動はやろう」

 最近、韓国で流行している言葉だ。若者たちの間では、日本製品の不買運動が、戦前・戦中の独立運動と同列に語られているのである。

<取材・文/週刊SPA!編集部>
※週刊SPA!8月20日発売号「ソウル発[反日デモ]に密着」より

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング