725.2㎞を電車で移動しても、運賃はわずか140円…なぜ?

日刊SPA! / 2019年9月6日 15時54分

写真

東京駅で購入した隣の神田駅までの140円切符

 鉄道の場合、運賃は基本的に移動距離に比例。遠くに行けば行くほど切符代は高くなる。

 ただし、JRの「大都市近郊区間」と呼ばれるエリア内では“ある条件”を満たしていれば、どんなに遠回りしても出発駅~最終到着駅の最短ルート分の運賃でOK。

 例えば、東京駅から隣の神田駅までは山手線や京浜東北線ならわずか2分で着くが、これを丸1日かかる超遠回りで移動しても切符代はわずか140円で済むというわけだ。

◆大回りは合法的な裏ワザ!

 このJRの大都市近郊区間は、東京、大阪、福岡、仙台、新潟の5か所。もっとも広域なエリアを誇る「東京近郊区間」は首都圏1都6県にまたがり、関東をグルっと一周した超遠回りも可能。そこで今回はこの方法で東京駅から隣の神田駅までほぼ1日を使って移動してみることにした。

 これは鉄道ファンの間で「大回り」の名で知られている裏ワザ乗車術のひとつ。「同じ駅・路線を通らない」「最終到着駅は出発駅以外であること」「途中下車しない(改札から出ない)」といった条件さえ守れば大丈夫。要は一筆書きの要領で乗車区間を決めていくイメージだ。

 ちなみに今回のルート、乗り換え駅は以下の通り。

 東京駅→(東海道本線)→茅ヶ崎駅→(相模線)→八王子駅→(八高線)→高麗川駅→(八高線)→高崎駅→(両毛線)→小山駅→(水戸線)→友部駅→(常磐線)→我孫子駅→(成田線)→成田駅→(成田線)→佐倉駅→(総武本線)→成東駅→(東金線)→大網駅→(外房線)→大原駅→(外房線)→勝浦駅→(外房線)→安房鴨川→(内房線)→千葉→(総武線)→錦糸町→(総武線)→秋葉原→(山手線)

 上記のルートを1日で回るには早朝発の列車に乗る必要があり、東京駅4時50分発の山手線内回りで出発。東海道本線で横浜を過ぎたあたりから夜が明けはじめ、茅ヶ崎駅で相模線に乗り換えて八王子駅に着いたのがまだ7時半前。

 次の列車まで40分ほど時間があったので駅構内の立ち食いそば屋で朝食。やや太め、平麺の武蔵野うどんが名物らしく、これを使った『肉ねぎ汁うどん』(580円)を食べたが、コシがあって大変美味だった。座って食べられるスペースも用意されているのがありがたい。

◆駅グルメと車窓の景色で旅気分を満喫!

 八王子と高崎を結ぶ八高線は首都圏と思えない雰囲気を漂わせ、駅に停車中もドア横のボタンを押さないと開かない。沿線には緑が多く、山並みが見えるのどかな景色は完全にローカル線のそれだ。

 高崎駅には11時に到着し、昼飯用に名物『だるま弁当』(1080円)を購入。ここからは両毛線で栃木県の小山駅に向かい、さらにそこから水戸線で茨城県の友部駅へ。北関東を一気に横断した後は、常磐線で我孫子駅に向かったのだが、ちょっと奮発してグリーン車に乗ってしまった。

 実は、常磐線のほか、東海道線や宇都宮線、高崎線には普通列車や快速列車にグリーン車が連結されており、大回りでも追加でグリーン券を購入すれば利用可能。やっぱり横長ロングシートとは快適度が違う。それに特急列車でも次々と廃止されている車内販売も行われていた。

 1時間余りのグリーン車の快適な旅を楽しみ、我孫子駅に到着したが、ここで再び立ち食いそば屋に寄ることに。我孫子駅のホームにある『弥生軒』ではどんぶりを覆うほど大きな唐揚げが乗った名物『唐揚げそば』(420円)が有名なのだ。

 テレビでもたびたび紹介されて鉄道ファン以外にも知られており、これを食べるためにわざわざ訪れる人もいるほど。しかも、ここは“裸の大将”で知られる画家・山下清が若いころに5年間働いていたお店で、後に我孫子駅の絵を弥生軒のために描いている。

◆ルート設定は自由自在

 我孫子からは成田、佐倉、成東と南下し、大網駅から房総半島の外房線に入るが、すでにあたりは真っ暗で車窓からは何も見えず。日中であれば車窓から海を望む素晴らしい景色が堪能できただけに、逆回りルートにして先にこちらから回るべきだったかもしれない。

 なお、外房線の勝浦→安房鴨川は、東京駅発の特急『わかしお』が勝浦駅から普通電車扱いになっており、乗ることができた。あくまで一部の列車のみのようだが、ちょっと得した気分だ。

 安房鴨川からは内房線で千葉駅に向かい、そこから総武本線で錦糸町へ。ここで総武線各駅列車に乗り換え、秋葉原からは山手線外回りで神田駅に到着してようやくゴール。

 すでに深夜12時半を回っており、移動時間は19時間50分。総移動距離はなんと725.2㎞だった。

 これは東北新幹線の東京~新青森間にほぼ匹敵する距離で、同区間の運賃は1万150円。東京近郊区間とは運賃体系が異なるとはいえ、1万円以上かかるような距離を140円で移動できるのは魅力的だ。

 子供が鉄道好きなら家族で1日過ごしてもいいし、各地の駅ナカ施設を巡ってみたりと単に車窓の景色を眺める以外にもいろんな楽しみ方がある。

 ただし、大回りは切符、suicaなどの交通系ICカードいずれも長時間駅から出ていない場合は自動改札機の通過ができず、駅員がいる改札を通らなければならない。ICカードだと出発駅からルートの説明を求められる場合があり、乗車した駅が記載されている切符のほうがオススメだ。駅員に言えば、記念に持ち帰ることもできる。

 ルートも自由自在でお金をかけずに旅行気分が味わえる鉄道大回り。この秋の行楽にぜひ試してみては。<取材・文・写真/高島昌俊>

【JR大都市近郊区間 超遠回りのルール】
①利用できるのはJRの大都市近郊区間
②同じ駅・路線は通れない
③乗車できるのは、切符購入日の始発~最終まで
④途中駅で降りるのはNG
⑤最終到着駅は出発駅と別であること

【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。先日、この旅から帰国したばかりだが、早くも別ルートでの世界3周目に行こうか思案中。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング