韓国のユニクロ不買運動はどれほどの痛手なのか?株価は意外にも…/馬渕磨理子

日刊SPA! / 2019年9月16日 8時50分

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―[あの企業の意外なミライ]―

 今、日韓関係は戦後最悪と言われています。徴用工判決や「和解・癒やし財団」の解散、日本政府による韓国への輸出規制、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄まで、対立は拡大の一途を辿っています。

 そんな緊張が続く日韓関係の最中、企業のリサーチャーを務める私馬渕磨理子は、8月半ばにソウルに行って来ました。

 ソウル滞在最終日は、奇しくも8月15日の終戦記念日を迎える前日である、8月14日。

 その日、シーラ免税店の近くである漢江鎮(ハンガンジン。各国の大使館が集まるエリア)の道路を通った時に、韓国国旗が大通りの両端に設置されていく様子をタクシーの中から見た時は、正直、複雑に感じるものはありました。しかし、その他は風景を見る限り、いつもの韓国と変わりない様子でした。

 そんな日韓関係悪化の影響をもっとも受けている日本企業の一つが、ファーストリテイリング<9983>(ユニクロ)です。同社は現在、不買運動の対象になり、株価にも影響を及ぼすのではないかとの見方が出ています。

 はたして、ユニクロはいま、本当に危機に陥っているのでしょうか。財務分析を通して5分程度で明らかにしていきましょう。答えを急げば、「ニュースに焦るな、チャートを見よ」です。

◆韓国のユニクロは人がまばら…

 今回は、時期が時期だけに、あまり日本人が足を運ばず、英語が通じにくいエリアにもあえて行ってみましたが、私自身は反日感情を感じることは少なかったです。ただ、確かに、明洞(日本でいう原宿のようなエリア)のユニクロは今年2月に行った時よりも人が少ないように感じました。

 日本製品の不買運動を勧める韓国のインターネットサイト「ノーノー・ジャパン」を覗いててみると、サイトには不買を呼びかける日本製品と、代替できる韓国製品が紹介されています。そこを見ると、ユニクロも不買運動の対象になっていることがわかります。

◆ユニクロ謝罪のワケ

 ユニクロは、韓国での日本製品不買運動に関する質問の受け答えにより、反日感情を高めてしまったこという指摘を受け、謝罪を行っています。

 ユニクロ広報部は、今回の事態に対し、<韓国についても、長年ご愛顧いただいていますので、その影響は長くは続かないであろうと思っています。ただ、足元は一定の影響が出ています>と回答。

 この<思っています>という表現が、「ユニクロは、不買運動を長く続かないと見ている」と受け取られてしまったようで、ユニクロが謝罪をする事態になりました。

 そんなユニクロの近年の財務諸表はどのようになっているでしょうか。

 ファーストリテイリングの7月11日の決算では、2019年8月期第三四半期の連結業績は、計画通りの増収増益、過去最高の業績を達成しています。

 累計営業利益は2477億円で前年同期比3.7%増益。

 国内ユニクロが想定よりも伸び悩みましたが、海外ユニクロやGU事業が想定以上との結果でした。ただ、ひとつ問題があります。この決算には韓国事業の売上高が7月で約4割近く減少したことは織り込まれていないのです。この不買運動がどこまで影響するのでしょうか?

◆無視できない韓国ユニクロの売上

 そこで、同社における韓国ユニクロの利益の割合を見てみましょう。

 ファーストリテイリング全体の売上は、2017年には、国内ユニクロが8100億円を売り上げ43%占めていましたが、高い成長率を続ける海外ユニクロが2018年には8900億円を売り上げ、国内ユニクロを追い抜いています。
 
 つまり、ファーストリテイリングの動向は、いまや日本国内ではなく海外ユニクロの成長がカギになっているのです。

 その中でも、韓国は大きな市場を持っています。

 韓国国内にユニクロは186店舗展開しており、世界地域別でも14%を占めています。18年8月期の韓国内の売上高は約1400億円。この事実こそが、“日本バッシング”とも言える不買運動の最大のターゲットになった理由かもしれません。

◆韓国不買運動のわりに、意外にも株価は…

 結論を言いましょう。

 もし、売上が40%減少するような状況が続くと、ファーストリテイリング全体の売上にも影響しかねないと言えます。では、実際に株価のマーケットではどんな反応を示しているのでしょうか。

 これは意外な結果でした。

 反日感情を一段と高めるきっかけとなった、日本が韓国に半導体素材などの輸出規制を決めた7月4日以降の株価の値動きを見てみると、7月16日に高値70,230円をつけた後は調整していますが、悲観的な売りというよりも、移動平均線までの下落に過ぎず、売られたところでは買われています。

移動平均線とは
株式相場・外国為替相場・金相場など様々な金融商品の動きを一つの流れとして捉えることができる、もっともポピュラーなテクニカル分析の手法の1つです。一定期間の平均価格を日々計算して出した「答え」を線でつないだものです。例えば5日移動平均値は5日分の平均価格となります。

 つまり、SNSなどにて騒がれている程には、株価自体に大きいな影響を及ぼすまでには至っていないようです。

 政治的なニュースがSNSなどの社会的な話題となり、悲観論的な見方が広がりがちですが、マーケットは意外にも冷静だったのです。

 株価や財務諸表を見るだけで、ここまで企業とニュースのイメージは変わるもの。

 政治家の発言一つ一つや、経営者の資質のみに着目するのでもなく、無機質な財務諸表のグラフだけとにらめっこするのでもなく、その両者を観察することで「気になる企業の未来」はクリアになっていくのです。

【馬渕磨理子】
日本テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

―[あの企業の意外なミライ]―

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