今年の競輪はG3が車券もレースも熱いこれだけのワケ

日刊SPA! / 2019年9月20日 15時49分

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いくつかの競輪場では勝利者インタビューがファンの目前で行われる(9月某日・G3青森記念の朝)/筆者撮影

 全国43箇所で開催されている競輪は、競馬と同様、ほぼ毎週重賞レースが開催されている。まずはトップクラスの選手が出場する重賞レースに注目するのが初心者へのオススメの一つだ。しかし、今年の競輪は例年以上に重賞レースが重要になっている。重賞で一番ランクが低いG3であったとしても……

◆今年の競輪で重賞戦線がアツい理由

 今年の競輪重賞戦線は例年以上にアツい。なぜならば、競輪グランプリ出場争いに必要な獲得賞金額が拮抗しており、歴代最高の激戦になっているといっても過言ではないからだ。競輪グランプリの優勝賞金は1億円。競馬とは違い、選手が“まるまる受け取る”ため、そのインパクトは大きい。この競輪グランプリに出場できるのは9名。これが普段のG1ならば出場選手は100名以上によるトーナメント形式(予選、準決勝戦、決勝戦と勝ち上がっていく)なのだが、グランプリは1レースのみ。一発勝負で1億円を争うため、レースそのもののアツさも格段に違うのである。

 この競輪グランプリへの出場条件は、年6回あるG1の優勝者、競輪以外の自転車競技個人種目で大活躍した選手がまず選ばれ、そこから残った枠を最後のG1終了時点での獲得賞金額上位から9名になるまで選ばれる。G1で優勝できなくとも、年間を通してコンスタントに賞金を積み重ねて、夢の舞台の切符を掴むこと方法もある……というわけだ。

【競輪グランプリ出場条件の詳細】
(1)G1優勝者
(2)選考委が特に認めた選手(基本的にオリンピック自転車競技トラック個人種目メダル獲得者が入るため今年は今の所該当者はいない見込み)
(3)年内最後のG1(競輪祭)終了時点での賞金ランキング上位者(以下、賞金枠)

 例年の今頃であれば、賞金枠でほぼ当確となる選手が2~3名出てくるものなのだが、今年は当確が出ているのは佐藤慎太郎選手だけ。あとは大接戦の状況だ。

 このため、賞金の高い重賞レースでの賞金上積み争いが過去最高に激化しており、最もグレードの低いG3のレースであっても無下にできない状況なのだ。G3の優勝賞金は360万円。ボーダー付近の選手にとってはバカにできない金額であり、その結果、今年の競輪はG3のレースがアツくなっているのである。

◆360万円以内に3選手がひしめく大混戦状態!

【現在の賞金ランキング】
2019/09/18時点
★はG1優勝で競輪グランプリ出場権あり
1  脇本 雄太  102,592,000円★
2  中川 誠一郎 84,825,000円★
3  佐藤 慎太郎 76,901,400円
4  新田 祐大  66,320,000円★
5  平原 康多  61,661,600円
6  清水 裕友  60,242,000円
7  郡司 浩平  59,648,200円
8  松浦 悠士  53,621,000円
9  村上 博幸  43,832,400円
10 諸橋 愛   42,128,700円
11 菅田 壱道  40,624,000円
12 古性 優作  38,633,000円
13 太田 竜馬  38,331,200円
14 渡邉 雄太  38,279,700円
15 小倉 竜二  38,018,900円
16 原田 研太朗 32,290,600円

 競輪グランプリ出場権を持った選手を除いてみると、賞金枠では佐藤慎太郎選手が平原康多選手に約1500万円の差をつけている。だが、平原康多選手以降の賞金差を順番に見ていくと

平原-清水 約140万円
清水-郡司 約60万円

 平原、清水、郡司の3選手はG3の優勝賞金360万だけでも入れ替わりが可能な「僅差」なのである。このG3は、競輪グランプリメンバーが決まる競輪祭までに残りは、岐阜・京都向日町・松戸・京王閣・久留米・防府・四日市と7回の開催が予定されている。ちなみに郡司-松浦の差も約600万円と、G3優勝金にいくつかのレースで活躍すれば逆転も充分に有り得る位置だ。

 直近だと岐阜記念G3「長良川鵜飼カップ」は9月21日~24日、京都向日町記念G3「平安賞」は9月26~29日の日程だ。現在の予定では平安賞だと郡司、松浦選手に加え、さらに9位の村上博幸選手も参戦予定となっている。

◆1000万差があっても差を詰めておきたい理由とは?

 村上博幸選手は松浦選手と約1000万円も差がある。G3優勝では足らないではないかと思うかもしれないが、賞金を多く稼ぐ手段は別にもある。それはG1での決勝上位着での賞金だ。G1は優勝すれば競輪グランプリ出場権を獲得できるため賞金額は関係なくなるのだが、決勝2着ならば寛仁親王牌で1440万円、競輪祭になると1680万円が得られる。これで一発逆転が可能なのだが、先の平原・清水・郡司選手にG3を優勝されるとG1決勝2着の賞金を得ても逆転できるか微妙になってしまう。そのため、村上博幸選手以下の賞金上位選手も、G3(記念)戦線で今年は力が入る。これだけ多くの選手が可能性を残す年は過去になかったといっていいだろう。

<京都向日町記念G3「平安賞」(9月26日~29日)注目ポイント>
●賞金枠上位組から7~9位の3選手(郡司・松浦・村上博)が一挙に出場予定。いつG1決勝2着などでひっくり返されるかわからない彼らは少しでも上積みを目指す直接バトル! 3選手とも競走タイプが違い「郡司:自力」、「松浦:自在」、「村上:追い込み」なので、それぞれの3人の動きに注目するだけでも、初心者は競輪に触れて理解できると思うし、面白いはずだ。

 では、実際の賞金枠は何枠になるのだろうか? 賞金枠が多ければ平原・清水・郡司選手も焦る必要はないのだが、今年は賞金枠が狭まるかもしれない別の理由もあるのだ。

◆東京オリンピックの影響で二刀流選手が不在に!?

 さらに今年の賞金枠争いがさらに大混戦になる理由、それは競輪選手から自転車競技で東京オリンピック出場を目指す選手たちが今年のG1を優勝していることが関係している。今年すでに開かれたG1の優勝選手は以下の3名。

・中川誠一郎(全日本選抜・高松宮記念優勝)
・脇本雄太(ダービー優勝)
・新田祐大(オールスター優勝)

 この3名だが、このうち脇本、新田両選手が東京オリンピック自転車競技日本代表候補として世界の自転車競技大会を戦いながら競輪のG1を優勝している、まさに「二刀流」。この両名が競輪グランプリ前まで自転車競技に専念し、競輪への出走をしない予定となったのだ。つまり、残るG1「寛仁親王牌(10月11日~14日)」と、年内最後のG1「競輪祭(11月19日~24日)」で中川選手が優勝するか、両G1をほかの同一選手が優勝するというパターンでなければ、賞金枠は狭まることになるのだ。

 中川選手は強いのだが、脇本・新田両選手が不在のため残りG1優勝者が重複する可能性がグンと減ったことになる。中川選手がさらにG1優勝するか、誰かが残りのG1をダブルで優勝するしか賞金枠が広がる可能性はないからだ。重複がなかった場合、残り賞金枠は9-5=4枠となる。

 1枠は佐藤慎太郎選手がほぼ手中に収めているが、もし残りが3枠ならば先に説明した平原・清水・郡司選手が僅差で大接戦になっている。ここにG1決勝上位賞金で飛び込む選手が何人かいるとなると、この3人の争いでも上に立っておかなければならない。だから、今年の重賞戦線はG3でもアツいのだ。

◆注目したい一発逆転候補は?

 最近の競輪界でアツいのは「中国」と「四国」。かつては選手数が少なく、ラインで戦う競輪においてゲリラ戦を強いられてきた地域だが、ここ数年、多くの若手が育って競輪地図を激変させているのだ。中国地区からは現在賞金6位の清水裕友(山口)、8位の松浦悠士(広島)。四国地区からは「徳島3人衆」13位の太田竜馬、15位はベテランの小倉竜二、16位の原田研太朗。彼らの「今まで選手不足で不利だった中四国の競輪を変える」勢いに注目してみるのがオススメだ。

 21日からのG3岐阜記念では太田竜馬選手が賞金最上位として出場する。ここは賞金組のライバルがおらず、上位との差を詰める大チャンスだ。太田選手は23歳と若く、長い距離をスタミナで逃げ切る「逃げ」と鋭く前団を飲み込む「捲り」をバランス良く繰り出す正統派自力選手で、競輪の展開を学ぶうえでも初心者にとって非常にわかりやすいスター候補選手だ。もし岐阜G3で優勝すれば獲得賞金が4000万を超え、いずれかのG1決勝2着で平原・清水・郡司を飲み込める賞金差となるので注目してほしい。

<岐阜記念G3「長良川鵜飼カップ」(9月21日~24日)注目ポイント>
●太田竜馬選手以外に賞金上位組が不在。優勝できればG1決勝2着で競輪グランプリ出場権への大逆転チャンス!

文・佐藤永記(シグナルRight)
構成・的場雄一郎

【佐藤永記】
SPA!ウェブ班に所属しながら、シグナルRightの名義で公営競技の解説配信活動「公営競技大学」を個人運営している。Twitter:@signalright

―[公営競技生主・シグナルRightのひたすら解説]―

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