動くアイコラ・ディープフェイクの恐ろしさ。ポルノ被害やなりすましも…

日刊SPA! / 2019年9月30日 15時51分

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 近年著しい進歩を遂げているAI技術。その余波が世間を揺るがそうとしている。

「ディープフェイク」とは「ディープラーニング」と「フェイク」を掛け合わせた造語であり、顔の画像を別の動画に貼り付け、あたかも本当にその顔の人が喋っていたり動いていたりする動画を作る技術だ。2017年ごろからは、英語圏のウェブサイトでディープフェイクを活用した「フェイクポルノ」が現れ、エマ・ワトソン、ケイティ・ペリー、テイラー・スウィフトなどが自身の偽の性交動画を投稿される被害に遭っている。

◆日本で広がるディープフェイク被害

 そして近頃、その現象が頻繁に日本でも起きている。某有名女優やアイドルなどのポルノ動画が、中国や韓国、日本のポルノサイトから投稿され始めたのだ。中国では一般人でも手軽にディープフェイク動画を作れるアプリも配信されているそうで、芸能人にとどまらず一般人の不本意なポルノ動画がネット上に流出してしまう可能性もある。

 ディープフェイクが身近なものになることで、どのような弊害が生まれるのだろうか。インターネット上のトラブルや名誉毀損に明るい、港国際法律事務所の最所義一弁護士に話を伺った。

◆一般人に及ぶ危険性

 そもそもディープフェイクで他人の顔を合成することは何の罪に当たるのだろうか。

「元の動画の著作権者との関係で著作権侵害が問題となります。合成された被害者との関係では、名誉毀損が成立する可能性があります。その場合、損害賠償が認められる場合もありますが、特に芸能人の場合、肖像自体に経済的『価値』がありますので、賠償額は一般の方よりも高くなると思います」

 今は芸能人が被害にあっているディープフェイクだが、今後は一般人が被害者になることもある。

「一般の方がネット上で被害にあうケースでは、周囲の人間の犯行である場合が多くあります。例えば、『会社の同僚の写真を合成したポルノ動画』が作られる危険はあるでしょう。また、男女間のトラブルから、『元カノの顔を当てはめたフェイクのリベンジポルノ動画』が拡散されることがあるかもしれません」

 また、ディープフェイクが身近になれば、「なりすまし」や「イタズラ」が増えるという。

「以前、熊本地震の際に、『動物園からライオンが脱走した』というデマが広がりました。画像をよく見れば日本ではないことは、すぐにわかるのですが、瞬く間にネット上で拡散されましたよね。一見明白に誤りだとわかる静止画像ですらデマと共に広がる訳ですから、これが作られた動画の場合、騙される人はもっと増えるでしょう。ネットでは、『動画でも信頼できない』との姿勢は必要でしょう。

 個人的な恨みなどから、勤務先の社長の悪口を言っている動画を作られたり、『バイトテロ』のように、自分が勤め先で迷惑行為をしているような動画を作られたりすることもあるでしょう。もし、名前なども出されてしまえば、本人の知らないうちに『炎上』しているかもしれません。また、フェイクポルノが作られ、『昔、AVに出ていた』という噂を流されることもありうるでしょう」

 そのようなトラブルに巻き込まれてしまった場合、どのように対処すればいいのだろうか。

◆しかるべき対処法とは?

「まずは、ネット問題に明るい弁護士に相談すべきだと思います。ネット上には、削除代行業者による広告が掲載されていますが、高額な料金を請求されたり、一部の容易に削除に応じるサイトを削除しただけで根本的な解決に至らずに終わる場合もあります。

 ネット上の問題の解決は、ネット上ではなく、現実社会においてなすべきです。例えば、弁護士が法律上の手続きに則って、発信者情報開示手続を行うと、発信者には、プロバイダから『書留郵便』が届きます。加害者は、突然、現実社会において、自らの責任が追及される可能性に直面するのです。まずは、対応可能な方法について、弁護士からの助言を受けることが大切です」

 しかし、訴えを起こしてもネット上から全ての動画を消すことは難しいという。

「ネット上に拡散している情報を消し去ることはほぼ不可能です。動画自体は簡単にコピーされてしまいますし、外国のサーバーが使われている場合など、そもそも削除が不可能な場合もあります。人目につかないようにするという意味で、検索結果に表示されないようにする等の対応は可能ですが」

◆リスクの大きいディープフェイク

 投稿が面白半分だったとしても、被害者側に与えてしまうダメージははかりしれない。ネット上のデマやトラブルが原因で自殺者が出るケースもあるだろう。被害者の名前や顔が拡散されてしまえば、その人は不特定多数の悪意や善意の前に晒されることになる。また、加害者側のリスクも大きい。

「会社にバレれば、クビになることもあるでしょう。日本の裁判所が認める慰謝料は低く、名誉毀損で多額の損害賠償義務が生じることはまずありませんが、社会的な信用は失うでしょう」

 これから私たちの生活に身近になるであろうディープフェイクは、SNSやネットと密接に結びついている。「拡散される情報を安易に信じない」「自分の情報を不特定多数の人になるべく公開しない」というような、SNSやネットに対する慎重な姿勢が求められるだろう。<取材・文/ミノワリク>

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