日本が攻撃されても、米軍が反撃してくれるとは限らない/江崎道朗

日刊SPA! / 2019年10月15日 8時30分

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出典:陸上自衛隊Webサイト

―[連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗>]―

◆日本が攻撃されても米軍が報復攻撃するとは限らない

 北朝鮮は10月2日、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)らしきものを発射し、島根県沖の排他的経済水域に着弾した。

 北朝鮮の意図は不明だが、はっきりしていることがある。たとえ北朝鮮のミサイル攻撃によって日本に被害が出たとしても、アメリカをはじめとする国際社会がしてくれるのは、外交的支援にとどまるということだ。

 格好の前例がある。

 9月14日、サウジアラビアの石油関連施設がドローンなどによって攻撃を受け、大規模な火災が発生した。一時的だが、サウジの石油生産量の約半分、世界の石油生産量の約5%が減少する被害が出た。

 イエメンのイスラム教シーア派系の武装組織フーシが攻撃声明を出したが、アメリカのトランプ大統領は当初イランがその背後にいるとして報復攻撃を示唆した。だが16日には「戦闘は回避したいと強く願っている」と、発言をトーンダウンさせた。

 ポンペオ米国務長官も「サウジアラビアに対する直接の戦争行為だ」とイランを非難したものの、イランへの軍事攻撃には消極的姿勢を示した。そしてエスパー米国防長官が26日、サウジアラビアに対して地対空ミサイル「パトリオット」1基とレーダー4基、約200人の支援要員を追加で増派すると発表した。

◆アメリカが同盟国を守れない理由

 サウジアラビアは日米安保条約のような条約をアメリカと結んでいないものの、中東で米軍基地を受け入れている重要な同盟国だ。そのサウジアラビアが大規模攻撃を受けても、アメリカがしたことは、非難声明と200人の米軍兵士の増派なのだ。

 同盟国が攻撃されてもいまやアメリカはただちに反撃してくれるわけではない。それは「アメリカが同盟国を守るつもりがない」ということではない。

 今、イランと戦争に踏み切ったら米軍兵力を中東に集中せざるを得ず、アジア太平洋、特に日本や台湾の防衛が手薄になってしまう。1991年の湾岸戦争の頃は「二正面作戦」といって2つの地域で「同時に」戦争をする能力があったが、いまや米軍は1か所でしか大規模軍事行動はできないのだ。

 よってトランプ政権としては、イランと戦争をするとなると、北朝鮮や中国を抑え込むことができなくなる。安倍政権がアメリカとイランの仲介に奔走している背景にはこうした理由もあるのだ。

 それでなくとも中国の軍事力は以前と比較にならないほど強大だ。アメリカは太平洋における軍事的優位性を既に失っており、同盟国を中国から防衛するのは困難となる恐れがあるという報告書を8月19日、豪シドニー大学アメリカ研究センターも公表している。

 トランプ政権も防衛費を毎年7兆円くらい増やし必死に軍拡をしているが、中東と中国、2か所で「同時に」軍事行動ができるようになるにはかなりの時間が必要だ。

 軍事面で日本がアメリカに頼り切ったままだと、北朝鮮のミサイルが「間違って」日本に着弾し犠牲者が出ても、泣き寝入りするしかなくなるだろう。

【江崎道朗】
’62年生まれ。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)など

―[連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗>]―

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