ラグビーW杯で日本人の心をつかんだ、アイルランドサポーターのヤンチャぶり

日刊SPA! / 2019年10月24日 8時29分

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家族でラグビーを観戦(ローリーさん提供)

 ラグビーワールドカップ日本大会が、もたらしたのは一過性の熱気ではなく、ラグビーという文化なのだろう。にわかを歓迎し、相手をリスペクトし、その場を皆でめいっぱい楽しむ。そんなスタイルで、特に目立っていたのは鮮やかな緑のユニフォームを着て大挙したアイルランドのファンたちだ。

 アイルランドは10月19日の準々決勝で、優勝候補の最右翼である、ニュージーランド・オールブラックスに14-46で敗れ、初のベスト4入りは叶わなかった。

 ラグビーをこよなく愛するアイルランド人は、日本の各地で日本人とも交流。一次リーグで対決した静岡では、両チームが対戦した夜、スーパーやコンビニの前の広場で、ともに飲んで肩を組んで歌う集団が全国ニュースに。陽気な緑のグループが、まさにノーサイドを体現して話題を呼んだ。

 スーパーではレジで決済する前からビールを飲んだり惣菜を食べてしまうなど(注:欧米では店内で支払う前の飲食が許されている所が多い)、ややもすればトラブルになりかねない行動があったにもかかわらず、どこも平穏そのもの。なぜルールに厳しい日本人をも笑顔にさせるのか。どんなところが日本に愛される所以なのか。アイルランド人と日本人の国際結婚ファミリーに話を聞いた。

◆同じ島国、素朴な田舎、質実剛健。すぐに歌って踊り出す

 アイルランド出身の夫ローリーさんと日本人の妻・綾子さんは、お子さん2人と一家でスタジアム観戦に行くほどのラグビー好き。しかも、もう1人のお子さんで高校生の長男はアイルランドで、すでにラグビー部に入っているという。

「一緒に観戦した子供2人は、初めてワールドカップをスタジアムで観戦したのですが、面白くて仕方なかったみたいです。みんなすぐに歌い出すし、ワイワイ好きに楽しめるから」

 とにかくアイルランド人は、海外からでもスタジアムや現地パブに集合して、みんなで応援するのが大好き。夫婦は結婚前、日本と開催されたサッカーの日韓ワールドカップもそうだったと回顧する。

「アイルランド人は兄弟が多いんですね。アラフォー世代だと、兄弟姉妹が5~6人以上はざら。今も3人が一般的です。だいたい日本に友人がいるとなれば、泊めてもらおうと兄弟はじめ、いとこまで連れて来日するので、わが家も常にアイルランド人の集団が大会中には出入りする羽目になります」

 綾子さんは続ける。「家に押しかけられると大変ですが、憎めないところがありますね。同じ島国という共通点もあるからか、似た部分も多いんです。アイルランドは豊かな自然の国なので、日本の美しい田舎のように、人は大らかで素朴でお酒好き(笑)。英語で言うdown to earthという、質実剛健なベースがあるので、試合での騒ぎ方も迷惑と思った人もいるかもしれないですけど、そう思わせない、不快にさせない部分があると思います」

◆10本以上のビールを飲んで会場入りする酒豪軍団

 以前の記事でも伝えたように、驚くべくはその飲みっぷり。こちらも一団は、試合前にビールをコンビニかスーパーでたっぷり購入する。

 夫のローリーさんは、かなり「弱い方」らしく、試合前のアペタイザー(!)としては350mlの缶で5~6本と“自己申告”するが、他のアイルランドの友人は少なくとも500ml缶10本以上をグイグイ空けるのが試合前の“儀式”だ。

 もちろん、試合中は本番でこれ以上にガンガン飲むし、試合後も行きがけに立ち寄った店で、再びビールを買って飲むというザルっぷり。会場の通り道にある店は軒並みビールが売り切れになるなど、今大会で最もビールを消費する国との報道は事実だろう。

「アイルランドでは、道端や電車など公共の場での飲酒は禁止されています。だから思わずテンションが上がってしまうのでしょうが、電車の中でもみんな歌いだしてしまう。近くにいた日本の人に『何かのお祭りですか?』って尋ねられましたが、笑っていて迷惑そうじゃなかったからホッとしました」

 綾子さんは胸をなでおろした表情で言う。なお、「やんちゃで反抗期が大変だった」という長男は、アイルランドに渡り、ラグビーを始めてから精悍になったという。

「1年以上が経って、初めて送ってくれた写真がトライを決めた後の1枚。鼻から口から血を流してるんですけど、充実しているみたいで嬉しかったですね」

 アイルランドでは、ラグビーはダントツの人気スポーツ。だから、転入生もラグビーをしていると苛められないというほど。母の綾子さんは、「ケガが心配だけれど続けてほしい。田舎の高校なので、この前も友人が骨折してヘリ搬送されてましたけれども……」

 ラグビーという文化を通じて、人生も一家の絆も深まっているよう。だが先日行われた、準々決勝で日本もアイルランドも仲良く敗退。そこで後日、綾子さんに話を聞くと、少しご立腹だった。聞けば、夫ローリーさんが海外からの友人にチケットを手配して、連日のアイルランド戦と日本戦に出かけたのだそう。

 なんと、母子は置いてきぼり。だから、子どもたちも「ダディだけズルい!」と大ブーイング。どこの家庭も似たようないざこざは絶えないようで……。今、“ダディ”は精力的に家事に勤しんで、罪滅ぼしをしているそうだ。

取材・文/松山ようこ

―[ラグビーワールドカップ2019日本大会]―

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