総生産台数1200台の高級車・初代三菱プラウディアの魅力

日刊SPA! / 2019年10月27日 15時50分

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総生産台数1200台程度の初代三菱プラウディア

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 腕時計を中心に「中古」の素晴らしさ誰よりも信じている私。中古の魅力については著書『もう新品を買うな!』で詳しく書きましたが、中古でしか手に入らないモノの解説はまだ実施できていない次第です。

 ということで、今回は中古でしか入手できない名品をご紹介。その第1弾として、三菱プラウディアというクルマを取り上げたいと思います。

◆デビューして1年で生産終了。希少車・三菱プラウディア

 三菱プラウディアは2000年にデビューした三菱の高級車で、デボネアの後継を担う車種。デビュー翌年の2001年に生産終了となったため、その総生産台数はわずか1200台程度しかありません。デビューするや否や生産終了となってしまったため、当時から「希少車」としてクルマ好きには有名な車種だと思います。

 ちなみに、生産終了から11年後の2012年に2代目プラウディアが登場していますが、そちらは日産フーガのOEM。希少車というイメージが強いのは初代だといえます。

 そんなプラウディアというクルマに対して、「どんなクルマなのだろう?」と興味を持っている方はいるかと思いますが、プラウディアの記事はほぼ皆無。デビューしたての新車の場合、ジャーナリスト向けの広報車が用意され、メディアでコンテンツ化されますが、プラウディアの場合、そういった記事や動画はほぼありません。

 ですから、今回は、約8年に渡ってプラウディアのオーナーだった私が徹底的に解説したいと思います。なお、プラウディアには、V6とV8がありますが、私が所有していたのはV6モデル。話題の中心はV6モデルとなります。

◆プラウディアの乗り心地はどうなのか?

 プラウディアの運転感覚は、まさにショーファー向け仕様といったところ。すべての動作がもっさりしているため、雑にアクセルブレーキを操作しても、同乗者の頭がそれほど揺れません。

 同乗者の乗り心地は良い反面、運転していてあまり面白みを感じないといえます。アクセルを踏んでも思ったような加速はせず「遅い」という印象です。

 実際、パワー不足が目立つ場面もあり、高速道路などでトラックを追い抜かす際、キックダウンしてもっさり加速するのが当たり前。このクラスのクルマではキックダウンせずとも「スーッ」と加速するパワーを備えたクルマが当たり前ですが、それは2000年当時でも同様。ゼロクラウンの2500回転で発揮するパワーが、プラウディアの4500回転程度だという感じです。

 加速感は、2.5リッターのLクラスミニバンといった具合で、“重い車重に非力なエンジン”という印象があります。プラウディアV6モデルの場合、スペックを見ると、トルク35kg、240馬力あるため、1950kgの車重だったとしても、もう少し加速してくれそうだと思うところ。ショーファー向けセッティングのため、鈍いのだと思います。

 ただし、プラウディアの運転がつまらないかというと、意外とそうでもありませんでした。遅くても、船に乗っているような独特な乗り味であるため、意外と「味」を感じるのです。同じショーファーセッティングの他車と比べると、明らかに乗っていて楽しいと感じました。

◆高級車なのに前輪駆動はメリット? デメリット?

 プラウディアは、全長5000m以上という大型セダンながら、前輪駆動方式が採用されています。また、そのプラットフォームは、3代目デボネアがベースなのですが、それもまた2代目デボネアがベース。そして、またそれも80年代前半のギャラン∑がベースであるのです。

 メルセデス・ベンツの場合、かつてのEクラスクーペが「Cクラスベース」ということが話題になったことがありますが、それをプラウディアに当てはめたならば、ギャラン∑となるのです。

 そういったことから、走りは全く期待できないと思うところですが、実はそうでもありませんでした。一般道、首都高速、高速道路で不満を感じるのは、主にパワー不足であって、コーナーなどはそれなりな速度でこなすことが可能でした。

 その際、FFゆえのストレスを感じることはなく、FFのデメリットはあまりないと感じました。むしろ、軽井沢の雪道でも山岳部も走ることが可能であるなど、FRだとタイヤが空転してしまうような場面も難なくこなす性能を得られ、メリットのほうが大きかったと感じます。

 また、車内においても、その恩恵はあり、特に前席部分の足元の広さは、他のFR車とくらべて広いといえます。運転席の左足フットレスト部分のスペースは、私がこれまで乗ったクルマの中でもトップクラスの広さです。

 構造を見ると、後席にメリットがあると推測する人もいるようですが、むしろ後席においてFFゆえの広さは感じませんでした。プラウディアの後席部分は実際、広いといえますが、同世代のセルシオやベンツSクラスより特に広いとは感じません。

◆三菱グループの偉い人のためのクルマだからこそのこだわり

 日本には、多くの自動車会社が存在しますが、そのなかで高級車を作っているメーカーは少数派だといえます。そういったメーカーでも、高級車をラインナップしていた時代がありましたが、その品質は同世代の他車と比べて高いとはいえないことが多いと思います。

 三菱自動車も高級車ラインナップがほぼないため、不得意分野だと思われるところですが、実は三菱の高級車はよくできているのです。おそらく、三菱グループの経営者層に乗ってもらうという大義があるからこそ、技術者たちも気合いが入っていたのだと思います。

 そういった細部へのこだわりで、わかりやすいのは、全席と後席のシート形状です。

 クッションは、全席は固め、後席はかなり柔らかめとなっており、手で触ると違いをはっきりと感じるほど。また、前席より後席のほうが座面が高くなっているため、後席からでも前方がよく見えるという仕掛けとなっています。

 後席の窓といえば、クルマ好きは「全て開き切るか否か」を問いますが、プラウディアの広大な後席な窓は、窓枠から残らず開き切るのです。これだけ巨大な後席窓が、全部キレイに開くクルマは珍しいといえます。

 また、前席のセンターコンソール部分には、オーディオ入力とシガーソケット充電が用意されており、iPodなどを収納した状態で再生することが可能。当時のクルマでもオーディオ入力端子が用意されている車種はありましたが、プラウディアの位置はベスト。さらに、配線を通すための僅かなスペースもきちんと用意されています。ちなみに、音楽用CDチェンジャーも同じ場所にあります。

 ナビゲーションシステムは、当時のトヨタなどはすでにDVDとなっていましたが、プラウディアはCD-ROM。ただし、トランク部分にナビゲーション専用のCDチェンジャーが存在しました。ですから、プラウディアは2つのCDチェンジャーを搭載していたのです。ナビ用CDチェンジャーで複数のCD-ROMから地図を読み取る仕組みのため、CDでも当時のDVDに負けない縮尺まで対応していました。ただし、東京⇒京都など、長距離移動をする場合、30秒ぐらいカーナビゲーションが使えなくなりました。

◆静粛性と乗り心地は高レベル

 TV番組『新車情報』(TVK)が計測したところ、プラウディアの時速100km走行時の騒音は、59~60dbとのこと。これは、3代目セルシオと同じ静粛性で、当時としては世界トップクラスだといえます。

 今でも、この騒音レベルは低いといえ、高級感を感じる基準値だと思います。

 また、乗り心地も非常にレベルが高く関心するレベル。ダブルウィッシュボーンやエアサスペンションといった高級車御用達アイテムが一切ないにも関わらず、これを実現させている三菱は凄いと思います。

 ちなみに、V8を搭載するC仕様には、オプションで「電子制御サスペンション」が選択可能でしたが、それは「エアサスペンション」を意味します。

 3代目デボネアにもこの「電子制御サスペンション」搭載車がありましたが、そちらはオプションではなく、「エクシードC」といったグレードに標準搭載。このグレードのデボネアは、プラウディアもびっくりな、隠れ希少車だといえます。

 ただ、プラウディアの場合、「電子制御サスペンション」搭載車はオプション扱いだったため、それを搭載した中古車はほぼ見かけません。つまり、「V8の電子制御サスペンション仕様車」が希少車プラウディアの中でも最もレアな組み合わせだといえます。

 なお、兄弟車として、韓国の現代エクウスがありますが、見た目はほぼ同じでも、プラウディアの細部へのこだわりは凄まじいため、その高級感には大きな差があるといえます。

◆プラウディアはV6か? V8か?

 プラウディアには、V6とV8が用意されていますが、V8のほうがなにかとインパクトが高いでしょう。それもそのはず、後にも先にも、三菱のV8エンジンは当時のプラウディアとディグニティに搭載された8A80だけ。

 4500ccのエンジンは、280馬力を発揮し、当時の自主規制最高出力を誇っています。また、トルクも40kg以上あるため、スペック的にも、V6よりはるかに魅力的だと感じます。実際、私もプラウディアを買うとき「V8が良い」と思ったのですが、4か月待っても出てこないため諦めてV6を買った経緯があります。ただそれが、後になってみると正解ということがわかりました。

 三菱ディーラーの方いわく、V8エンジンはトラブルがとても多くオススメできないとのこと。同じエンジンを搭載した現代自動車のエクウスもトラブルが多かったらしく、信頼性が低いエンジンだったのです。

 その点、V6エンジンは大きなトラブルがなく、10万km近く乗っていても困ったことはありませんでした。

◆プラウディアはどんな中古車を選ぶべきか?

 プラウディアは総生産台数1200台程度という超希少車であるため、中古車の数は少ないと思われるかもしれません。

 しかし、その「希少」というイメージが新車当時からあったためか、意外と売出し台数がある存在です。希少であるがゆえに、廃車になる確率が低く、残っているクルマが多いのでしょう。むしろ、同世代にプラウディアよりはるかに多く生産された車種(例えばトヨタビスタアルデオ)などのほうが、現在では入手難易度が高いぐらいです。

 さらに、プラウディアは走行距離5万km以下、3万km以下といった低走行車も意外と出てきます。

 ここ数年の傾向は、20万km近い走行距離の車体か、低走行な車体といった二極化という印象がありますが、コレクションの1台なら、1万~3万km程度の車両が良いかもしれません。

 また、5万km前後の車両でも100万円以下という傾向があるため、普段遣いの1台としても無難だといえます。

 以上、プラウディアの魅力をお伝えしましたが、このクルマの魅力はなんといっても、その希少性だと思います。私は8年間で10万km近くプラウディアを走らせましたが、その間、同じクルマに出会ったのは一度だけ。街中で、ほぼ見かけないプラウディアというクルマは、所有する満足度の高い1台だと思います。

【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

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