嵐が奉祝曲を歌った「国民祭典」への賛否と誤解/江崎道朗

日刊SPA! / 2019年11月23日 15時51分

写真

天皇・皇后両陛下(写真/日本雑誌協会代表撮影)

―[連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗>]―

◆国民祭典はあくまで民間主催の行事/江崎道朗

 日本には古代から宮廷歌人という伝統がある。天皇陛下や皇族を讃える歌を詠むことを仕事とする歌人たちのことで、その歌の多くは「万葉集」などに収められている。

 その伝統を現代に蘇らせようということなのだろう。11月9日の夕方、東京都千代田区の皇居前広場で開催された天皇陛下の御即位を祝う「国民祭典」において、人気アイドルグループの「嵐」のメンバーが御即位をお祝いする歌を歌い上げた。

 その様子はテレビでも生中継され、二重橋から祭典をご覧になっていた皇后陛下が涙をぬぐうような仕草を見せられたことが話題になった。

◆なぜ「税金使って嵐?」というのは誤解、寄付で運営される

 なぜ税金を使った行事に「嵐」が出るのか、という疑問の声も出たが、この「国民祭典」は超党派の議員連盟や財界などでつくる民間の「天皇陛下御即位奉祝委員会」が主催し、その経費も民間からの寄付によって賄われている。

 この日、皇居前広場に設置された特設舞台では午後5時ごろ、式典開会のファンファーレが鳴り、歌舞伎俳優の松本白鸚さん、女優の芦田愛菜さんらがお祝いのメッセージを読み上げた。

 午後6時過ぎ、皇居・二重橋に天皇皇后両陛下がお出ましになると、安倍晋三総理の祝辞の後、陛下のご研究分野である「水」をテーマにした組曲「Ray of Water」(作詞・岡田惠和、作曲・菅野よう子)を全盲のピアニスト、辻井伸行氏と「嵐」のメンバーらが演奏や歌で披露した。

 安倍総理が出席したものだから「右傾化」と結びつける意見も散見されたが、皇居前広場で民間主催のお祝い行事が開催されるのは今回が初めてではない。

◆国民祭典の始まりは、昭和60年の小さな行事

 陛下の祖父、昭和天皇の御在位60年の際に民間有志が提灯を手にお祝いに駆けつけたところ、昭和天皇がお出ましになり、その祝意にお応えになったのが最初だ。

 平成2年(’90年)にも皇居前広場において民間主催で、陛下の父、上皇陛下の御即位をお祝いする行事が開催された。

 この祝賀行事が今のように大がかりになったのは、平成11年(’99年)に開催された御即位10年祝賀行事のときであった。なんと人気ロックバンド「X JAPAN」のリーダーYOSHIKIさんが自作の奉祝曲「Anniversary」をピアノで演奏し、二重橋から上皇上皇后両陛下もお聞きになられたのだ。

 その10年後の平成21年、御即位20年に際しても皇居前広場で民間主催の祝賀行事が開催され、組曲「太陽の国」(作詞・秋元康、作曲・岩代太郎)をレコード大賞受賞の人気グループ「EXILE」のメンバーがダンス・パフォーマンスと歌で披露した。

 このときは直前に政権交代があり、鳩山由紀夫民主党政権の時代であったが、鳩山総理も出席し、祝辞を述べている。皇室は、与野党の対立を超えた存在なのだ。

 現行憲法では、天皇は「国民統合の象徴」と規定されている。与野党の政治対立を超え、126代も続いている天皇陛下のもとで国民がまとまっていく国が日本という国なのだ。

【江崎道朗】
’62年生まれ。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)など

―[連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗>]―

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング