文在寅政権 vs 韓国検察の泥沼バトル。ついに「自殺者」も…

日刊SPA! / 2019年12月10日 8時50分

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文在寅大統領(韓国大統領府提供)

◆疑惑が続出し、曹国元法相に再び捜査の手が?

 11月4日、韓国・大統領府(青瓦台)に検察の家宅捜索が入った。捜査は「強制」ではなく、検察が要請した資料を青瓦台側が「任意」で提出するかたちだったが、家宅捜索自体、文在寅(ムン・ジェイン)政権になってから3回目。娘の大学不正入学疑惑や私募ファンドの不正投資疑惑などで、法相辞任を余儀なくされた曹国(チョ・グク)氏を巡る一連の騒動に端を発した文政権と検察の“暗闘”は、今後、さらにヒートアップしそうな気配だ。

 今回の家宅捜索の容疑は、青瓦台の民情秘書官室が、先月末に収賄の容疑で逮捕された釜山(プサン)市の柳在洙(ユ・ジェス)元副市長への「監察」をもみ消した疑い。柳元経済副市長は文在寅大統領が政治の「師」と仰ぐ故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の元秘書だったため、事件当時、民情秘書官室のトップだった曹氏が「忖度」して、捜査を妨害したとする疑惑も浮上している。

 だが、文在寅政権を巡る黒い疑惑はこれだけではない。昨年6月に行われた蔚山(ウルサン)市長選に大統領府が不正介入した疑いも噴出しているのだ。

 保守系現職の金起炫(キム・ギヒョン)候補と左派与党系の宋哲鎬(ソン・チョルホ)候補の一騎打ちとなった市長選は、当初、金氏が圧倒的優位と見られていたが、昨年3月に金候補陣営に不正疑惑が持ち上がり警察が捜査を開始。選挙公示後に家宅捜索が入る事態に発展したことで、対抗馬の宋候補が逆転勝利を収めた。

 だが先月、この捜査自体が、当時曹氏がトップの役職にあった青瓦台の民情秘書官室からの情報提供を機に始まったことが発覚。こちらも、青瓦台からの「下命」によって対立候補を告発したのではないか? と疑いの目を向けられているのだ。龍谷大学教授の李相哲氏が話す。

「2つの介入疑惑は、ともに曹国氏が主席秘書官を務めていた民情秘書官室が中心的な役割を担っていますが、特に蔚山市長選への介入疑惑は、文在寅政権の典型的な手法と言っていい。最初に人事権を掌握している民情秘書官室が地元の警察庁長を政権に都合のいい人物にすげ替え、対立する野党候補のスキャンダルを探らせ、選挙公示後のタイミングで家宅捜索を行った……。

 新市長は過去8回立候補した選挙のすべてで落選しており、市長選前の情勢調査でも現職候補に15ポイントも差をつけられていたのに、このスキャンダルが決定打となり逆転勝利しています。しかも、新市長になったのは、文大統領が若い頃、盧武鉉元大統領とともに弁護士事務所を構え『兄貴』と慕っていた人物。過去に『自分の宿願は兄貴を当選させること』と公言し、曹氏も一時は新市長の後援会長を務めるほどの仲でした」

◆民情秘書官室の「元職員」が謎の死

 加えて、疑惑に関わったとされる民情秘書官室の「元職員」が謎の死を遂げたことも疑惑を深めている。「元職員」は蔚山市長選を巡る不正疑惑で警察に情報提供した人物と見られ、検察が事情聴取する直前に自ら命を絶ったという……。

 青瓦台は死亡した職員とは別の職員が外部から情報提供を受けて警察に伝えたとして、直接指示を出したことは否定しているが、果たして、真相はどこにあるのか? 『朴槿恵(パク・クネ) 心を操られた大統領』(文藝春秋)などの著書もあるフリーランスライターの金香清氏が話す。

「自殺した検察官は当時、青瓦台民情秘書官室に出向中で、実際、蔚山市に調査のために派遣されたこともあった。現在の検事総長が彼を推薦し出向が決まったように、かなり有能な人物だったようです。問題は、市長選で与党候補に有利になるよう対立候補の側近の不正疑惑を青瓦台が蔚山警察に捜査するよう直接指示を出していたかどうかという点で、検察は『選挙戦の妨害工作のために派遣された』とし、野党も『政府が口止めをし、それを苦に自殺した』と主張。

 一方、青瓦台は蔚山での調査は選挙とはまったく無関係だとし、当時報告されたレポートも公開しています。自殺した元職員が検察の聞き取りが終わった後に、青瓦台の行政官に電話で『これから自分は辛くなるだろう』『私個人が抱えるべき問題』と話していたことから、与党側は『検察が取り調べで圧力をかけて別件逮捕を仕立て上げようとしていた可能性もある』と訴えている」

 文政権と韓国検察の激しいバトルは、ここにきて泥沼の様相を呈しているが、この両者の対立は必然と言えそうだ。金氏が続ける。

「検察が大きな権力が持つのには朴正煕(パク・チョンヒ)政権時代からの流れです。軍事独裁政権の李承晩(イ・スンマン)政権では軍人が力を持ち、検察は反発していた。朴正煕政権では司法試験をパスした検察のエリート意識をくすぐる方法で、強い権限を与え、一方で政権に反発する検察官に対しては徹底して圧力をかけてきた。

 だから、韓国の検察は警察の捜査を指揮する立場にあるだけでなく、起訴権を独占しており、法務大臣は盧武鉉・文在寅両政権で任命された3人(曹氏を含む)を除いてすべて検察出身者だった。このように強大な力を持つ検察の権力を分散することは進歩政権の悲願で、金大中政権以来、検察改革は課題とされてきたため、激しい抵抗を受けるのは当然なのです」

◆真相解明は進むのか?

 今後、真相解明は進むのか? 前出の李氏が話す。

「自殺した元職員は遺書に『携帯電話を初期化しないでくれ』と書き残していた。携帯は警察が押収したが、今は検察の手にあり、携帯を戻すための法的申請は棄却された。現在、警察はコピーしたデータを復元しようとしており、もし公になれば、文政権を吹き飛ばす爆弾になる。

 一方で、検察も青瓦台から大きな圧力を受けている。曹前法相時代の検察改革により、検察の人事権や予算配分を握る局長は、すべて青瓦台の息がかかっており、尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の身さえ危うい。だが、青瓦台が尹検事総長に警告した翌日に、青瓦台に3度目の家宅捜索が行われたことからも、検察が『政権の圧力には屈しない』という姿勢は明確です」

 12月には日韓首脳会談も控えている。恩讐のバトルが日韓関係に及ぼす影響は少なくないが、韓国ドラマ仕立ての内紛劇はまだまだ終わりが見えない……。

取材・文/週刊SPA!編集部 写真/時事通信社 EPA=時事
※週刊SPA!12月10日発売号より

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