高輪ゲートウェイ駅開業の3月14日に廃止された駅がある…現地に行ってみた

日刊SPA! / 2020年3月14日 8時50分

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南弟子屈駅

―[シリーズ・駅]―

 毎年3月はJRをはじめ、鉄道各社がダイヤ改正を行う時期。本日3月14日、ダイヤ改正に合わせて山手線に46年ぶりとなる新駅、高輪ゲートウェイ駅が開業する。

 しかしその裏では、同じ日にひっそりと廃止を迎える駅もある。

◆利用客は1日たったの1.2人

 今回はその廃止となる駅のひとつ、南弟子屈駅(みなみてしかが駅、北海道弟子屈町)を訪問。恐らく、コアな鉄道ファンを除き、ほとんどの人は駅の名前も聞いたことがないだろう。

 この駅があるのは、網走駅と東釧路駅を結ぶJR釧網線。北海道の道東を走る166.2キロの路線で、沿線には釧路湿原や摩周湖、阿寒湖、世界自然遺産の知床などの観光名所も多数存在する。だが、2019年の輸送密度(1日の平均通過人員)は380人で、1975年(1817人)から約5分の1に激減(※JR北海道『釧網線 線区の現状について』より)。路線の維持管理に莫大な費用がかかり、2018年度の釧網線の収支状況はおよそ14億円の赤字。100円の運賃収入を得るのになんと603円の費用がかかっているという。

 なかでも南弟子屈駅の2015年~2019年の1日の平均乗車人員は1.2人。もはや地元住民の足にすらなっておらず、廃止もやむなしだろう。

 そこで廃止前に南弟子屈駅に行こうと思った筆者だが、鉄道だとアクセスが大変不便なことに気づく。1日の停車本数が上下線各6本と少ないのはローカル線ではよくあることだが、いずれも朝と夕方以降に集中していて昼間に停車する列車が1本もないのだ。

 そのため、釧路に前乗りで1泊して、翌朝6時3分発の釧網線の始発列車の網走行きに乗車。1両編成のディーゼルカーは旅行者や鉄道ファンらしき人ばかりで、途中駅で乗車してくる通勤・通学客もほんのわずか。座席にも余裕があった。

◆改装した貨車が駅舎の代わり?

 列車は早朝の道東の原野を走り、車窓からは国の特別天然記念物のタンチョウ(丹頂鶴)を見ることができた。冬場は『SL冬の湿原号』(※今季は運行終了)、春~初夏にかけては『くしろ湿原ノロッコ号』(※2020年は4月29日~5月10日、31日~6月21日、25日~30日)など観光列車が運行されている路線ということもあり、景色を見ているだけで気分が癒される。

 南弟子屈駅には7時17分に到着。だが、網走方面の次の列車は15時台まで1本もない! 出発地の釧路に戻る8時45分発という列車があったが、それでも90分近く待つことに。ホームも駅前も除雪されていたが、あるのは貨車を改装した駅舎という名の待合室があるだけ。駅員もいなければ改札口はおろか、トイレすら置いてない。

 ちなみに駅が開業したのは1929年。当時は木造の駅舎があり、1953年の岸恵子主演の映画『君の名は』(※2016年公開の同名のアニメ映画とはまったく別の作品)のロケで使用。劇場公開後は今でいう聖地巡礼で訪れる人も多かったそうだ。

 この日、南弟子屈駅では筆者のほかに2人の男性客が下車。いずれも鉄道ファンで「3月で廃止になるのを知り、その前に来たかったんです」とは都内から来た21歳の大学生。

 もう1人の名古屋から来たという39歳の会社員は、これが二度目の訪問。「20年前に訪れたことがあり、最後にもう一度見たかったので」と再訪の理由を語っていた。

◆2020年5月7日には札沼線の16駅も廃止に

 待合室は雪風こそしのげるが、暖房なんて代物はない。1日平均1人しか利用しない駅なので当然といえば当然だが、ジッとしているだけでも底冷えして寒い。そこで駅周辺をブラッとしてみることに。

 田舎だが建物はところどころにあり、駅前には立派な一戸建てや工事会社の社屋もある。さらに駅前の一本道を200メートルほど進むと国道391号線が走っており、商店やガソリンスタンドのほか、平屋の集合住宅が何棟も建っている。建物の前には車も停まっているので住んでいる人もいるようだ。

 それでも駅を利用する人がいないのは、車が地元の足になっているからだろう。周りにもこれといった見どころはなく、一面雪で覆われた畑があるだけ。でも、個人的にはこういう田舎は嫌いじゃない。

 そう思う人は筆者だけじゃなかったのか、駅に置いてあった数冊の思い出ノートは訪れた人のメッセージで埋め尽くされていた。なかには廃止を惜しむ書き込みも数多くあった。

 こうした廃止になる駅や路線などを巡るのを“葬式鉄”と呼ぶのだが、今年5月7日には同じ北海道を走る札沼線の北海道医療大学駅から先の47.6キロ、終点の新十津川駅(※『日本一不便な鉄道駅に行ってみた!』)を含む16駅がその歴史に終わりを告げる。

 なんともさびしいものだが、JR北海道の厳しい経営状態を考えれば仕方がないのも理解できる。これも時代の流れなのかもしれない。<TEXT/高島昌俊>

【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。世界一周(3周目)から帰国後も仕事やプライベートで国内外を飛び回っている。

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