コロナ禍で家庭内の性暴力が増加…少女を性的虐待から守るには?

日刊SPA! / 2020年6月16日 8時54分

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 コロナ禍によって甚大な被害を受けたのは、感染者や経済だけではない。”家族”という共同体の中で追いやられ、絶望的な日々を送る少女がいる。その実態に迫る。

◆少女への性的虐待の闇

 中高生の望まぬ妊娠が増えている。親が育てられない子どもを匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本市西区)では、今年4月に妊娠相談窓口へ寄せられた中高生からの相談件数は、過去最多の75件だった。

 ここに、見過ごせない問題がある。若年層の望まぬ妊娠の裏には、ステイホーム禍における家庭内での性暴力による被害者も含まれているのだ。

 4月下旬、大阪府在住の伊藤美咲さん(仮名・10歳)は、母親に付き添われ産婦人科を訪れた。新型コロナの影響で看護師の母親は2月下旬から激務に追われ、休校中の美咲さんは、休職中の母親の恋人と二人きり。母親不在の自宅で美咲さんは男に犯され、妊娠してしまった。

「ずっとママに言いたかったけど言えなかった。でも気持ち悪くなって思い切って相談しました」

 美咲さんは現在、妊娠12週目。つわりの症状もある。しかし幼い彼女にとって堕胎は母体へのリスクが大きすぎるという考えから、出産する方向だという。事態を知った母親は警察に通報、男は逮捕されている。

 後藤恵那さん(仮名・12歳)は父親とその再婚相手と暮らしている。昨年、初潮を迎えた彼女は、経血で布団や洋服を汚してしまうこともある。そんな彼女に苛立った義母から無理やりタンポンを挿入された。あろうことか、実父からは口腔性交を強要されている。

「家庭内の性暴力はマスコミで報じられる機会はほとんどありません。けれど、現実には起きています。体感ですが、娘をレイプする父親は年々増えていると思う」

 セックスカウンセラーの傍ら、NPO法人「若者メンタルサポート協会」で相談員として活動する竹田淳子氏はそう語る。

「性被害に限らず、コロナ禍で子どもたちからの相談件数が激増しています。私も今まさに、22人の相談者と同時並行でやり取りしている状態です。中にはどんなに劣悪な環境でも『お父さんと離れたくない』『今の生活を壊したくない。自分がガマンすればいいんだ』と思い込んでいる場合もある。レイプされるのは自分が悪い子だからと思い込んでしまっているんです。当然、内容によっては児童相談所につなげることもありますが、自治体によって対応にバラつきがあったり、一度補導された際に嫌な思いをした子どもが行きたがらないケースもある。一筋縄ではいかないんです」

 コロナ禍で学校にも行けず、家にもいられず、保護施設にも相談できない。そんな少女たちのSOSが竹田氏の元に届くこともあるが、それさえ氷山の一角。

「ネット環境がない、スマホも持っていない子は手立てがなく、絶望的な日々を送っていると思う。せめてこうした現実があることを大人たちが少しでも認識し、気にかけてほしいと切に願います」

◆性虐待を呼び起こす原因は性欲ではなく支配欲

 そもそも家庭内での性暴力など、あってはならぬことだ。だが、なぜこうも悲劇は繰り返されるのか。依存症問題に詳しいソーシャルワーカーの斉藤章佳氏は語る。

「性暴力は性欲に起因していると思われがちですが、実際は支配欲の問題であるケースが多い。自分が優位であると実感するために、暴力によって“自分の言うことを聞く弱い存在”をつくるのがDVや虐待の本質です。性的虐待は、それが性的なもので表出した究極の形といえます」

 娘に性暴力を振るう父親というと薬物依存症や特殊な性癖の持ち主などと思われがちだ。しかし実態は、世間一般が抱くイメージと乖離している。

「性暴力を振るう父親は、実は社会的地位の高い仕事に就いていたり、一見『まとも』と言われている人も多い。そもそも親は、自分の一存で子どもを生かすも殺すもできる圧倒的な支配権を持った存在であり、人の脳は自分の優位性を確認してストレス発散をするときに快楽物質が分泌される。つまりイジメには依存性がある。加害者性は、犯罪者に限らず誰しも潜在的に持っているものなんです」

 当然、支配権を持つすべての父親が性虐待をするわけではない。

「加害者性が発動するのは極度のストレスや過労で追い詰められたり、孤立したとき。特にコロナ禍は減給やリストラ、倒産など、誰しもが極限状態にあるといえます。特に男性は、自死か他人への暴力か、と二者択一になりやすい。その背景には、逃げたり休んだり、他人に助けを求めることは『男らしくない』とする社会的な刷り込みの影響があります」

 絶望的な現実の前に、はたして解決策はあるか。

「まずは偏見を持たず現実を知ること、そして万が一、周囲の子どもが性暴力や虐待について相談してきた場合は、否定せずに耳を傾けてください。『隙があったんじゃない?』『そんな格好をしているから』など、子どもを責める発言は絶対にやめてください。子どもがなにを着ようが、どこにいようが大人が性加害をしていい理由にはなりませんから」(竹田氏)

 万が一、虐待かもと思ったら「189(いちはやく)」に電話をすれば児童相談所につながります。人が潜在的に抱える「加害者性」、状況次第では誰しも子どもに虐待をするかもしれない。家庭内の悲劇は、必ずしも別世界の出来事ではないのだ。

◆売春特需の陰で漂流する“神待ち”少女たち

 家庭内性虐待のおぞましさには閉口せざるを得ない。だが、そんな彼女たちが家以外に居場所を求め、藁をもすがる思いで誰かを頼ろうとしても、そこにはまた別の罠が待ち受けている。

「家出をしたい少女が、SNSを通じて寝泊まりする場所や食事を提供してくれる人物を探すことを“神待ち”と言いますが、そうした出会いを介した性暴力にも注目してほしいです」

 そう語るのは、少女の売春事情などに詳しい文筆業の鈴木大介氏だ。昨年11月、行方不明になっていた大阪府の女児(12歳)が、SNSで知り合った栃木県の不動産業の男(37歳)の家で、別の中学生少女2人と共に生活をしていたという誘拐事件が起きたことは記憶に新しい。

「コロナ禍では、売春斡旋業者の求人増を耳にしました。風俗業界の自粛によって仕事にあぶれた風俗嬢を取り込もうということだったんですが、問題はこれによって業者があえてリスキーな未成年を使う意味を失ったこと。少女たちからすると、Twitterやアプリを介したパパ活や神待ち以外の選択肢を失ってしまったわけです。『管理売春と神待ち行為のどちらがマシか?』というのも悲しい話ですが、斡旋業者が介在することで、客から少女への暴力や脅迫には少なからず抑止力が働く場面もある。なんの後ろ盾もなく、見知らぬ男の家に転がり込む危険性に少女たちは晒されているのです。ただ逆説的に、そんな危険を冒してでも家から逃れたい劣悪な環境にあるとも言えますが……」

 若者に人気のアプリTikTokで「神待ち」と検索すると、驚くほどの数が表示される。逃げ場のない無垢な社会的弱者と、それを食い物にする大人の存在。家出少女を巡る闇は深い。

【竹田淳子氏】
虐待やレイプ、薬物依存、服役など波乱の半生を経て、現在はカウンセラーとして風俗嬢から子どもまで幅広い相談に乗っている。占い師としての一面も

【斉藤章佳氏】
榎本クリニックにソーシャルワーカーとして長年勤務、さまざまな依存症問題に携わる。『「小児性愛」という病 それは、愛ではない』など著書多数

【鈴木大介氏】
’73年生まれ。犯罪する側の論理、犯罪現場の貧困問題をテーマに、裏社会、触法少年少女らを中心に取材。小説『里奈の物語』『最貧困女子』など著書多数

取材・文/アケミン 仲田舞衣

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