都知事選など「小池百合子、憲政史上初の女性宰相」へのバネにすぎないのだろう/倉山満

日刊SPA! / 2020年7月3日 6時52分

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これまで、都知事選に限らず「まだマシなのは誰か」が投票基準だった人は多いはずだ。しかし、閉塞感の打破には「ポスト安倍」を見据えた判断が我々に求められるのだろう 写真/時事通信社

―[言論ストロングスタイル]―

◆都知事選など「小池百合子、憲政史上初の女性宰相」へのバネにすぎないのだろう

 東京都知事選挙で、小池百合子知事が圧倒的な支持を得ているらしい。

 この御仁、コロナ騒動で何をしていたのか誰もが忘れていたが、東京オリンピックの延期が決まるや突如として連日メディアに登場、MXテレビなど「小池広報チャンネル」と化す有様だった。

 不用意に「ロックダウン」を口走り大混乱させた後、「国が出さないなら都が金を出す」とのパフォーマンスで雀の涙ほどのバラマキを行った。確かに補償金を出したのは評価すべきだが、同時に、その前の大混乱の原因を作ったのが誰かも忘れてはなるまい。

 これは安倍晋三首相も同じなのだが、疫病対策の要諦をわかっているのか。人心を鎮めることであり、金はその最も重大な道具にすぎない。札束で頬を殴るような渡し方をして国民が反発しても、為政者の責任だ。それでも多くの国民は何の法的権限も無い「自粛要請」に従った。日本が欧米に比してコロナ禍の被害者が少ないのは国民のおかげであり、アジアの中で犠牲者が多いのは政治家と官僚の責任であると自覚すべきだろう。

 そんな感謝の念など小池知事には微塵も見えないが、一方で選挙には盤石の姿勢で臨んでいる。都議会が閉じ、選挙戦が始まる直前まで、自粛を続けさせた。東京アラートなど、「やってみたかった」以外の理由がまったく見いだせないが、自粛を続けさせるのには大きな意味がある。対立候補の活動を阻止するためだ。人々に恐怖を煽り、あらゆる活動を自粛させれば、当然ながら政治活動は制限される。ならば、露出度が圧倒的な現職が有利に決まっている。

 小池知事は政治経歴において一度も公明党に喧嘩を売ったことが無いのだが、今回は二階俊博自民党幹事長も味方につけた。これで敵対する自民党東京都連も抑えた。さらに、野党の支持基盤である労働組合の連合も切り崩した。組織票では圧倒的である。

 噂される学歴詐称疑惑も、どこ吹く風。小池都知事の目論見は、都知事選挙など「憲政史上初の女性宰相」への跳躍台にすぎないのだろう。もっとも、政界の一寸先は闇、3年前も土壇場の決心がつかずに政権を逃した。何が起こるかわからないのが世の中だ。

 今回、小池氏以外に4人の有力候補がいる。その中で、NHKから国民を守る党(ホリエモン新党)の立花孝志氏は路線が独自すぎるので論評しがたいが、他の3人の動向は注目に値する。

 野党統一候補に名乗りを上げたのが、元日弁連会長の宇都宮健児氏だ。宇都宮陣営は2位死守が至上命題だ。ただ、共産党が支持基盤なので立憲民主党と社民党は好意的だが、国民民主党は自主投票で事実上の敵対的中立、連合に至っては離反して小池陣営に走ってしまった。

 都知事選は、特に今回の選挙は、国政の縮図だ。仮に自公が応援する小池が1位、立民ら野党連合が推す宇都宮が2位になったとしよう。国政の構図そのものだ。

◆なぜ枝野以下立憲民主党幹部は、増税に固執するのか。理由は、バカかスパイのどちらかしかない

 これに待ったをかけたのが、れいわ新選組の山本太郎氏となる。山本氏は「減税」――特に消費減税――を掲げて政界の台風の目と化している。与党が増税を掲げているのだから、野党が減税を旗印に戦うのは理の当然だ。ところが、頑なに減税を拒否する愚か者がいる。枝野幸男ら立憲民主党の幹部どもだ。

 先日も須藤元気参議院議員が立憲民主党を離党表明、山本氏を応援すると宣言したことで離党届も受け取られずに除籍とされた。立憲民主党など、犯罪をしでかした議員の離党届も受け取る政党だ。要するに、幹部は忠誠心でしか議員を評価していない。須藤議員は「なぜ減税を訴えたら幹部に従えと命令されなければならないのか」と涙ながらに訴えた。立民幹部には生意気としか映らないだろう。

 しかし、なぜ枝野以下立憲民主党幹部は増税に固執するのか。理由はバカかスパイのどちらかしかない。連中が与党の回し者なのか、それともパーフェクトなバカなのか、いずれにしても国民の敵であることには違いが無い。立憲民主党が野党第一党であり続ける限り真っ当な人々は寄り付かず、一定数以上の勢力にはならないし、結果として与党がいかなる悪政をしても許される。その証拠に、ここまで無能の限りを尽くした安倍内閣の支持率が、まだ3~4割もあるではないか。

 こうした閉塞状況を打破しようとしている1人が、山本太郎氏だ。大きな組織を持たない山本氏が宇都宮氏を抜くような結果になれば、枝野代表の責任問題が問われなければならない。

 そもそも、「枝野さんがいる限り安倍さんは安泰」「安倍内閣最大の支持者」と化している人間が野党第一党党首に居座る時点で、国民を愚弄しているし、選挙の意味が無い。

 明るい兆しが、各種世論調査で、日本維新の会が政党支持率で野党第一党となっていることだ。もちろん、どこぞの都知事と違って誠実な態度の吉村洋文大阪府知事の人気に負うところが大きい。国民は「安倍か枝野か」「自民党かやる気のない野党か」の、事実上は選択肢が無い状態に置かれてきた。こうした閉塞感を打ち破れるか。

 維新の会の小野泰輔候補がどこまで票を伸ばすかが試金石となろう。仮に4位であっても、票数次第では1年以内にある衆議院選挙で、維新が東京でどこまで議席をとれるかの指標となる。いわば、地盤づくりの意味もある。

 多くの人は都知事選など結果が決まっていると関心が無いかもしれないが、実は国政を左右する重大な選挙なのだ。

 河井前法相逮捕以後、急に「解散風」が吹き始め、ポスト安倍を見据えた自民党実力者の会合が相次いでいる。では、どうなるか?

 日本の総理大臣は自民党総裁である。自民党総裁は、派閥の数で決まる。すなわち、細田(安倍)・麻生・竹下・二階・岸田の五大派閥の組み合わせ次第だ。現在、岸田文雄政調会長に禅譲を目論む安倍首相に、二階幹事長らが反発している形勢だ。

 だから、麻生太郎副総理(財務省)がどちらに付くかで決まる。

 つまり、誰が勝っても増税だ。

 ならば、どうするか? 倒すしかないではないか。それにはまず、枝野幸男を筆頭とするやる気のない野党幹部にご退場を願うことだ。

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」』

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