東大合格には10歳から準備が必要。総課金額は1000万円以上に

日刊SPA! / 2020年9月6日 15時54分

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―[貧困東大生・布施川天馬]―

 現役東大生の布施川天馬と申します。学生生活の傍ら、ライターとして受験に関する情報発信などをしています。

◆東大受験のための準備はいつから?

「自分の子供が東京大学に入ったら嬉しい!」と思う方、いらっしゃると思います。じゃあ、東大生は何歳から東大受験を始めたという例が多いか、みなさんはご存じでしょうか?

 高校3年生の春から? いいえ。
 高校に入学したとき? いいえ。遅すぎます。
 じゃあ、中学生になったときから? まだ遅い。

 正解は小学校4年生の春からです。多くの東大生は、10歳の頃からすでに東大受験への道を歩み始めているのです。もっと言うとこれにもある程度の準備が必要となるので、本当はもう少し早まるのですが、俗にいう「エリート東大生」というのは概ねこのようなルートをたどってエリートと呼ばれる存在になります。

 今回はそんな「エリート」たちが、いったいどのような少年時代を送って東京大学の門戸を叩くまで至るのかをじっくり見ていきましょう。

◆小学4年生春―名門進学塾SAPIXに入塾

 多くの東大生たちは小学校4年生からいったい何の準備を始めるのか。それはもちろん、中学受験です。

 かつて人気を誇っていた「高校生クイズ」という番組を皆さんお覚えでしょうか。開成高校や灘高校、ラサール高校などの名門校の学生たちがクイズ日本一の座をかけて争うという番組でしたが、今あげた高校はすべて「毎年東大合格者を大量に輩出している高校」であり、「中高一貫校」です。

 東京大学の受験者の多くはある特定の高校から輩出されています。そして、その“特定の高校”はほとんどが中高一貫の私立高校です。

 2019年に行われた調査によれば、合格者を27名以上輩出している24校の東大合格者数を合計したところ、1383人にも上ったといいます。これは東大合格者数約3000人のうちのほぼ半数に迫る数です。

 もちろん中高一貫校はこの24校だけに絞られるわけではありません。東大全体を見渡せば、帰国子女を除くと中学受験未経験者はほとんどいないでしょう。

 それでは、どのような学校がその24校に名を連ねているのかというと、開成高校や灘高校、麻布高校に桜蔭高校など、中学受験経験者ならほとんどがその名前を知っているような超難関中高一貫校ばかりになります。

 じゃあ、そういった学校に高校から入ればいいじゃないかと思われる方もいるでしょう。しかし、これは大変難しいのです。

 なぜなら、これら高校は中高一貫コースを最大限活かした独自のカリキュラムによる英才教育がウリであり、入試記録を見てみると、高校の入学受け入れ人数は中学校の半分から1/4程度しかないからです。

 つまり手っ取り早く東大に入りたいと思ったら何をすればいいのか。それは、毎年数十人から百数十人も東大合格者を出すような超名門中高一貫中学に子供を入れればいいのです。だからこそ、“教育ママ”は我が子を中学受験に追い立てるのです。

◆大学受験以上に過酷な中学受験

 中学受験といってもその中身はまったく子供向けではありません。大学受験以上に過酷な生活が待っています。

 まず、厳しい入塾テストをかいくぐって、名門塾の上位クラスに潜り込まなければ、難関中学合格の芽はありません。毎期行われるテストの結果によりクラスが変わるのは当たり前、順位によってクラス内での席順が変わります。1位の生徒から順番に座らされるので、教室における自分の“カースト”が一目瞭然になります。

 さらには、週に3日も4日も授業があるため、膨大な量の予習復習を行わなければなりません。友達の家に行ってジュースとお菓子をつまみながらまる一日ゲーム、次の日も遊ぶ約束をして帰る? そんな自由はありません。だって、塾の課題が終わらないから。

 塾の課題が終わらない、もしくは進度についていけないから、別の塾に入れて補習をさせたり、家庭教師を雇ったりして対応するという家庭もあります。実際、僕はそのような生徒さんを何人も受け持ったことがあります。遊びたい盛りの彼らのやりたいことは、勉強とはまた別にあったようでしたが……。

 灘中学や開成中学などの超名門中学校というところは、そういった地獄のサバイバルを勝ち抜いてきた“勝者”にのみ門戸を開くのです。

 ちなみに、彼らの多くはこの中学受験を辛い思い出として語りません。なぜなら、そこで勝ち抜いてきた猛者だけが残るので、そこには輝かしい思い出しか残らないのです。

◆中学校入学 ― 名門進学塾鉄緑会に入塾

 やっと中学校に入れた! 厳しかった受験の冬も終わりだ! そう思っていませんか? 違います。多くの場合、子供はそう思っていても、親御さんのゴールはもっと先にあります。

 中学校に入学すると、多くの子は目を回しながら勉強します。さすがは名門校、カリキュラムの進み方も“優秀”な生徒を前提として組まれます。僕も一度教科書や問題集を見せてもらったことがありましたが、中高どころか大学数学レベルの内容に触れている生徒もいました。一部の数学好きな子以外は置いてけぼりになっているようでしたが……。

 少しでも気を抜けば置いていかれるような学校での授業に加えて、彼らには追加の勉強が待っています。そう、名門進学塾に入塾して、やはり勉強をするのです。

 鉄緑会という東大生合格者御用達の塾があります。そのホームページを見れば誇らしげに東大進学者数が載せられていますが、それはある意味で当然の結果です。

 なぜなら、この塾に入れるのは一部の超名門中学校の子息のみだからです。頭のいい子たちを英才教育でさらに叩きのばして東大に入れるための塾、それが東大進学専門塾、鉄緑会なのです。

 幸い比較的学費は安めなこの塾ですが、生徒に山のような課題と演習をこなさせる塾としても有名です。高校1年生の頃から東大の過去問を解き始めるようなペースで学習が進む鉄緑会はでも、やはりこの塾に通う我が子を補習用の塾に通わせるご家庭も数多くあります。

 これが大学受験までの6年間続きます。小学校の塾費用、私立中高の学費、中高の塾費用、全部合わせれば1000万円はくだりません。補習用の塾を活用するならここに追加で数百万。途方もない出費です。これこそがエリート東大生の実態なのです。

◆それでも東大に入りたいか?

 いわゆるエリートと呼ばれるテンプレ東大生たちの多くはこのような道筋を通ってきています。そして、これはほんの一部にすぎません。

 SAPIXに入るためには入塾テストに向けて勉強しなければなりませんし、そのためには名門小学校に入って先取り学習をするのが一番の特効薬となりましょう。名門小学校に入るためには名門の幼稚園に入って特別な教育を受けるのが手っ取り早く……とさかのぼり続ければキリがありません。

 僕はこれを東大受験の闇だと思っています。東大生と言われれば、一般的には大変輝かしい経歴の持ち主であるように思われますが、その多くはこのようにして、10年近い年月と1000万円以上の出費をもって作られています。

 そうしてエリートとなった子供たちは、我が子にも英才教育を施し、東大やそれ以上の舞台へ我が子を送り出します。かたや大学進学という選択肢を思いつきさえしないような人さえもいるというのに。

 これを教育格差と呼ばずして、いったい何と呼べばいいのでしょう? 僕はこのような現状に対して、警鐘を鳴らしたいと考えています。次回は東大受験にかかる費用について、詳しく内訳を解説していきたいと思います。

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』が発売中

―[貧困東大生・布施川天馬]―

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