同性結婚式ができるお寺を取材。ネット上では批判もあった

日刊SPA! / 2020年10月5日 6時50分

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芸人・みほとけさん(右)とフリーアナウンサーの・久保沙里菜さん(左)(c)島崎信一

 日本は性的マイノリティに対する社会的成熟度が低いと言われているが、2015年に日本で初めて渋谷区がパートナーシップ制度を開始し、遅まきながらLGBTQの認知が広まっている。そんな中、埼玉県川越市にある最明寺というお寺は、LGBTQを対象とした結婚式ができるという。

◆同性結婚式を始めた理由

 この試みを始めた理由を千田明寛副住職はこう語る。

「私はお坊さんになった後、インドに留学をしたんです。インドって人種も宗教も言葉も混在した国で『多様性の国』と呼ばれていて、肌の色も言葉も違う私を、誰ひとりとして虐げるような人が居なかったんですよ。違いを認めて生活しているんです。そういった国で暮らしてみて、自分と違う人を受け入れるという土壌が私の中にもできてきたんです」

 さらに“ご縁”としか言いようのないタイムリーさで、行政の動きが加わったことも後押しとなったそうで、「今年の5月に、川越市がパートナーシップ宣誓制度を開始したんです。自分の住んでいる街がこうやって動きはじめたときに、お寺としても何かアシストできればと思ったんですね」(同氏)と話す。

 そもそも、仏教は同性愛やトランスジェンダーについて何か語っているのだろうか。これについて同氏は「直接語るものはおそらくないんですが、仏教はインドのカースト制度へのアンチテーゼとして出てきたという背景もあるんです。それは、仏教は身分だけでなく、広義的な意味では外見やセクシュアリティも関係ないということだと思います」といい、仏教の根幹の考え方を考察する。

 また、ここ最明寺の本尊である阿弥陀如来の教えについて「阿弥陀如来様も『私は誰でも等しく救ってみせる』と教義の中で説いています。この“誰でも”には、もちろんセクシュアリティを問わずという意味も含まれると考えています」と言う。

◆ネットでは批判もあった

 神前や人前結婚式がポピュラーだが、仏様の前で執り行う『仏前結婚式』とはどんなものなのか。千田副住職は「私は神前式については詳しくないですが、二つはかなり共通した部分があります」と話す。

 他の結婚式で見られる結婚指輪の交換は、仏前式では夫婦がこれまで使ってきた数珠をお寺に渡し、お寺からもらう新しい数珠と交換する。また「うちの同性婚結婚式では、(LGBTQを象徴する色ある)レインボーの数珠を用意しています」(同氏)というが、虹色を前面に出すことに対しネット上では批判もあったという。

 それでも敢えて、虹色を前面に出す理由として「カップルという言葉が、フラットに異性も同性も指すのが理想ですけど、今はまだそうなっていないので、あえて出しているんです」と思いを語った。

◆実際に体験してみた

 ふたりの白無垢が並ぶ様子。これに違和感があるならば、その感覚は遅れているということなのかもしれない。この日、結婚式を体験したのは仏像大好き芸人のみほとけさんと、仏像好きフリーアナウンサーの久保沙里菜さん。PR写真の撮影を兼ねてとのことで、式を見学させてもらった。

 凛とした境内の雰囲気に、白無垢のふたりが映える。本堂へ向かう姿、日本風という意味では神前結婚式にも近いが、ふたりを先導するのは神主さんではなくお坊さんだ。

 本堂に入りいよいよ挙式。祝詞ではなくお経が読誦され、ふたりの門出が祝われる。誓いの言葉の書かれた最後の欄には「新郎・新婦」ではなく「新婦・新婦」とある。この欄は、結婚するふたりの希望がそのまま反映されるのだという。

 お堂を出て、2人に降り注ぐのはライスシャワーではなく蓮の花。不浄である泥の中から茎を伸ばし、清廉な花を咲かせる蓮は、仏教の理想とする在り方を体現するものとされている。

◆費用や規模は?

 実際に式を挙げる場合にかかる費用などについても聞いてみた。

「挙式費用は、撮影料込みで人数にかかわらず20万円です。それから、衣装代は別ですが私服でもOKです」と教えてくれた副住職には、衣装代を敢えて別にして私服をOKにした狙いがあるようだ。

「トランスジェンダーの人は身体的性と心の性が一致していないんですね。また、どちらの性でもないという方もいます。そのため、白無垢も袴もどちらも着たくないという方も居ました。残念ながら今はまだ、ユニセックスな婚礼衣装ってないですよね。なので私服でOKという風にしています」

 現代の日本で、ようやく社会的に見えてきたLGBTQという人々の存在を、仏教界も注目しているようだ。

「ここ数年、お坊さん向けのLGBTQの研修が開かれ始めたんです。私たちは普段、お葬式などがメインの仕事なんですが、人の悩みや相談を受けることがあるのでLGBTQという存在も知っておかなくてはいけないというのがひとつ。

 そしてもうひとつは、墓地に埋葬するときなどに『夫婦じゃないけど一緒に入りたい』という人が出てくると思うんですね。また、戒名も現在は男と女で分けられているんですが『私は男だけど、女の戒名が欲しい』という人が出てくるはずだということです」と教えてくれた。

 徐々にではあるが、ここから一層、垣根のない社会が広がっていくことを願ってやまない。<取材・文/Mr.tsubaking>

※訂正:当該記事におきまして10/5公開時に「日本初、同性結婚式ができるお寺」と記載しておりましたが、実際には「日本初」ではありませんでした。混乱を招きましたことをお詫び申しあげます。(10/7 17:30)

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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