大阪都構想「仁義なき最終決戦」維新のグレーなPR戦略に批判も噴出

日刊SPA! / 2020年10月29日 8時50分

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連日、吉村知事は街頭演説を実施。その人気ぶりは圧倒的だが、「デマには惑わされないでくださいね」と反対派に対する怒りを滲ませることも

「大阪都構想」へのカウントダウンが始まっている。11月1日の住民投票で賛成が多数を占めると目されているためだ。おのずと大阪維新の会には圧勝ムードが漂っている。

◆11月1日住民投票!維新VS自民大阪府連[大阪都構想]仁義なき最終決戦

「9月頭には松井一郎代表(大阪市長)が維新大阪市議団に『スキャンダルだけ気をつけろ』と釘を刺していました。スキャンダルさえなければ勝てるという読みなんです。5年前とは打って変わって公明党が賛成に回り、山口那津男代表まで来阪してくれたこともあって、早くも内部の空気は緩んでいます」(維新所属の大阪市議)

 都構想はかつて「府市あわせ」と揶揄された府と市の二重行政を解消するために維新が掲げてきた政策だ。だが、5年前の住民投票では、わずか1%の差で否決されている。そのトラウマを払拭して2度目の住民投票における圧勝ムードを醸成したのは、吉村洋文府知事。コロナ対応で突出した存在感を示し、維新の支持拡大へと繋げることに成功した。

◆維新のグレーなPR戦略に対する批判も噴出

 だが、都構想賛成派は決して一枚岩ではない。

「春先に松井さんが堺市議会の控室に来て、『大阪市がこれだけ動いているのに、お前らはちゃんと仕事しとるんか!』と叱責して以来、市議の不満が溜まっています。コロナ対応に追われていると説明しても、『そんなことより都構想』としか言わないんですから。一度否決された住民投票を再度行うことに疑問を感じている市議も少なくありません」(維新所属の堺市議)

 賛成に回った公明党関係者も「学会員の方々から『なんで我々の税金を府が吸い上げるような政策に賛成したのか?』『都構想なんてマルチ商法同然や』と非難されることもある」と漏らす。そんな綻びからか、維新のグレーなPR戦略に対する批判も噴出している。

「9月には無料子育て情報誌に出した都構想賛成を訴える広告が規約違反に当たるとして、回収騒動を起こしています。10月に入ってからもアメ村を都構想PR旗でジャックしたところ、大阪市建設局から法律違反だと指摘されて撤去する騒動に発展した。

 さらに、市の広報物に都構想のメリットを列挙し、府市共同部署の副首都推進局が制作したPR動画は職員が『賛成に誘導するため』につくっていたことが明らかになった。都構想の設計図ともいえる“協定書”には、関係のないカジノ構想やリニア新幹線の実現まで盛り込んで、広報参与からも『公平性を欠く』と指摘が入ったんです。維新は完全に役所を私物化しています」(自民所属の大阪市議)

◆菅首相が政務官人事で自民党府連を切り崩し?

 だが、維新には強い援軍がいる。

「上沼恵美子さんをはじめ、関西お笑い界の大御所は総じて都構想支持者。情報番組では芸人たちの『都構想で大阪は変わる』『吉村知事頑張れ』という賛美に近い内容が垂れ流しになっている。制作側からしても都合がいい。吉村知事を出せば数字をとれるので」(在阪テレビ局ディレクター)

 おまけに、中央にも超強力な味方がいる。橋下徹元市長に、松井氏、菅義偉首相の距離の近さは広く知られた話だ。

「次期総選挙後には維新に大臣ポストを用意して連立を組むという噂も駆け巡ったように、松井さんと菅首相が昵懇なのは周知の事実ですが、松井さんはその関係をよくも悪くも利用している。だから、今や維新内部は国政進出希望者だらけになっているんです」(維新の会所属国会議員)

 この維新と政権の近さに忸怩たる思いを募らせているのが、都構想反対を訴える自民党大阪府連だ。閣僚人事では、大阪に縁もゆかりもない井上信治議員を万博担当大臣に指名。さらに、府連の切り崩しとも見られる人事を断行した。

「大阪選出の国会議員のほぼ半分が菅政権で政務官に任命されました。政務官“適齢期”の当選2~3回生が多いのは事実ですが、政務官ポストの4分の1を大阪が占めるのは異常。政務官になると東京を離れにくく、反都構想運動が満足にできない。菅さんは住民投票前に府連の分断を狙ったのでは?と囁かれています」(府連幹部)

◆各地で行われている街頭演説を見れば勢いの差は歴然

 自民所属の市議・府議らは目下、橋下市政以降の維新体制下での行政サービスの低下を指摘しながら、都構想反対を訴えている。

「700億円もの予算を削って、市バスの減便や高齢者パスの廃止を進めたのは維新なんです。職員をリストラして市下24区内の役所の窓口業務を、維新の顧問の竹中平蔵氏が会長を務めるパソナなどに外注するようにした結果、’19年にはパソナ社員が窓口手数料の1400万円を着服するなど、委託事業者によるトラブルが多数報告されるようになった。維新は私学無償化や小中学校の給食費無料化の実現などをアピールしていますが、それ以上の弊害も起こしているのです」(自民所属府議)

 だが、各地で行われている街頭演説を見れば、勢いの差は歴然だ。特に吉村知事の人気は圧倒的。大阪市南部・住吉区の住宅街で演説を行った際には、10歳の小学生までもが「都構想になったら小学校の名前は変わるんですか?」と知事に質問をぶつけたほか、18歳の女子高生が「住民投票で負けたら吉村さんは辞めてしまうんですか?」とマイク片手に知事を気遣っていた。

 同じく南部の阿倍野区で居酒屋を経営する男性(50代)は「あべのハルカスができて居住区としての価値が高まったのに、他の区と一緒になったら資産価値が下がる」と不満を漏らしていたが、維新関係者は「5年前は北側に比べて所得水準の低い南側は反対多数でしたが、今回は賛成の声を多くいただいている」と話す。背景には物騒な“場外戦”もありそうだ。

「票の買収目的なのか、9月には反対派が幼稚園に郵送で現金を送るという珍事が発生し、10月中旬には維新所属の市議が一般男性から暴行を受ける事件も起きました。さらに、れいわの山本太郎代表が行った街頭演説は道路交通法違反に当たるとして、大阪府警が捜査を進めている。反対派の活動がエスカレートすると、自民党府連の支持も薄れる」(在阪記者)

 住民投票まで残すところ3日。さらに賛成派と反対派のバトルは激化しそうだ……。

◆都構想・住民投票をめぐるトラブルの数々

9/17 都構想「賛成」広告で無料子育て情報誌回収
大阪市立の保育所や幼稚園で無料配布される情報誌に大阪維新の会が都構想への「賛成」を求める全面広告を出したところ、政治色の強い広告が規定に反するとして大阪市が発行された5万部すべてを回収するよう命じる騒動に発展。

9/29 府市職員が都構想「賛成」誘導動画を作成
府市の共同部署「副首都推進局」作成の都構想PR動画をめぐって、職員が「賛成に誘導するため」につくったと発言していたことが、市が公表した議事録で発覚。なお、維新作成の都構想PRチラシの問い合わせ先はすべて「副首都推進局」のまま。

10/6 維新のアメ村ジャックに市建設局が「NO」
10月1日から維新は市内の繁華街・アメリカ村の街路灯に「変えるぜ、大阪」「都構想にYESを。」などと書かれたPR旗を45本掲出したが、大阪市建設局が「特定政党を広告する旗は市の道路占用許可基準に違反する」として撤去を命じることに。

10/12 住民説明会の動画を市HPから削除
大阪市主催で行っていた都構想に関する住民説明会の動画を市のHP上で公開していたが、「役所ぐるみで政治に関与していると誤解を与える」(松井市長)として削除。ただし、市役所のホールでは今なお都構想に関する事実上のPR動画を放送中。

10/19 吉村知事FM大阪2回出演は放送法違反?
10月12、19日と2回にわたってFM大阪の『LOVE FLAP』で吉村知事は都構想についてアピールしたが、放送の中立性を求める放送法第4条に抵触するとして反発を呼ぶことに。なお、この番組のスポンサーは熱烈な維新支持者だ。

◆都構想でお金は減り行政サービスは低下する

 都構想で大阪市はどう変わるのか? 松井市長らは府と市の二重行政が解消され、「住民の声が届きやすくなる制度」が実現すると説き続けている。対して、「百害あって一利なし」と切り捨てるのが、藤井聡・京都大学大学院教授だ。

「今年8月の市議会本会議で松井市長は『今は二重行政はない』と言い切っています。実際、二重行政解消による財源捻出効果はあったとしても年間数億円というのが、専門家の共通認識。移行にかかるランニングコストを考えれば“赤字”になると試算されている。

 一方で、大阪市の廃止によって市の税収の4分の1にあたる2000億円が都市計画などの権限とともに府に吸い上げられます。松井市長らは『特別会計で管理するので特別区以外には流用できない』と主張していますが、そういう制度設計はなされていない。過去の都構想案には特別会計化が盛り込まれていますが、半分の1000億円は一般会計で管理すると書かれています。

 つまり、特別会計化は単なる口約束で、実際には税収が特別区以外に流用されるのは決定的。なぜなら、府議会における市内選出府議の割合は3割。大阪市民に選ばれた府議たちは議会で少数派のため、“市外”の府議の要求を阻止できないんです。付け加えると、4つの特別区の役所は事実上、4つの“プチ市役所”。結果、職員1人あたりの仕事量が急増して行政サービスの質が低下するのは間違いありません」

 お金は減って、サービスが低下するようなことがあれば、特別区民の反発は必至だ……。

【京都大学大学院教授・藤井 聡氏】
公共政策論を専門とし、’15年の住民投票の際にも「反都構想」を主張。「政令指定都市の市民の高度な自治を奪うだけの詐欺的構想」と手厳しい。

<取材・文/栗田シメイ 取材・撮影/池垣 完(本誌)>

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