「菅さんは霞が関をめちゃくちゃにした張本人」女帝に刺された男・小林興起が語る

日刊SPA! / 2020年11月4日 8時50分

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学術会議の問題を受け、菅義偉首相の強引な政治手法に批判が集まっている。元自民党衆議院で、現在は「新党やまと」の代表を務める小林興起氏(76)は、「菅首相の政治手法の源流は小泉政権にある」と喝破する。

小林興起(こばやし・こうき)
1944年生まれ。66年に東大法卒、通商産業省(現・経済産業省)入省。ペンシルバニア大学大学院でMBA取得。83年に通産省退官、衆院選に出馬するも落選。90年の衆議院選で初当選。2002年には小泉政権で財務副大臣を務める。05年7月の郵政民営化法案に反対し、「郵政解散」で自民党を追放され落選。09年8月の総選挙で民主党比例区東京ブロックから出馬し、衆議院5期目の当選を果たすが、12年に消費増税に反対して同党を離党。2012年12月の衆院選に日本未来の党から立候補するも落選。以降、複数の政治団体を自ら立ち上げ、政治活動を継続している。
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◆学問をすると「選挙に落ちる」

――菅首相が日本学術会議が推薦した候補者6人の任命を拒否した問題がありました。歴代首相は形式的な任命のみをしてきましたが、今回は理由を明確に説明しないまま、一部の候補者の任命をやめてしまった。学問の独立を軽視し、「政府の意向に沿わない学者は任命しない」と捉えかねない行為だと批判されています。

小林:学問といえば、昔は勉強できる人が総理大臣になっていたんだけど、最近は小泉さんにしても、菅さんにしても、小池百合子さんにしても、どういうわけか、あまり勉強をしないタイプの人のほうが政治家として出世する傾向はありますよね。もちろん、勉強ができればすべていいというわけでもないけどね。

残念ながら、時代が変わったんですな。私は父親に、「お前、政治家になるなら、勉強しなきゃだめだよ。勉強して、いろんな知識を身に着けて、立派な政治家にならなきゃ」なんて言われたもんですよ。まあ、勉強すれば学校にもいけるから楽だっていうのもあるけど。

いまは私みたいに、勉強しちゃうと、どういうわけか選挙にも勝てないんですよ。うちの息子は一番下が小学校6年生だけどね。上が中学2年と高校1年。3人とも勉強しないですよ。一致してて。なぜ勉強しないかというと「お父さんみたく失業してね、お母さんが苦しむって」って(笑)

――夕食の時に、家族で一人だけとんかつがでてこないとか……。

小林:そんなの最初からでてこないよ。もう浪人生活が長いし、貧乏なんだからね。もしみんなの分があまったら、私にやっと回ってくるというね。勉強した結果、そうなるわけだからね。小泉さんみたいな総理にむけて、「あんた頭がたりない」なんていうふうに考えて、反乱起こした末路がこれですよ(笑)

――菅さんはどうなのでしょうか? 首相動静を見ると、常に人と会っている。本を読んで、沈思黙考するタイプではなそうですよね。

小林:菅さんには、失礼だけど、正直言って、インテリというタイプではまったくないでしょう。そういう意味では、学問への畏敬の念がないから、学術会議の件も発生したともいえるでしょう。

◆いまの自民党を作った「郵政解散」

――小林先生が、いまの自民党をつくったきっかけとしてあげるのが、2005年小泉政権下での郵政解散(※)ですね。確かに、二階俊博幹事長は郵政解散のとき総務局長で、“刺客”の擁立に尽力しました。その刺客になったのが、小池知事です。菅さんも郵政解散後に、総務副大臣のポストを得て、頭角を現した。あのとき、勝ち馬にのった人たちはいま出世していますね。

(※)郵政解散:小泉政権下で行われた2005年9月の第44回総選挙のこと。小泉純一郎首相(当時)は、参議院での郵政民営化法案の否決をきっかけに、衆議院を解散。郵政民営化法案に反対した自民党議員に公認を与えず、選挙区に「刺客」を擁立するなど、前代未聞の強引な手法をとった。しかし、小泉首相はマスコミ世論を味方につけて、自民党は296議席を獲得する圧勝におわった。

小林:要するに、あの時に学問して、こだわって、論陣を張った人は全部だめになったんです。権力には、政権にはどんな意見があっても、賛同する。これしかないじゃない。

小泉さんもたいしたもので、自民党も地方議会もぜんぶ反対したのにも関わらず戦って勝ったわけだからね。小泉さんも勝ち負けという意味ではすばらしいのよ。郵政民営化というのは、アメリカ通商代表部(USTR)作成した「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府の年次改革要望書」というのに書かれていた。

それを、全国民を敵に回してでもやろうとしたのが、小泉さんであり、竹中平蔵さんだったわけです。こんな立派な人いないですよ、国民のいうことを聞かないで、アメリカのいうことを聞くって。ましてや、当時、ぜんぶテレビや新聞は小泉応援していましたからね。

――小林先生も、自民党を除名され、地元の東京10区に“刺客”として送られてきた小池知事に選挙で敗北しました。

小林:めちゃくちゃでしたよ。討論会やろうといったって、議論にならないんですよ。唯一、意味があったのは、外国人特派員協会の討論会ですよ。その時の小池さんの返事が素晴らしかった。「私は忙しい大臣だから郵政法案みていない」。えっ、あなたは郵政民営化を推進するために、この選挙区にきたんじゃないのって……。議論にならないんだ。

 アメリカがなぜ年次改革要望書で郵政の民営化を求めてきたのかというと、ゆう貯の莫大な資産に目をつけてきたわけだと私は思っている。民営化っていうのは民間の資本になるわけです。そうすると、郵政の運営は、株をたくさん買うアメリカの影響下に置かれるし、アメリカに利益が吸い上げられるわけですね。こんなものに反対するしかないというのが私の考えでした。

◆郵政改革時の菅総理の動向

――菅首相の動きは?

小林:当時はまったく注目していなかったけど、菅さんだって最初は、反対っぽかったわけだよ。菅さんに限らず、普通の人はみんなそうでした。地方議員は郵便局と仲良かったわけで、良くも悪くもまず反対した。そのあとは、各地域の郵便局長が陳情にいって、地方議会の人は次々と反対決議した。うちの選挙区の練馬区だって、豊島区だって、全部反対したんですよ。郵便局長は地元の名士だった。それがこぞって反対したわけだから、自民党も反対したわけなんです。

そんなこと、自民党にいる人なら、こぞって反対だったわけです。だから、勉強して、論陣をはって反対した。もちろん、一部は票のためって人もいただろうけども、たとえば、自民党議員が100人参加する会合があって、80人は反対でしたからね。15人は賛成だけども、小泉総理がいうからいいじゃないかっていう理由。それは、政策論とはいえないじゃない。そこに3~5人だけが、「民営化すれば便利になる」っていう。それがいかに間違っていたかは、昨今のかんぽ生命問題などを見れば火を見るよりも明らかですよ。

菅さんだって、小泉派にいたわけじゃないですからね。80人反対したら状況をみててね、彼みたいなタイプだと多数派についていたよね。彼は「小泉さんがんばれ」なんていったわけじゃないけど、いよいよ選挙が近づくにつれてこう判断したんでしょう。「党内では政策論では反対のほうが人数は多そうだけど、小泉さんはテレビにでて国民からの人気がある」と。「じゃあ、自民議員の声を信じるよりもね、小泉さんの声を信じよう」と。

少なくとも、小泉さんは「郵政民営化に反対したら、処罰する」といったわけだから、処罰されたらいいことないから。それでどっちつかずの顔しながら、最後は小泉さんの味方をして、本会議でも当然、反対票なんかいれずに賛成したと。

――その後、菅首相は竹中平蔵氏につていきましたね。

小林:それが正解だったんですよ。竹中さんは、小泉さんに一番信頼されている。そうやって、竹中総務大臣の下で、総務副大臣というポストを得たわけです。状況を見て、強いほうについて、ごまする。どこが一番票をとるだろうってね。その次は、小泉さんの直系である安倍さんにずっとついて行ったわけです。

彼はよくわかったんでしょう。日本では、「本当のことを言っちゃよくない」と。アメリカのいいっていうことに逆らったらね。私なんかそんな力なかったけども、力のあった亀井静香さんとか、平沼赳夫さんとか、総理候補といわれた立派な人材がね、全部放逐させられたのが郵政解散でしたね。

◆霞ヶ関をめちゃくちゃにした張本人

――それ以前の菅さんはどうだったのでしょうか? 1998年の総裁選で、梶山静六氏をかついだともいわれますけど。

小林:梶山さんは、亀井さんたち志帥会の幹部がすきで応援していたくらいでね。菅さんはぜんぜん、印象なんてないですね。いまはテレビ、新聞がいろいろいっていますけども、官房長官やっているときだって、安倍さんの横にいただけで、何の政策もなかったと思いますよ。

――菅さんの肝いりではじまった政策はありますよ。ふるさと納税とか。

小林:ふるさと納税なんて、自治体間の返礼品競争をやみくもに煽るような政策だから、地方税制上、大問題ですよ。それに、ふるさと納税の件で、何が一番印象にのこったかっていうと、ふるさと納税に反対した優秀な、事務次官候補だった総務官僚を菅さんが左遷したことでしょ。「おれの意見と違う」ということで。

厚労省だって、菅さんの側近である和泉洋人補佐官と仲がいい女性が出世していると聞くじゃない。あれ聞いたら、まともな人は近づかないですよ。霞が関に。あの二人が、山中慎也京大教授の関連予算だってバサッときっちゃうわけでしょ。それみたら国民だって、「ああ、勉強なんかしちゃいけないな……」って(笑)

農水省も有名な話があるでしょ。菅さんが、次官候補を含む優秀な者をぜんぶとばして、「農業なんかいらねえ」なんていいかねないような官僚を事務次官にもってきたと言われていますよね。霞が関に、優秀な人材がいなくなってしまいますよ。

私も官僚出身だけど、官僚は政治家個人のためじゃなくて、国家のために働いているわけだからね。意見が違うやつがいれば、ちょっと聞いてみようとなっちゃうのが普通じゃない。それが、情け容赦なく、「何言ってんだおれの意見に反対するんだったら出ていってもらう」と。それだからね。いま菅さんははっきりと言っていますよね。「反対する人はでていってもらう」と。

議論を求めてくる人を切る半面、自分に対するイエスマンを徹底的に出世させちゃう霞ヶ関も「じゃあ、イエスマンになっちゃえばいいじゃない。出世するんだから」という感じになるよね。優秀な官僚は残りませんよ。「菅さんが言っていることを黙ってやる」というタイプだけになる。

――なるほど。

小林:郵政民営化のときに、党内議論を封じて、「反対したら除名」というふうにして、政治をめちゃくちゃにしたのが小泉さんですよ。歴史を振り返ると、イギリスでホイッグ党が過去に、党首の意見に反対する者は、公認しないということをやったんだけど、結局、その党がなくなってしまった。党内の議論や意見の多様性を確保しないというのは、そのくらい政党にとっては危険なわけ。でも、郵政解散もあったし、ただでさえ今は小選挙区制で、金と人事権を党に握られているから、政治家はヒラメ化するしかない。官僚もそうでしょ。

それを役人ベースでやったのが菅さんですよね。内閣人事局で、官邸に人事を握られているから、菅さんのいうことにさからえない。システムとして、イエスマンになるしか出世できないようになっている。本当に、優秀な官僚がやる気をなくして、優秀じゃない官僚がやる気をだすわけだ。出世しそうにないやつが出世するわけだからね。「ああ、ごまさえすれば出世できる」ってなるでしょう。

それで、官房長官時代にそれを続けてたら首相に出世しちゃった。ということは、菅さんの官僚をめちゃくちゃにする人事が、評価されているということになる。政治主導とかいってね。いわば、政治家を殺したのが小泉さんで、官僚を殺したのが菅さんだよね。完膚なきまでに、日本の政治行政を壊した。あっぱれですよ。もう気の利いたやつにとっては、ばかばかしいことになっているわけ。

――昔の霞が関だったらどうなるのでしょう?

小林:「バカ、お前に人事ができるのか」ってなるでしょ。600人の人事だって。官僚は勉強ができますからね。「だったら学校の通信簿だってもってこいってんだ」ってなりますよ(笑)。正直言って、肝心のテレビ新聞も一緒になってゴマすっているわけだから。菅さんは安心じゃないかな。

〈文/日刊SPA!取材班〉

【小林興起】
1944年生まれ。66年に東大法卒、通商産業省(現・経済産業省)入省。ペンシルバニア大学大学院でMBA取得。83年に通産省退官、衆院選に出馬するも落選。90年の衆議院選で初当選。2002年には小泉政権で財務副大臣を務める。05年7月の郵政民営化法案に反対し、「郵政解散」で自民党を追放され落選。09年8月の総選挙で民主党比例区東京ブロックから出馬し、衆議院5期目の当選を果たすが、12年に消費増税に反対して同党を離党。2012年12月の衆院選に日本未来の党から立候補するも落選。以降、複数の政治団体を自ら立ち上げ、政治活動を継続している。

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