白鵬、鶴竜は休みすぎ? 歴代横綱の休場率を調べてみた

日刊SPA! / 2020年11月20日 8時30分

写真

日本相撲協会公式ツイッター

 大相撲11月場所は、正代が新大関となったことで盛り上がりが期待された。しかし、白鵬と鶴竜の両横綱が場所前に休場を発表し、がっかりしたファンも多かったようだ。休場の多い両横綱には「ズル休み」といった声も聞こえてくるが、過去の横綱はどうだったのか調べてみた。

◆休場のイメージが強い白鵬

 数年前「東京オリンピックまでは横綱でいたい」といった旨の発言をした白鵬は、休場をするたびに世間から「五輪まで続けるための延命措置だ」と批判され、ズル休みだと思われている節がある。たしかにここ数年は休場が増えているが、白鵬もすでに35歳で、年齢としてはすでに引退していてもおかしくない中、出場すれば無類の強さを発揮している。

 果たして、白鵬は他の横綱より多く休場しているのか、横綱在位日数(1場所15日間×在位場所数)と横綱になってからの休場日数から「横綱休場率」を算出してみる。白鵬は2007年に横綱に昇進し、前の場所までで横綱在位は1185日、そのうち休場が160日間。休場率は約13%ということになる。

◆過去の横綱の休場率は?

 では、白鵬の数値が極端に高いのかを考えるために過去の横綱の数値も見てみよう。モンゴル人初の横綱となり、土俵の内外で話題を振りまいた朝青龍の横綱での休場率は約12%で白鵬と変わらない。

 兄弟横綱として一大ブームを巻き起こした貴乃花はどうだろう。膝の大怪我を押して強行的に出場して優勝を掴み取り、当時の小泉総理大臣が「痛みに耐えてよく頑張った!感動した!」と言ったシーンが印象的なため、休場が少ないイメージが強いかもしれないが、怪我に悩まされた横綱で、休場率は約27%と白鵬よりもかなり高い。

 貴乃花のライバルであったハワイ勢も曙が23%、武蔵丸が28%と高くなっている。この時代は、力士の重量化が顕著になっていた。そのため、体重を支えきれずに下半身を壊す力士が増加していたのだ。

◆昭和時代の横綱は休んだのか

 次に、昭和の横綱たちはどうだったのだろう。まず「巨人・大鵬・卵焼き」とまで言われるほど、その強さで日本中に愛された大鵬の休場率は約15%。また、大鵬のライバルとして活躍した柏戸は約19%で、いずれも白鵬よりわずかに高い。

 その他、輪島が約12%で千代の富士が約16%、北の湖はやや低く約11%となっており、平成の重量化時代を除いて、横綱は平均で10%代中盤の休場率であることがわかる。結論するなら、この数値だけを見れば白鵬が休み過ぎだとはいえないということになる。

◆鶴竜よりも休場率が上の横綱は?

 ただし、ここ数場所は白鵬も連続して休場をしている。また、この休場率が飛び抜けて高い横綱もいる。まずは今場所、白鵬とともに休場している鶴竜は約31%。そして、圧倒的な人気を誇っていた稀勢の里はさらに高く、約53%で横綱としての半分以上を休場しているということになるのだ。

 稀勢の里の休場原因といえば「あの一番」が思い出されるだろう。稀勢の里が横綱として最初の場所、初日から12連勝を飾り迎えた13日目。元横綱・日馬富士に寄り倒された際に左腕から大胸筋にかけて大きな怪我を負った。しかし翌日以降、左腕が全く使えないにもかかわらず強行的に出場し、意地の優勝を勝ち取った。しかし、そこから稀勢の里の怪我とそれによる相撲への影響が解消されることはなく、横綱としてはファンの期待に添えない日々が続いた。

◆公傷制度の復活は必要か

 実はこの稀勢の里、かつては「絶対に休まない力士」であり、横綱昇進までの15年間、なんと1日も休んでいなかったのだ。その稀勢の里を何場所にもわたって休ませたのは、あの強行出場が原因だと考える向きもある。

 しかしそれは、本人の意地以外に制度としての問題も考えなくてはいけない。現在は、休場が負けと同等にカウントされるため、番付が下がるのは免れない状況になっている。しかし、横綱だけは番付が下がることがないため、横綱の休場はズルだと見られる向きもあるのだ。

 かつては「公傷制度」という、ざっくり言えば「本場所での怪我であれば、休んでも負けにはカウントしない」といったものがあったが、2004年に廃止されている。その背景には「公傷制度を使ってズル休みする力士の増加」があったが、これは力士の問題ではなく、怪我を公傷として判断し承認する協会側の規定の緩さの問題だ。筆者は、公傷の判断をさらにしっかりと規定した上での、制度の復活をのぞむ。

◆力士の過労問題

 横綱だけでなく、角界全体で休場力士は増加しているが、それには「力士の働きすぎ」も遠因であると考えられる。江戸時代の川柳に「一年を二十日で暮らすいい男」というものがある。相撲の興行はその昔、年に2回それぞれ10日のあわせて20日しかなかった。現在は15日間の本場所が年に6場所あり、さらにその合間に全国を巡業として飛び回っているのである。この巡業が、相撲人気の上昇とともに急増しているが、力士が怪我の療養にあてる時間は極端に減らされているのが現状だ。

 巡業には、地方の人にも相撲の楽しさを生で体感してもらうのが目的がある。筆者は、相撲界を2チームに分けて各地を巡れば、回数も減らさずに力士の負担も半減できるのではないかと考える。

 様々な問題が絡む力士の休場増加問題。いずれにしても相撲ファンにしてみれば全ての力士が元気な姿で土俵に上がって、いい取り組みが見られるのを願うばかりである。<取材・文/Mr.tsubaking>

【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング