クラウンSUV化のウワサに愛好家の反応は? 若手クラウンオーナーの主張
日刊SPA! / 2020年11月29日 15時50分

8代目、11代目、12代目、現行型クラウンを並べて比較したときの様子
―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
クラウン好きの腕時計投資家、斉藤由貴生です。
私は小学生のときからクラウンが好きで、実際今でもクラウンに乗っています(ベンツも所有)。しかし、そんなクラウン好きに衝撃的なニュースが飛び込んできました。
それは「現行でクラウンはセダンが終了し、次期型からSUVになる」というニュースです。
これは公式発表ではないため、本当のところはどうなるのかわかりません。しかし、ある程度話題になるということは、「そうなる可能性があるかもしれない」とそれなりに思ってもいいのでしょう。
◆クラウンをSUV化するメリットとデメリット
「クルマはセダンよりもSUVが人気」という現在の流行を見る限り、「クラウンのSUV化」は理屈としては正しいと言えます。一部報道によれば、「セダンプラス」という新カテゴリーで販売されるとのことです。
実際これまでのクラウンは、「挑戦の歴史」だったと言われているため、「セダンプラス」という新たなカテゴリーを開拓するのはクラウン的に正しいと言えるのかもしれません。
しかし、セダンのクラウン好きとしては、セダンプラス含め「クラウンのSUV化」は短期的な利益にしか貢献しなさそうだなと思ってます。クラウンには「日本車のセダン」という重要なブランドがあるわけで、SUV化することによって、この重要なブランドを失う可能性があるわけです。これはどう考えても大きな不利益だと思うのです。
◆クラウンのブランド力とは何か?
日本人にとって身近なクラウンですが、実は世界全体で見ても「すごいブランド」なのです。
なぜならクラウンは、「ずっと続いている高級セダン」だからです。これは世界的にも稀です。具体的に「ずっと続いている高級セダン」は以下のようになります。
メルセデスベンツSクラス(1951年~)
「Sクラス」という名称はW116からだが、1951年のタイプ220からから事実上のSクラスとされている。
トヨタクラウン(1955年~)
1955年の初代から、ずっと日本の高級車として愛され続けている。
ロールスロイス
先祖をたどれば、戦前のシルヴァーゴーストまで行き着く。
BMW 7シリーズ(1952年もしくは1977年~)
7シリーズは1977年登場だが、それ以前にも高級車が存在。E3、その前の501が先祖と言える。ただし、途中空白期間がある。また7というエンブレムが付いたのは1977年から。空白期間や7という名称を考慮すると1977年からと言えるが、501を元祖とするならば1952年からと言えるだろう。
このように、「ずっと続いている」という観点では、世界的にも“数えるぐらい”しかないわけです。
例えば、アウディは現在「ベンツやBMWのライバル」とされていますが、そのようなポジションになったのはフェルディナンド・ピエヒ氏が大改革を行った後のこと。アウディV8登場以前の上級モデルは、ホルヒ時代にまで遡る必要があり、大きな空白期間があるのです。
近年「ジェネシス」という高級ブランドを展開する韓国のヒュンダイに至っては、歴史を追ってしまうと、「長らく三菱自動車の事実上のOEM生産だった」という黒歴史になります。
ですから、クラウンは「ずっと続いている高級セダン」として、世界的に見ても稀有な存在であるわけで、Sクラスに対抗できる稀なブランドであるのです。Sクラスのカタログを見ると、最初のページに歴代モデルが載っていますが、これと同じことをできるのはクラウンぐらいしかありません。
次期クラウンをSUVにしてしまったならば、このようなことはできなくなるでしょう。そもそもいくら名前が同じでも、それはもはやクラウンとユーザーに認識されないと思うのです。
◆なぜクラウンを世界展開しなかったのか?
このようにクラウンは、ずっと続いている稀な高級セダンでありますが、それ以上に珍しいのが、日本国内専用という点でしょう。もちろん、東南アジアやオーストラリア、近年では中国への輸出があるようですが、ヨーロッパやアメリカ市場などには輸出されていないのです。
日本国内でセダン需要が下がっているならば、高級セダン需要がある欧米圏で「ベンツ・BMWに対抗できるEセグメント」として強いのではないかと思うところですが、現行型ですら欧米圏への輸出がありません。実は、初代に関してはアメリカに輸出していたようなのですが、その評判が良くなかったらしく、それ以降「クラウンのアメリカ展開」はトヨタにとってある種のタブーなのかもしれません。
ただ、輸出を考慮しなくなったということは、クラウンにとって良い結果をもたらしたとも言えます。ほかの輸出される国産車とは異なり、クラウンは「日本人が日本人のために作った」という色が濃く出ています。これは個性としてすごく強いと思うのですが、そういったモノは海外で売れないと思われているのかもしれません。これまで、トヨタに限らず輸出用の日本車は、国内用とはキャラクターが異なるといった傾向があり、「日本人のために作ったモノ」は海外でウケないと思われているように感じます。
けれども時代は「本物志向」。アメリカ人もカルフォニアロールより、本格的な寿司が食べたいわけなので、日本人のために作ったモノが受けないと決めつけなくてもいいと思います。
◆クラウンらしいセダンを作って海外でも売ればいいのに
「本物志向」という時代背景から、原点にかえって「クラウンらしいクラウン」を作れば、海外でも受け入れられるのではないかと思うわけですが、その一方で、今の日本国内におけるクラウンのメインユーザー層は、世代的に「クラウンらしいクラウン」が好きでない可能性があります。
私の母は1956年生まれなのですが、「クラウン=ダサい」みたいな感覚がありますし、ほかの同じ世代でもそういった感覚を持っているように感じます。しかし、その一方で若いクルマ好きは「古いクラウン」が好きという人をよく見かけますし、実際私の友人(20代)は、8代目クラウンを7年間乗っています。
ですから「クラウンらしいクラウン」は、日本の若い人や、海外のクルマ好きにこそウケる可能性があるといえます。
◆ベンツにも対抗できるのにもったいない
トヨタの高級セグメントといえば、1990年からレクサスが展開されていますが、そのレクサスではEセグメント(Eクラスや5シリーズなどにあたる)が苦戦しています。
8代目を近代化したような威風堂々としたクラウンを作って、レクサスのEセグメントポジションで「クラウン」として販売(もちろん歴史アピールは必須)したならば、私はそれなりに強いと思うのです。
また、近年、韓国のヒュンダイが「ジェネシス」ブランドに相当の力を入れており、セダンがとても格好良くなっていますが、彼らはクラウンのような歴史あるブランドを持っていません。
現在の「ジェネシス」は、ベントレーから引き抜いたデザイナーが手掛けたことにより、ものすごくカッコ良くなっています。また、韓国はセダン需要が高いためか、ジェネシスのセダンは、クルマ好き視点でも「理想のセダン」といったところ。「セダン」というセクションでは、レクサスに追いついてしまうかもしれません。
ですから、ジェネシスに対抗するためにも、クラウンの「歴史」という文脈は、真似できない強さを発揮するわけです。ちなみに、これをうまく使えば、「ベンツかBMWかレクサス」というようなポジションを欧州でも取れるかもしれません。
実際、高級車としての歴史は、アウディよりもトヨタのほうが長いにも関わらず、ピエヒ氏の強力なリーダーシップによって、90年代中盤から高級車に変身したアウディが、「ベンツ、BMW、アウディ」というように御三家とされているわけです。
以上、クラウンの歴史の重要性について、クラウン好きとしていろいろ述べさせていただきましたが、クラウンはセダンが中心という構成は、やはり重要だと思います。セダンを廃止してSUVだけになったクラウンなんて、老舗和菓子店がタピオカ屋になってしまうようなもの。そんなことが起こったならば、私を含めた多くのクラウンファンはガッカリです。ただのウワサに過ぎないことを願うばかりです。
【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある
―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
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