スタッドレスタイヤは冬しか使えないのか? 実際に試してみた

日刊SPA! / 2021年1月9日 8時51分

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マリオは愛車のインプレッサ(4WD)でスタッドレスタイヤ履きっぱなしテストを試みた

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆滑ってみないとわからない!ノーマルタイヤで雪道突入の恐怖

 ここ数日また強烈な寒気が日本列島を襲ったが、昨年12月にも日本海側で大雪が降って、新潟で大規模なクルマの立ち往生が発生したことは覚えているだろう。

 ちょうどその時期、群馬県みなかみ町にスノードライブの取材に赴いたが、高速道路は渋川伊香保で通行止め。一般道は沼田の先から圧雪路だったが、その10kmほど先、みなかみ市街地の手前の反対車線側で、動けなくなったアウディを発見した。「ここまで来られたクルマがなぜ?」と思ったが、実はその数百m先から、融雪用の地下水が路面から噴き出ている区間だった。

 つまりアウディは、雪が積もる前にノーマルタイヤでみなかみ入りし、お気楽に出発したものの、圧雪路を数百m走ったところで力尽きたらしい。

 太平洋側のドライバーは、雪道の怖さを知らず、気楽にノーマルタイヤのまま雪道に突入してしまう場合がある。でも、本当の本気で、ノーマルタイヤでの雪道突入は自殺行為です。まったくグリップしません!

 実はノーマルタイヤでも、平坦な雪道ならけっこう進めてしまったりするが、ブレーキはまるで効かない。若干の上り坂も上れてしまうが、下り坂はまるで止まらない。上ったらもう下りられない。まさに地獄。体験してみないと実感できないが、本当にダメです!

 雪国のドライバーには、こういう太平洋側のドライバーのお気楽さが信じられないだろうが、人生一度もスリップしたことのない人は、滑ってみないとわからないのです。

 かといって、年に一度積雪があるかないかという地域に住んでいたら、わざわざスタッドレスタイヤを準備するのは、お金がかかるし交換が手間だし保管場所も要る。「年に1回くらいスノボに行くかも」程度でも、チェーンでなんとかしようと思って不思議はない。

 そんな太平洋側のドライバーに、決してオススメはしないけど、こんな方法もあるよとお知らせしたいのが、「スタッドレス履きっぱなし作戦」である。

◆スタッドレスタイヤを冬以外も履いてみたところ……

 スタッドレスタイヤは、冬の間だけ使うものというのが常識だ。確かに20年ほど前まで、スタッドレスタイヤはドライ路面での摩耗がとても早かったし、グリップの低下も顕著だった。トレッド面がサイプ(細かい溝)だらけだからフニャフニャで、ハンドルがメチャ軽くなって、いかにも頼りなかった。

 それらのネガティブな部分は年々少しずつ改善されていたが、2014年、衝撃的な記事が掲載された。それは、自動車ライター・マリオ高野による、ダンロップのスタッドレスタイヤ「ウィンターマックス」の、夏季(正確には春から秋まで半年間)長期レポートだった。

 スタッドレスタイヤをなぜ夏季にテストしたかというと、雪のない季節にも使えるかどうかの耐久テストだったのだ。

 マリオは、スタッドレスタイヤで半年間で2万3000km走り、摩耗はわずか1.8mmと報告した。それでいて走行フィールはほとんどノーマルタイヤと変わらなかった。これだと、スタッドレスタイヤでドライ路面を5万km走っても、摩耗率50%程度という計算になる。

 スタッドレスタイヤは、溝の深さ50%が冬用タイヤとしての使用限界だが、1.6mm(残り20%)までは、夏用タイヤとして使用可能だ。

 マリオはそのタイヤを計3シーズン使い、最終的に3万6000kmほど走行。「最後は雪道での横グリップの低下を感じましたが、特段の問題はなく、あと1~2シーズン使えそうでした」と語っている。

 私もさっそくマネをして、愛車のアクア(当時)のスタッドレスタイヤを、春が来ても交換せずにそのまま使用。走行1万2000kmの時点で手放したが、摩耗は約2㎜だった。アクアはピレリのスタッドレスタイヤだったので、ダンロップよりかなり摩耗が早かったが、それでも交換の手間を考えたらアリな選択だ。

 その後はランチア・デルタに、ミシュランのスタッドレス「X-ICE XI3」を装着し、これまた1年半使用した。このタイヤはスタッドレスながら「H規格」。H規格とは、時速210kmまで問題なく走れるというという意味である。値段が高いだけに性能は実にすばらしく、ドライでも雪道でも完璧に近かった。なにせスタッドレスで時速200km出せるんだから、「スタッドレスで夏のドライ路面を走るのは危険」なんて、完全に過去の神話である。

 こちらは1万2000km走行し、摩耗は前輪1mm、後輪は測定不能だった(前輪駆動のFF車です)。5万kmまで楽勝そうな気配だった。

◆メーカーは推奨していないけど選択肢としてはアリ

 いや、決して万人にはすすめません。未だに世の中、「スタッドレスは冬だけのもの」「そのまま使ったらすぐボウズになる」「特にウェット路面で滑りやすくて危険」「スタッドレスをずっと履きっぱなしにするなんてバカ!」という神話が生きている。雪国でブリヂストンの「ブリザック」が圧倒的に強いのと同じで、一度刷り込まれた神話はなかなか消えない。

 タイヤメーカーも推奨していない。タイヤメーカーやタイヤショップにすれば、そんなのが世に広まったらオマンマの食い上げだ。口が裂けても推奨などするわけがない。

 しかし実際は、スタッドレスの性能向上ぶりは、ダンロップやミシュランなどのロングライフ系銘柄なら、通年履きっぱなしを十分可能にしている。特に、パワーの小さい小型車で、年間走行距離が少なめな方には、冬の備えとしてアリな選択肢だ。私もさすがにフェラーリやランボルギーニにスタッドレスタイヤを履かせようとは思いません。

 丸5年使ったら、アイスバーンではヤバいかもしれないが、太平洋側のたまの雪程度なら十分対応可能。ノーマルタイヤも5年くらいで交換するのが望ましいわけなので、もはやロングライフ系スタッドレスを「オールシーズンタイヤ」と考えても問題はないはずだ。

 マリオの周囲では、私をはじめ、年中スタッドレス履きっぱなし実践者が地味に増えている。

 週刊SPA!の担当Kも、FR(後輪駆動)のBMWで冬だけ3シーズン、合計約1万km使用したピレリのスタッドレスタイヤ「アイスアシンメトリコ」を、FFのシトロエンC5で使いまわして2年、約1万5000km履きっぱなしでスキーにも出かけたそうだ。

「マメにタイヤローテーションをしましたが、5シーズン目の冬はさすがに溝が5mm以下になってきたので、雪国に行くのはやめました!」(担当K)

 担当K曰く、スタッドレスタイヤを履いていることは常に意識していたという。特に、スタッドレスタイヤが苦手な雨の日の走行は気をつけていたそうだが、少なくとも私はスタッドレスタイヤの履きっぱなしで雨の日に怖い思いをしたことはない。雨の日の走行は、摩耗して溝があまりないサマータイヤより、溝があるイマドキのスタッドレスタイヤのほうがマシだと思っている。もちろん、雨の程度にもよりますが。

 ま、ほんの数人の体験談ですが、こんな方法もあるということで……。

取材・文/清水草一

【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

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