ANAの遊覧飛行は抽選倍率150倍。空飛ぶプラネタリウムに感動の声も

日刊SPA! / 2021年2月27日 15時50分

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成田空港を出発して成田空港へという遊覧飛行を実施した全日空。機体はハワイ便に使われているANAフライングホヌA380だったこともあり、飛行機好きからの応募も多く、倍率は驚きの150倍を記録した。 撮影/北島幸司

◆コロナで注目される遊覧チャーターフライトとは……

 チャーターフライトの中でも特殊なのが出発地と目的地が同じ空港となるものだ。出発しても目的地を持たず、出発地に帰る。「そんなフライトがあるのか」と思われそうだが、実はこの遊覧チャーターフライトは20年以上前から行われていた歴史あるフライトなのである。最近ではすっかり正月の風物詩になった「初日の出フライト」がそれ。ANAが2000年にミレニアムを記念して始めたのが起源である。以降、多くのエアラインが手掛けるようになり、コロナ禍の2021年元旦も実施したエアラインがあった。

 旅は目的地があってこそのもの。通常期は、通年で遊覧型チャーターフライトが実施されることは少ない。しかし、コロナ禍で、県をまたいだ移動が自粛される中、旅をしたい欲求は日ごとに増すばかりという人も多かった。

◆応募殺到の日本周遊フライトは150倍の抽選

 このニーズを汲もうと、最初に動いたのはANAである。2019年5月からハワイ線のテコ入れにと成田⇔ホノルル間専用に就航を開始した「Flying Honu」こと空飛ぶウミガメのエアバスA380巨人機を使用した。

 コロナ禍でハワイ線の運航停止したのが2020年3月25日。2機のA380航空機は成田空港に駐機されていた。航空法で、定期便に就航しない機体は整備上の理由の為に3か月毎に一回のフライトを義務付けられている。このニュースを聞きつけた2組の親子がANAに電子メールで提案を行ったのがきっかけだ。

 5月には、乗客を乗せない乗務員だけのフライトを行ったが、それからおよそ3か月後にあたる8月22日にコロナ禍で初の日本の周遊フライトが実施された。この企画が大当たり。150倍の抽選を勝ち取った乗客およそ350人が日帰りの遊覧飛行を楽しんだ。

◆星空、富士山など趣向を凝らしたフライトも実現

 ANAの実施で JALの動向が注視されていたが、約1か月遅れの9月26日に「空たび 星空フライト」を実現させた。これは、夕刻発の遊覧飛行で、空から星空を眺めようと企画されたものだ。ボーイング767‐300ERという従来からの機体でANAほどの新鮮味はなかったが、機内食の提供もある3時間半の充実したフライト時間を設定した。

 実は、FDAフジドリームエアラインズがJALよりも先に遊覧飛行を実現させていた。名古屋小牧空港発着の富士山周遊フライトだ。本邦のエアラインの中では、もともとリゾート地へのチャーター実績が多いFDAは9月20日に実施。抽選倍率が高かったこともあり、翌21日には追加ツアーを実施するなど機動力の高さを見せつけた。

 ANAはこの先、2021年3月にもエアバスA380によるチャーターを予定している。2月中旬の段階で、チャーターフライト実施済なのは、定期航空協会に所属する17社のうち10社にも達するのだ。

◆空飛ぶプラネタリウムを実現させたスターフライヤー

 ここで、異色の遊覧飛行をご紹介しよう。スターフライヤーが10月17日に手掛けたのは、「Starlight Flight produced by Megastar」だ。空気の澄んだ上空で星空観賞をするだけではない。機内に機器を設置して、空飛ぶプラネタリウムにしたのだ。緊急事態に備えて、脱出路を確保するのに機内通路に物を置くことは航空法で禁じられている。それを、単通路のエアバスA320型機でさえ6台ものプラネタリウム機器を設置することで実現させた。窓のシェードを開ければ、実際の星空の見える上空での鑑賞は「感動のひとこと」という体験者の感想だ。

◆子供たちの学習も兼ねたフライトが注目を集める

「空飛ぶ航空教室」と称するチャーターフライトが11月29日に実施された。「向かい風は離陸のサイン」と関西航空少年団の呼びかけに応じる形で、関西空港発着のチャーターフライトを実施したのはピーチアビエーションだ。将来の宇宙飛行士やパイロット、客室乗務員を目指す子供達に夢を届けた。

 ジェットスタージャパンが京成グループと共同で12月12日に実施したのは「ナリタののりもの大満喫ツアー」。京成スカイライナー、空港連絡バス、フライトを楽しめるツアーだ。スカイライナーに乗り、バスで車庫に出向いて見学会やバスとの綱引き体験、航空科学博物館を訪ねてから遊覧飛行が実施された、それこそ盛りだくさんなツアーだった。

◆遊覧飛行はあくまでも一過性のもの

 こうした遊覧飛行は海外でも人気のようだ。オーストラリアのカンタス航空は、2020年10月10日に、ボーイング787‐9型機でシドニーを出発し、グレートバリアリーフ、ウルル・カタジュタ国立公園を巡る8時間半にも及ぶ国内遊覧飛行を実施した。だが、環境への配慮などから、計画はしたものの中止となったケースもあり、この辺りは地域の事情が絡んでいる。

 これらの遊覧飛行は、コロナ禍だからという苦肉の集客策であることは言うまでもない。本来の目的である2地点間定期輸送に戻るまでの一過性の商品だ。航空会社にしても、地上にある航空機では収益を生み出さないからであって、飛ばすことによって利益を生む。それでも、フライト実現のために、多くの部署の多くの人手を必要とするこの商品が長く続くとは考えにくい。多くは、自社のファンを増やすための企業の姿勢の表明に他ならない。コロナ禍が明けた将来は実施されることの少ない遊覧飛行チャーターフライトを体験するのは今だけなのかもしれない。<文/北島幸司>

【北島幸司】
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「あびあんうぃんぐ」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
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