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効いてきてしまった改憲派の「嘘」宣伝。改憲派vs護憲派の公開討論を憲法学者の重鎮が提言

日刊SPA! / 2021年5月29日 8時45分

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◆改憲「賛成」が「反対」を凌駕

 5月3日(憲法記念日)の朝日新聞の報道によれば、「今の憲法を変える必要があるか?」という全国世論調査の結果は、「必要」が45%で「必要なし」が44%であった。これは7年ぶりの逆転である。同日付の毎日新聞でも、改憲について「賛成」が48%で、「反対」が31%であった。

 これで、自民党の憲法改正推進本部などは、「これまでの運動の成果だ」と大いに盛り上がっていることだろう。

 改憲が必要だとする理由を見てみると、自民党が常々広報している理由そのままである。つまり、第一が「国防の規定が不十分だから」で、第二が「古くなったから」で、第三が「米国からの押しつけで、日本の国柄が反映されていないから」である。

 しかし、これらの理由は、私などが機会がある度に指摘しているように、あからさまな無理か、一方的な主張である。

◆背景にある「改憲派」の「嘘」

 まず、改憲派は、「現行憲法は国防を禁止している」とか「現行憲法は命を懸けて国を守っている自衛隊を『違憲』と言わせている」などと主張している。しかし、政府自民党の公式見解は次のものである。

①9条1項は「国際紛争を解決する手段としての戦争」、つまり(国際法上の用語例に従い)「侵略戦争」のみを禁じている。
②また、わが国も国際法上の自然権として自衛権は有しており、それは国連憲章51条で確認されている。
③しかし、9条2項が国際法上の戦争の手段としての「戦力」と戦争の資格としての「交戦権」を禁じているので、わが国は海外に戦争に行けない。
④だから、65条の「行政権」に含まれる警察(警察庁+海上保安庁)の能力を超えた攻撃を受けた場合に対応する能力を備えた第二警察(自衛隊)が日本の領域と周辺の公海と公空を用いて排除する。
⑤要するに、専守防衛に徹する自衛隊は合憲で、わが国は、9条により、多国間の紛争には介入しないが、わが国への侵略は許さない国なのである。

 また、憲法は、上衣や靴とは違い、単に「古くなった」ら当然に変えるべきものではない。時の経過の中で現実の政治と矛盾する条文が出て来た場合には、現実と条文のどちらを改めるべきか? という真摯な議論が先行すべきものである。その点では、9条を変えて米軍の二軍になることと9条を守って専守防衛に徹することの比較検討がまず行われるべきである。また、新自由主義という弱肉強食の資本主義と25条が保障している福祉国家のいずれが正しいか? がまず議論されるべきである。

 さらに、「現行憲法は、米国から押しつけられて、日本の国柄が反映されていない」と言うが、その「国柄」と言われる「明治憲法体制」が日本の2000年の歴史に照らして真にわが国の国柄なのか? の議論が必要である。また、天皇主権、専制、軍国主義、覇権主義の国家が敗戦で生まれ変わったことの歴史的意味をまず再考してみるべきであろう。

 だから、この世論調査に答えた人々は、改憲の論点について深く考えてはおらず、改憲派が喧伝している一方的な「嘘」を吟味せずに受け売りしている状態だと言えよう。

◆改憲派対護憲派の公開論争を

 前述のように「憲法は改正すべきだ」と言う多数派の中の多数が、「国防の規定が不十分だ」と認識しておりながらも、朝日の調査では、全体としては61%の人々が9条の改憲に反対している。その主な理由が憲法が「平和をもたらしたから」である。これは一見して矛盾している。しかし、これも、国民全般が、憲法問題について公平に情報を提供されていないからだと思われる。

 憲法論議に参加してきた私がいつももどかしく思うことは、改憲派も護憲派も、それぞれに同好の士だけが集まって議論を重ねながら、反対派の主張を完全に無視している点である。だから議論が深まらず、それぞれに「囲い込まれた」人々が誤導されてしまっている。まるで新興宗教の対立である。

 この不幸な膠着状態を破るために、改憲派と護憲派の論客達が一堂に会して公開討論を行うことを提案したい。そうすれば、憲法に関する主権者国民全般の理解が深まり、生産的な議論が成立するはずである。

 「櫻井よしこ&伊藤真」といった公開討論会をぜひ観てみたい。

<文/小林節 記事初出/月刊日本2021年6月号より>

こばやしせつ●法学博士、弁護士。都立新宿高を経て慶應義塾大学法学部卒。ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。著書に『 【決定版】白熱講義! 憲法改正 』(ワニ文庫)など

【月刊日本】
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

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