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「この国をどうしたらいいか。30年間ずっと考えてきた」。『本当に君は総理大臣になれないのか』著者・小川淳也氏に聞く

日刊SPA! / 2021年8月26日 8時50分

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本当に君は総理大臣になれないのか (小川淳也・中原一歩著、講談社現代新書)

「地盤・看板・カバン」なし。ほぼ無名の野党議員。しかし、国会における鋭い質問を繰り返す姿から注目が集まっている小川淳也議員。2020年には、小川氏の半生を追ったドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』も話題になった。

 そんな彼に忖度一切なしで迫った本、『本当に君は総理大臣になれないのか』(講談社現代新書)もまた、話題になっている。

 月刊日本8月号に掲載された、同書についての小川淳也氏へのインタビューを紹介したい。

◆最大の問題は「持続可能性」

―― 本書では、いわば「小川総理の政権構想」が明らかにされています。小川さんは日本をどういう国にしたいのですか。

小川淳也氏(以下、小川) いま時代は変わっています。しかし政治が変わっていない。その結果、社会が変わることができず、多くの人々が苦しんでいる。

 それでは、政治を変えられるのは誰なのか。一義的には政治家ですが、最終的には国民です。私自身、政治家の一人として国民と一緒に政治を変えて社会を変えたい、政治の不在で国民がもがき苦しむ現状をとにかく何とかしたいという思いです。

 すでに時代は変わっています。 これまでの世界では「右肩上がり」の時代が続いてきましたが、これからは「右肩下がり」の時代に突入します。すでに世界と日本は「人口減」「人口構造の激変(少子高齢化)」「エネルギー・環境問題」「国際政治の機能不全」という構造的問題に直面しています。

 産業革命以来、人類は地球の資源を浪費しながら「拡大成長路線」を突き進んできましたが、地球の限界にぶつかった今、「縮小脱成長路線」への転換が求められています。地球が有限である以上、無限の成長はありえません。私たちは最も大切にすべき価値観を「成長」から「持続可能性」へ転換しなければならない。

 ここで重要なのは、日本の危機はグローバルな危機に由来するということです。新型コロナウイルスに象徴的なように、現代のグローバル化した世界では、もはや一国のみの平和と安定はありえない。世界の平和と安定がなければ、自国の平和と安定は得られないのです。

 だから、まず日本が世界に先駆けて国内で総合的な改革を行い、持続可能な社会を実現する。その上で、日本のモデルを世界に向けてアピールして国際的な改革を主導する。

 夢物語だと思われるかもしれませんが、日本にはそれをやり遂げるだけのポテンシャルがあるはずです。

 古来、日本は調和を重んじてきた国ですが、それは日本人が日本列島の中で「土地や資源の有限性」を意識しながら生きてきた民族だからだと思います。「もったいない」という言葉が世界的に注目されたように、私たちは有限性の中で生きる知恵と文化を持っている。

 21世紀は人類が地球の有限性を意識しながら生きていかなければならない初めての時代ですが、今こそ日本の出番であるはずです。

 日本のリーダーが国際社会の大舞台で、世界中の人々に向かって真正面から堂々と国際的な問題の解決を呼びかけ、「わが国はそのためにこういう役割を果たす」と訴えかける姿を見てみたくありませんか。私は見てみたい。日本は堂々と正論を唱え、正道を歩む国であるべきです。

◆人間の可能性に賭け続ける

―― 小川さんは本書で、政治家だけで国は変えることはできないと民主主義の重要性を強調しています。

小川 コロナ禍を機に、中国のような専制主義に憧れる風潮が生まれています。しかし、専制主義は強権的な指導者の人格や能力に過度に依存する不安定かつ危険なシステムです。強権的な指導者は「英雄」にも「悪魔」にもなりえます。

 確かに民主主義は完璧な政治制度ではありませんが、かつてチャーチルが言ったように、それでも既存のどんな政治体制よりも良いものであると考えています。

―― 同じ人間が行う以上、民主主義にも危険性が内在しています。

小川 その指摘は、民主主義とポピュリズムの違いの問題につながると思います。

 私の考えでは、理想の民主主義は人々の善意や良心、利他心といった「正の感情」に基づく政治であり、ポピュリズムは逆に人々の怒りや不安、恐怖といった「負の感情」に基づく政治です。

 確かに怒りや不安、恐怖は着火しやすく瞬間的な爆発力がありますが、長続きはしません。それに対して善意や良心、利他心は着火しにくく爆発力もありませんが、一度火がつけばトロトロと自発的に燃え続け、容易には消すことができない。

 民主主義とは、そういう人間の「善」なる可能性を信じて、それに賭け続けることではないか。人間という生き物の大きな特徴は、世のため人のために役に立つことに最大の喜びを感じる、他人の喜びを自分の喜びと感じるということですよね。

 人間は自分だけが幸せでも、本当の意味で幸せにはなれない。だからこそ一人でも多くの人々が幸せになることを目指す、そのために自分から周囲へ「善」の灯火を広げていく努力をやめてはならない。

 だから民主主義を選ぶとは、「どの政治体制がいいか」という判断の問題ではなく、「我々は人間の可能性を信じる体制をとり続ける」という決意、覚悟の問題だと考えています。

 こうして政治家と国民が強固な信頼を築いて本当の民主主義が実現できれば、できないことはないはずです。持続可能な社会を作り上げることだってできる。確かにハードルは高いかもしれませんが、その可能性に賭け続けたい。

◆「天意」を感じる瞬間

―― 小川さんはどうして、それほど世のため人のために一生懸命になれるのですか。

小川 私は30年近く「この国をどうしたらいいのか」と常に考え続けてきました。自分でもどうしてこんなに必死なのか分からなかったのですが、「大欲は無欲に似たり」という言葉に出会ったとき、何となく腑に落ちたんです。

 私は一人でも多くの人が矛盾や葛藤を乗り越え、お互い一緒にいられることを喜び合えるような社会を見てみたい。政治家と国民が信頼し合いながら、力を合わせて力強く歩んでいく日本の国を見てみたい。それが私の「欲」なんでしょうね。もしかしたらそれは、私が誰よりも強欲な人間だということなのかもしれません。

―― 小川さんは「天意」のようなものを感じることはありますか。

小川 私は毎朝、出勤前に目を閉じて「自分は何のために政治家になったのか」と初心を思い出すようにしていて、それは時に30分から1時間、2時間に及ぶこともあるのですが……そうして自己を空しくしていった末に、天意のようなものを感じることがあります。

 「人は天にして天は人なり」というか、多くの人々の切実な願いや切なる思いが集積され集約されていった果てに、天意や天命が合成されるのではないかと感じています。

 そういう人々の思い、天の意思に応えるために、この身を使い切ることさえできれば本望です。

(6月30日 聞き手・構成 杉原悠人)
小川淳也(おがわ・じゅんや)
1971年香川県生まれ。東京大学法学部卒。自治省に入省後、政治家を志す。2005年に初当選を果たし、総務大臣政務官などを務める。2020年には小川の半生を追ったドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』が話題に。著書に『日本改革原案 2050年 成熟国家への道』(光文社)。

【月刊日本】
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

―[月刊日本]―

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