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安倍前首相「不起訴不当」議決の意味<法学者・小林節氏>

日刊SPA! / 2021年8月28日 8時50分

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◆明白な選挙区民接待供応(買収)

 安倍首相(当時)は、本来は国に対する「各界功労者」を首相が招く春の「桜を見る会」に、自分の選挙区の後援会員達に声を掛けさせて多数を招いた。それを安倍事務所がツアーを組織して上京させ、都内の最高級ホテルの一つで前夜祭まで行っていた。その宴会の費用が参加者が支払った一人5000円の会費では賄えず、5年間で900万円を安倍事務所の資金(安倍代議士のポケットマネーだそうだ)で補填した。

 公選法は、有権者を買収・接待供応してはならないと規定し(221条1項1号)、それは犯罪で、5年以下の懲役または禁錮になり(221条1項1号)、さらに議員は当選無効になる(251条)。

◆「記帳漏れ」で秘書だけ略式起訴

 上記の事実は、明らかに、公選法違反の買収・接待供応である。

 ところが、昨年12月、検察は、安倍後援会の会計責任者であった安倍代議士の公設第一秘書を、900万円の金の動きを記帳しなかった、政治資金規正法上の「不記帳」の罪で略式起訴するだけで捜査を終了させた。

 しかし、まず、上司から預かった個人的なお金を「上司の承諾もなしに」900万円も「勝手に」支出しておいて横領罪にもならないことが不可解である。さらに、何よりも、選挙区民に対する「買収・接待供応」という犯罪の本体がお咎めなしで、そのための資金の流れを記帳しなかったという形式犯の略式起訴(罰金刑)だけで済まされて良いものであろうか?

◆日本は法治国家ではないのか?

 これでは、首相であれば国家予算の目的外支出(国費を、国の功労者ではなく、自分の後援会会員の接待に私的に流用した財政法違反)が赦され、かつ、ポケットマネーで自分の選挙区民を買収・供応したことも赦される。そして、単にその買収資金について「記帳しなかった」ことだけを「秘書が」起訴されて一件落着とは、法律の存在を余りにも馬鹿にした話である。

 日本国憲法の下で、わが国は民主的な法治国家であるはずだ。つまり、主権者・国民の直接代表で国権の最高機関である国会が制定した法律は、誰に対しても平等に適用されるべきものである。それが法治国家であり、法の下の平等の保障である。

◆「不起訴不当」議決の意味

 かつて、行政監察の調査で英国に行った際に、私は、「法典を閉じて、常識に照らして判断せよ」という格言を知った。そして、それが今、私の心の中に蘇って来た。

 検察というプロの行政機関(司法の入り口)の「忖度」による法律に照らした技工的判断に対して、世間の常識に照らした判断が、正に、今回の「不起訴不当」の議決であろう。

◆政権交代で情報公開を!

 この議決を受けて、検察は一応、再捜査(再検討)はせざるを得ない。しかし、前回、「証拠不十分」として安倍前首相を起訴しなかった検察である以上、今回、同じ証拠を再検討しても前回と同じ「不起訴」という結論に至ることは目に見えている。とはいえ、同じ検察でも、菅原前経産相による買収、河井元法相夫妻による買収、吉川元農水相の収賄の様に証拠が明らかな事例はきちんと立件している。

 だから、ここまで露骨な買収事件について、検察があくまでも証拠が不十分で嫌疑不十分だと言うならば、政権交代により、政府がこれまで「存在しない」と言い張って開示を拒んできた政府側が保有する情報(証拠)を公開させれば有効である。

 政権交代を実現させるためには、自・公に学んで、野党側も野党共闘を行えば良いだけの話であるが、それが実際には意外と困難で自公政権の延命を許して来た。

 最近の国政選挙では、恒常的に50%以上の有権者が棄権してしまっている。それは、既に過半数の国民が政治に絶望し勝手に「政治を見捨て」ているからだが、それこそが、半ば思考停止の固定客のような自公の組織票の効果を高め、安倍・菅・竹中利権政権の延命を許して来た。

 だから、今、大切なことは、この政治を諦めてしまった過半数の有権者を投票場へ向かわせることである。

 そのためには、「共産党の選挙協力は求めるが、奪還後の政権には入れない」などという理不尽なことを立憲民主党が言わないだけで良い。

<文/小林節 記事初出/月刊日本9月号>

こばやしせつ●法学博士、弁護士。都立新宿高を経て慶應義塾大学法学部卒。ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。著書に『 【決定版】白熱講義! 憲法改正 』(ワニ文庫)など

【月刊日本】
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

―[月刊日本]―

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