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「オタクはイベントがないと死ぬ」コスプレイヤーが語るコロナ禍のオタク事情

日刊SPA! / 2021年8月29日 15時51分

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立花月華さん(Twitter:@tachibanateruyo)と妻の橘沙華さん(Twitter:@orcaNEXT24)

 2年連続のコミックマーケット(以下、コミケ)開催中止により、勢いが失速しつつあるコスプレイヤー界隈。コミケ不開催はコスプレイヤーだけでなく、コミケ文化を盛り上げてきたオタクたちにも様々な影響を及ぼしている。オンラインを活用して趣味活動を続ける人がいる一方、「オンラインでは限界がある」との声も聞こえてくるようになった。

 コスプレを10年以上続けてきた“ベテランコスプレイヤー”によると、「コロナ禍のオタクは完全に二極化している」のだとか。リアルな事情を語ってもらった。

◆夫婦で毎年コミケに参加。復帰しようとした矢先で…

 取材に応えてくれたのは、16歳からコスプレ活動をしている立花月華さん(30歳・Twitter:@tachibanateruyo)。

 立花さんは「併せ(同じ作品のキャラ同士でコスプレすること)」がきっかけで現在の妻と出会い結婚。夫婦で毎年コミケに参加していた筋金入りのコスプレイヤーだ。

「子供が生まれる前までは、ほぼ毎週コスプレをしていました。夫婦で一緒にやる時もあれば、たまに分かれて……って感じで。途中からは同じ作品のコンビキャラを妻と一緒にやることが多かったです」

 娘の誕生を機にコスプレ活動を一時休止。2019年の冬コミから夫婦揃って活動再開を予定していたという。

「2019年の冬コミの1日目と2日目に参加し、昔からの知り合いたちに復帰の挨拶をしました。去年の3月にずっと探していた衣装が運良く見つかったこともあり、完全復帰の準備をしていたところでコロナの流行です」

 漫画『ブラックラグーン』の登場人物、バラライカが着用しているソビエト連邦の軍用コートを手に入れた立花さん。コスプレ用の模倣品でなく、本物のコートを長年探し続けていたそうだ。

「オークションでたまたま出回っていて、やっと購入できたんです。コロナが落ち着いたらバラライカコスをしようと計画していたんですが、最近はもう諦めムードですね。コロナが流行り始めたくらいの頃は、コスプレ仲間と宅飲みや宅コス会もやっていたんですよ。それも緊急事態宣言以降は無くなりました」

 現在はたまに「宅コス」を楽しみながら、コスプレをしない一般参加でイベントを見に行っているという。宅コスやビデオ通話を利用した「オンライン併せ」は今やコスプレイヤーたちの間で日常となりつつあるが、ベテランレイヤーにとっては「うま味を感じられない」そうだ。

◆オンラインでは伝わらないコスプレの良さ

「今は加工で背景を合成できてしまうので、ひとつの作品を作りあげるって意味では宅コスでもどうにかなると思っています。でも僕たちが好きだったのは、コスプレという一文化なんですよね。イベントやスタジオでの人との交流が楽しかったので」

 自宅でひとりコスプレをするだけなら、コロナ禍でも満足できただろう。しかし多くのレイヤーにとって、コスプレの醍醐味は他のレイヤーやカメラマンとの交流だ。こだわりが強いレイヤーほど、オンラインでは満足感が得られにくくなっている。

「コスプレは生で見せるからこそ良さが出るもの・イベントだからこそ出せるものってあると思うんです。『頑張ってこのパーツを作った』とか、『どこどこのメーカーの衣装を手に入れた』とか。そういった細やかなこだわりが、オンラインだと伝わらなくて評価されないんです」

 オンラインならではのデメリットは他にもある。良くも悪くも「家でいつでもできる」からこそ、コスプレの準備が進まないのだ。

「コスプレって、普段は家でやらないようなことをやる趣味じゃないですか。洋服やウィッグを作ったり、メイクやポージングの練習をしたり。それって『何日までにやらなきゃいけない』って期限が決められていて、義務感があったからできたんだなって」

 筆者が今まで取材したコスプレイヤーたちの中にも、立花さんと同じ意見を持つ人は多かった。筆者自身も元コスプレイヤーだが、期日が無く人前で写真撮影をするわけでもない宅コスは手を抜きがちであった。

 お金を払ってスタジオやイベントで撮影する場合、絶対に手を抜けないという緊張感は確かに存在した。画面越しで細部をごまかせる・加工でどうとでもなるオンラインであれば、通常よりモチベーションが下がってしまうのは仕方ないだろう。

◆コロナ禍で顕在化する、コスプレイヤーの能力

 そんな中、活動歴が長いレイヤーほどモチベーション維持のために「ネットでの新規開拓」に勤しんでいると立花さんは教えてくれた。

「コロナ禍以前に自力でイベントや企画を興せていた人たちは、ネットを駆使して新しいコスプレ活動の道を探しています。YouTubeを使ってメイク講座や造形講座を配信する人も増えました。コロナ禍のレイヤーって完全に二極化しているんですよ。イベントが無くて何もできないか、自分で新しいものを立ち上げていくか。見ている限り、ネットに頼らざるを得ない状況を上手くいかせる人と、そうじゃない人の差が激しいと感じています」

 コロナ禍以前からYouTubeにはコスプレ講座の動画がアップロードされていたが、この1年半で動画数、内容ともにバリエーション豊かになった印象がある。中には人気キャラのコスをして料理を作る動画や、映画レビューを語る動画なども。仲間内だけでなく多くの人にコスプレ姿を見てもらいたいという欲求の表れだろうか。

 オンラインでの活路を模索しているのはコスプレイヤーだけではない。コミケを初めとする同人誌即売会が開催できない代わりに、「オンライン同人誌即売会」なるイベントがコロナ禍で登場しているのだ。

◆オンライン上で同人誌を販売

 ネット上のVRプラットフォームを利用し開催されている「オンライン同人誌即売会」。アバターを使って参加でき、バーチャル空間で同人誌の立ち読みや売買ができるシステムだ。昨年から複数の企業・団体が参入しており、株式会社ピクシブ主催の「NEOKET」初回開催では、約200のサークル(クリエイター)と5000人を超える一般参加者が集まった。

 とはいえ、オンライン同人誌即売会について、立花さんは「匂いのないコミケ」と表現する。

「自宅にいて参加できるから、コミケ特有の湿度と匂いが無い。紙の本じゃなくてデータの売買なので、印刷代もかかりません。でもやっていることと空気感はコミケに似ているという評判を目にしています。ネットとPCに強いオタクであれば、リアルイベントが無くなった代わりに徐々にVRで補完していっているようですね」

 実際にクリエイターとして参加した人たちのTwitterを見てみると、それぞれ新しいイベントの形を楽しんでいる雰囲気がある。しかしやはり、今まで通りの即売会イベントを恋しがる声も多い。そしてオンラインに対応できない人たちも、やはり一定数存在しているようだ。

◆コミケが無くなり無収入に

「コミケでの売上で生計を立てていた作家が、イベントが無くなって無収入になったという話もよく聞きます。実際に私の知人にもそういう人がいて、就職の相談をされました」

 大手サークルともなると、1日のイベントで100万円を超える売上が発生する。イベント時にはゴミ袋を金庫代わりにして、売上金を次から次に放り込んでいくサークルもあるほどだ。コミケ文化が今ほど一般的でなかった2007年には、人気の同人誌作家が同人誌の売上を過少申告し、約6570万円を脱税した事件も起こっている。

 オタクたちの精神だけでなく、生活までも支えていたコミケ・同人誌イベントの相次ぐ中止。コロナ禍で浮き彫りになったオタク・コスプレイヤーの問題に対し、ベテランレイヤーである立花さんはこうまとめてくれた。

「最初の頃は、オタクはリアルイベントじゃなくても生きていけるって思っていたんですよ。ただリアルイベントが無いと、精神的にいちばん死ぬのがオタクだったっていう(笑)。コスプレにしたって、アコスタ(大手コスプレイベント)開催時には緊急事態宣言下であろうと人が殺到している。コスプレ趣味がネットと上手く合致していない・しきれていない証拠でしょうね」

 コロナ第5波の影響でますます推奨されるオンライン化。オンラインに対応できないオタク・コスプレイヤーたちは、この社会的な動きの中で果たして生き残れるのだろうか。

 コロナ収束後の世界では、オタク文化も様変わりしているかもしれない。

<取材・文/倉本菜生>

【倉本菜生】
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院在籍中。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。Twitter:@0ElectricSheep0

―[コミケがなかったコスプレイヤーたちの夏]―

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