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ドリフは「痛みを伴う笑い」か? 「ドリフに大挑戦スペシャル」が面白かったワケ

日刊SPA! / 2021年9月30日 15時53分

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「ドリフに大挑戦スペシャル」公式Instagramより

文/椎名基樹
◆予想外に斬新だった「ドリフに大挑戦スペシャル」

 加藤茶、高木ブー、仲本工事の3人が久しぶりに揃って出演した「ドリフに大挑戦スペシャル」(フジテレビ系列)が、予想外に面白かった。「予想外に」などと書いたら失礼である。しかし、昔のドリフのコントを現在のテレビの第一線で活躍する芸人たちが再現すると言う番組コンセプトを考えたら、過去を懐かしむような内容になるのかと想像してしまった。

 しかしドリフのコントは単純明快で、子供がいつの時代も「うんこ・ちんこ」で笑うように、今の時代に再現しても、昔と変わることなく笑えた。逆に新鮮に感じたくらいだ。

 さらに番組の演出が斬新だった。古いドリフの映像と、現在の芸人たちのコントが、いわばリミックスされている構成がしゃれている。例えば昔の映像で、いかりや長介が「もしも〇〇な〇〇がいたら」などとコントの前フリをすると、現在の芸人たちが演じたコントが流れる。

 これって、横尾忠則が「自分のアイディアが盗用された」と訴えて騒ぎになった『男はつらいよ お帰り 寅さん』と同じ手法だ。もし横尾忠則に気づかれてしまったら、今度は、ドリフの番組スタッフが糾弾されるかもしれない。今後の事態の推移を見守りたい。

◆「痛みを伴うバラエティー番組」を審議するって言うけど……

 今回放送されたコントのほとんどが「体を張った笑い」だった。BPOが「痛みを伴うことを笑いにするバラエティー番組」を審議しているというニュースが流れ、それに伴って年末の「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないシリーズ」(日本テレビ系)が休止になったなどと噂になる中、ある意味タイムリーな放送である。

※編集部注:日本テレビは9月27日、杉山美邦社長の定例会見でBPO審議とは「まったく関係ない」と否定した

 近頃ではこの「体を張った笑い」が世間から蛇蝎(だかつ)の如く嫌われていて、さらに芸人からも「誰も傷つけないお笑い」なんて言葉が聞こえてくる。しかし、リビングレジェンドのドリフの3人と、彼らに敬意を持った芸人たちが、「体を張った」コントのVTRを眺める姿は、非常に雰囲気の良い空間が出来上がっていて、なんだか高尚にすら感じられた。伝統が受け継がれていく瞬間だ。

◆「体を張った笑い」が面白いワケ

 これを見てつくづく思ったのは、「体を張った笑い」が面白いのは、他人が叩かれたり、痛い目に合うこと自体が面白いのではなく、コントを演ずる者が、実に楽しげにじゃれ合っているから笑ってしまうのだ。お互い競い合って体を張っていくうちに、楽しくなって興奮していくのが見てわかる。

 今回最高だったのは、劇団ひとりとアンタッチャブルの柴田英嗣のコンビだ。試験勉強をする女子高生に扮した2人。「絶対寝ちゃだめだからね!」とのエクスキューズをした瞬間に、いびきをかいて眠ってしまう。目を覚まさせるために、頭を瓶で叩いたり、顔中に洗濯バサミを挟んで、一瞬で紐を引っ張ったり、鼻をクワガタに噛ませたりする。順番にそれを行っていくだけのコントだ。演じているうちに、2人とも興奮して本気で笑ってしまっている。また、その他のコントを演じた芸人たちも、ひとしきり「体を張って」どこか清々しさが漂っていた。

◆こんなに笑えるものを無くしちゃっていいの?

 芸人たちがこれほど楽しそうに演ずるものを「痛みを伴うことを笑いにするバラエティー」などと単純にひとくくりにして規制してしまって良いのだろうか? 「8時だョ!全員集合」(TBS系列)は視聴率40%を超えていた。多くの人に笑いを提供して、明日への活力を与えていた貴重な歴史を、頭ごなしに否定してしまって良いのだろうか? 何よりこんなに笑えるものをなくしてしまって良いのだろうか?

 じゃれあいの喧嘩は、子供の遊びの基本だ。子供だけでなく犬や猫もそうだ。取っ組み合いながら、生き物はいろいろなことを学ぶ。その中には、どれだけやったら他人を傷つけてしまうかと言うことも含まれる。子供からじゃれ合いの闘争を奪ってしまったことと、首をかしげたくなるような極端な暴力事件が発生する現在の風潮は関係しているだろう。
  
 それと同じように「痛みを伴うことを笑いにするバラエティー」を排除した場合、必ず社会に影響があるはずだ。もちろんその因果関係は証明できない。それどころか社会が失ったものすらぼんやりとしてわからないだろう。しかしそれは必ずとても大切なものであると思う。

【椎名基樹】
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina

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