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借金500万円男。参加費120万円のポーカー大会に誘われるが…

日刊SPA! / 2021年11月23日 15時53分

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―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は67回目を迎えました。

 今回はワクチンを打っていなかったのでカジノに行けなかったお話です。

◆追い続けたカレンブーケドールが出走した天皇賞

 カレンブーケドールが天皇賞に出場するらしい、と知ったのは前日のことだった。

 カレンブーケドールとは僕が唯一応援していた馬で、シルバーコレクターと呼ばれるほど優勝を逃し続けてきた馬だ。去年はこの馬が出る度に馬券を買っていた。

 二つ名の通り、優勝が難しい馬だったので優勝予想で買うのは難しく、どうしても他の馬との組み合わせで買わざるを得ないため、競馬素人の僕はロクに良い思いをしたことがなかった。

 2着の馬に興味はあるが1着の馬がどれになるかはわからない、そんな状況は馬券を買うに適していない。当然去年は「好きな馬だから負けてしょうがない」という言い訳と共にJRAに募金を続ける1年間を過ごした。

 そしてカレンブーケドールはG1の王冠を被ることなく歳を重ねた。同じ歳の名馬はキリのいいレースで次々と引退していく。カレンブーケドールはとうとう3着以内にも入らなくなってしまった。

 接戦のレースを彩る名馬として名前が売れたカレンブーケドール。比べるのは失礼なほどに立場が違うが、たくさんの人に応援されながらも勝ちきれないこの馬を10代の頃の自分に重ねて勝手に応援してしまう。

 せっかく天皇賞に出るし、これが最後かもしれないから買っておこうと思い、その日は出走馬の中からカレンブーケドールの名前を探し、どうせなら他の強い馬も見ておけば良いものの、運命のその馬の名前を見つけるだけで満足して寝るのだった。

◆日曜に早起きはふさわしくない

 翌日。かなり早くに起きた。朝の6時か7時だったと思う。日曜日のそんな時間はまだ起きるにはふさわしくなく、

「せっかく最後なら単勝を買ってやるか」

 なけなしの5000円と心中する決意を新たにし、昼のレースの時まで再び寝ることにした。

 この時点で僕の所持金はほとんど無くなっていた。家賃を払い、返済をすればこうなることはかなり前からわかっていたのだが、なぜか他人事のように指を咥えて口座残高が細くなるのを眺めていたら、こうなった。

 5000円の価値がムクムクと増していく。足元の小さな花も綺麗に見える。

◆二度寝の代償か、はたまた……

 目が覚めたのは16時だった。すぐ側に目覚まし時計が置いてあったにも関わらずスマホの電源を入れて時間を確認する。最近はこういう細かい所作から科学に毒されて頭が悪くなっているのを感じる。

 しまった、と飛び起きた。馬券を買うのを忘れてしまっていた。飛び起きたところでレースは再び始まらない。そしてあろうことか、僕はレース結果を確認する間ずっと最悪の感情に支配されることになる。

「カレンブーケドールが勝っていませんように……」

 カレンブーケドールに対しての1年間の思い出を考えると、そんな邪な気持ちは野暮にも程がある。心まで貧乏になってしまった僕は、「買っていたかもしれない5000円の馬券を撮り逃した自分の損」の心配を先にしていたのだ。

 結果は着外。カレンブーケドールは4番人気だったが、結果は12着。カレンブーケドールを信じる人たちを煙に巻くような、まさに悪女のような走りぶりだった。

 カレンブーケドールを買おうとしていた僕の手元にはまだ5000円が残っている。そしてギャンブル依存症の目線で言うとこれは「勝ち」にあたる。僕は心を邪悪な虫に食われたような居心地の悪さを覚えた代わりに、5000円勝ったのだった。

「最低だ、俺……」

 口にして呟いてみても、口角は下がってくれない。虎の子の5000円の価値は、今や天よりも高く昇っていた。

◆知人からまさかの誘いが来た

 その日の夕方。久しぶりにカジノ関係の知り合いから連絡があった。

「全部出してあげるからWSOP行かへん?」

 急展開だったが、こういう誘いは稀にある。以前ボートレースに連れて行ってくれた人同様、その人もまた「チャンスをあげようか」と甘い言葉をかけてくる。だが今回の話は少し違う。WSOPだ。

 WSOPとは、World Series of Pokerの略称で、文字通り世界一大きなポーカー大会だ。優勝賞金は約10億円と非常に高額で、日本のサラリーマン5人分の人生が手に入る。そして参加費は$10,000。日本円にして120万か130万円くらいだ。

「旅費も」

 この時点で合計約170万円ほどの援助を受けるチャンスを得た。頭の中からカレンブーケドールの残像が消え、煌びやかなカジノの喧騒が蘇る。

「マジっすか?」

 上がった口角が耳まで届きそうだった。カジノには行きたい。金は無い。返せるアテも無いし、借りるアテももう無い。タイミングとしてもちょうど良かった。

「ちょっと予定調べます!」

 返信している間、今仕事が無いかどうかを確認した。ギャンブルで私生活はだらしないが、紹介のアルバイトを投げたりはできない変な性格だった。

 マジで行けるかもしれない。そう思って笑っていたが、一つの重大な真実に気づいてしまう。

◆ワクチンが……ワクチンが……。

「僕まだワクチン一回も打って無いんです。」

 そう、僕はまだワクチンを一度も接種していなかった。大規模接種が始まった頃からホームレスだった僕は、なんやかんやで接種のタイミングを逃し続け、結局10月になるまで予約をしていなかった。

 そしてこの時代、ワクチンを接種していないとカジノに入ることすら許されず、ポーカーの大会も例外では無かった。そのことを伝えると、相手から

「オワター\(^o^)/」

 と送られてきた。殺意の種が芽を出す。競馬で買うつもりだった馬券が外れて5000円勝った気持ちになるさっきの理論に照らし合わせると、僕は丸々170万円を損したことになる。オワタではない。僕は終わったのだ。

「もうその話しないでもらえますか」

◆悔しさが体中を駆け巡った

 僕は完全にキレていた。実際には何も起こっていない。ただ昼過ぎに起き、競馬の結果を見て、知人とLINEをしただけだ。外に出てもいなければ、誰とも会話していない。

 ただ起きてから携帯を眺めていた。それなのに、なぜこんなにも体が熱いのだろうか。なぜこんなにも悔しいのだろうか。布団から一歩も動かずに感情がブンブンと振り回された。

 チャンスは不意にやってくるが、チャンスを掴める手は準備しておかなければならない。

 それに、カジノに行きたいならワクチンは打った方がいい。

文/犬

【犬】
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。
Twitter→@slave_of_girls
note→ギャンブル依存症
Youtube→賭博狂の詩

―[負け犬の遠吠え]―

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