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コロナ禍の貧困は会社員世帯にも。食料支援を受ける家庭が3倍に増加

日刊SPA! / 2021年12月6日 8時54分

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事務所奥はフードバンクの倉庫。賞味期限や種類別に食料が分けられる

 厚生労働省が調査した‘19年の国民生活基礎調査によると、日本の絶対的貧困率は15.7%。なお子供の貧困率は14.0%だった。この国民生活基礎調査は、コロナ禍の’20年には実施されておらず、最新の数値が今のところ出ていない。

「コロナ禍で深刻だと感じたのは、ごくごく一般家庭が貧困状態に落ちていることです」

 そう話すのは、神奈川県座間市の特定非営利活動法人「ワンエイド」の松本篝氏だ。生活困窮者、高齢者、障害者の生活サポート相談を年間2500件も行う松本氏は、5年前から始めたフードバンクでコロナ禍の異変を感じたという。それは食料支援を受けるファミリー層がかなり増えたのだ。「ワンエイド」のフードバンク利用者も、コロナ禍で一気に3倍にも増えた。そのなかでも印象的だった支援家庭の話を、松本氏に聞いた。

◆コロナ禍で夫が蒸発。残された家族たちは……

 北村陽子さん(仮名・40代) は、地域の役員活動も積極的に行う夫と4人の子供を持つ母だ。子供は上が高校2年生、下が中学2年生、3番目は小学生、そして乳飲み子がいた。

 コロナ禍となり、夫が「会社が厳しくて、今月だけ給料が2回に分かれて支給される」と言ってきた。夫の手取りが40万円のところ、北村さんはまず20万円を預かった。「これでまず払えるものを払わなくちゃ……」と光熱費や水道代などを払い、お米を買って残りの給料支給に備えた。

 しかし、ある朝起きると、夫の姿が消えていた。居間のテーブルには、判を押した離婚届。夫は残りの20万円を持って、蒸発してしまったのだ。 松本氏は、初めて北村さんと接したときの様子をこう話す。

「すごくしっかりされていて、決して困窮するような方じゃないんです。ママ友もいないわけじゃない。それだけに、困っていることを人に打ち明けられなかったんですよね」(松本氏)

◆「お米にお醤油やマヨネーズをかけて…」

 コミュニケーション能力があっても、地域にも打ち解けていても、恥ずかしさから本音を言えないのが貧困の難しさだ。松本氏は「サポートを受けたい人が、誰にも知られずに気兼ねなく話ができることが大事」と語る。貧困状態を知られたくない人と鉢合わせにならないよう、時間をずらしたり、ときには場所を移したりして相談を受けることもあるのだ。

 北村さんの話に戻そう。夫が蒸発してしまい、北村さんの家族は一気に貧困状態に陥った。

「まずは子供達にご飯をと思ってお米だけは月初に買っていたけれど、北村さんのご家庭にはおかずを買う余裕がありません。それでお米にお醤油やマヨネーズをかけて食べていたのだけど、そのうち調味料もなくなっていったそうです」(松本氏)

 夫は数か月経てば自宅に戻ると信じていた北村さん。実は通帳の管理を夫が行っていたため、本来であれば受け取れる児童手当をこのときは手にすることができなかったのだ。

◆よその人に貧困を悟られたくない子供達がとった行動とは

 自宅でご飯を食べる分には、おかずがなくても家族同士ならどうにか我慢ができる。しかし困るのは、子供のお弁当だ。北村さんの悩みは、高校2年生の娘さんのお弁当にあった。

「一番上の娘さんが学校におにぎりを持っていくにあたって、自宅に調味料がお塩とお醤油しかない状態だったそうです。お醤油だとご飯に染みてしまうから、塩むすびを学校に持っていく。でも今どきの女子高生のお弁当で、塩むすびは見た目にも寂しいですよね。それで娘さんはお弁当の時間になると『お腹が痛い』と言って、毎回トイレで塩むすびを食べていたそうです。すごく切ないですよね」(松本氏)

 2番目の娘さんは中学2年生。部活に夢中で、バレー部で活躍していた。

「バレー部で遠征があったそうなんですが、お金がないため諦めたそうです。それで娘さんは、飽くまでも部活の時間だけ頑張ろうと。でもこのところの夏場は暑かったでしょう? 本来ならばスポーツドリンクを部活に持たせたいところですが、それができない。自宅で水道水をボトルに詰めて、何とか頑張っていたようです」(松本氏)

 コロナ禍でも時期をずらして遠足を行う小学校は多い。次に北村さんを悩ませたのは、3番目の小学生の息子さんだ。

 フードバンクの支援を受けるときに、息子の遠足が迫っていたにもかかわらず、北村さんは「遠足に持たせるお菓子が欲しい」と言えなかった。息子の顔を見て、松本氏が黙ってお菓子を持たせてくれたことに心から感謝したという。

「ちょうど北村さんが『ワンエイド』の支援とつながったときは、企業の方々からたくさんお菓子をお預りした時期だったんです。それでお菓子を渡したんですよね」(松本氏)

 北村さんはフードバンクの支援を受けながら何とか職を得て、現在子供4人との生活を立て直している。

◆フードバンクを利用するのは保健所も。コロナで自宅待機になった人への食料も

 自民・公明両党は18歳以下への10万円相当の給付について、所得制限を960万円とすることで合意した。まるでザルのような貧困対策だが、「ワンエイド」はフードバンク一つとっても配達をしないし、食料を一律で段ボールに詰めて渡すようなバラマキもしていない。実際に困窮者に会って話を聞かない限り、適切な食べ物も量を渡せないからだ。

 アレルギーはあるのか。自炊はできるのか、電子レンジでしか調理はしないのか。何人家族で何歳の子供がいるのか。フードバンク側が困り感を見過ごさないことで、貧困者は初めて困難に立ち向かうことができる。 またコロナ禍で顕著だったのは、保健所からもサポートの声が上がったことだと松本氏は言う。

「新型コロナウイルスに感染して自宅待機になる方が、今年増えましたよね。今は療養期間の食料支援を行政によっては受けられるのですが、その期間が過ぎても体調が悪かったり、会社から『仕事に来ていいですよ』と言われたりしないと、その間のご飯は自宅にないわけです。それで保健所の方から『少し食料を分けていただけませんか? 私どもが取りに伺います』と連絡が入るんですよね」(松本氏)

 コロナ禍で貧困の水準はグッと上がり、困窮者のラインは一般家庭にまで食い込んだ。政府に今、必要な支援が本当に見えているだろうか。

<取材・文/横山由希路>

※厚生労働省の生活支援特設ホームページでは、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し生活に困窮する方の相談を受付ている
「新型コロナウイルス感染症 生活困窮者自立支援金相談コールセンター」
0120-46-8030(受付時間9:00~17:00 平日のみ)

―[貧困パンデミック]―

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