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「正義の名のもとに老害を排除」――地球防衛隊は何を守るのか?/『地球防衛隊X ①』書評

日刊SPA! / 2024年9月3日 8時49分

 ある日立ち寄った書店ではあぐんだ声で店員が応対している。買い物がてらに聞き及ぶ限りでも明らかに理不尽なクレームに店内全体が嫌な空気に包まれる。コロナ禍以降、頻繁に目にする光景であり、サービス業全般の諸兄共通認識であるカスハラ案件。そこはノブレス・オブリュージュ(身分・地位の高い者にはそれ相応の果たすべき社会的責任と義務がある)とは無縁の世界。

 昔は良かったなんて老害を撒き散らすつもりはない。世界が変わったのか。それとも自分が変質したのか。書店員歴34年。そこそこに経験を積んで、今の書店に店長としてやって来た。それなのに、アルバイトが言う。

「(シフトもう少し入ってくれないかなぁ……)は? 部活とバイトなら部活優先でしょ? そりゃそうでしょ!」
「(出勤時間、過ぎてますけど……)あ、LINEの返事書いてから店に出ます」

 平然と笑顔で話す彼らは異質な存在であっても、彼らからすればこちらが異質であり、お互いが歩み寄るにも対話するにも越えなければいけないハードルや法律が立ち塞がる。経験則から注意した。ただそのことこそが、いわゆる老害なんじゃないのかと気づき、背すじが凍る。

「老害を殺せ」――おおっぴら口には出せない猛毒を現代に投下したコミック『地球防衛隊X』。その先行きがどうなるのかは誰にも想像がつかない。やり場のない憤りを抱える俺の目の前にピロ子が現れてくれないかと夢想する。

評者/柳下博幸
1967年、秋田県生まれ。吉見書店長田店スーパーバイザー兼、某アイスチェーン店長。よく読む本は文芸書からアンダーグラウンドまでジャンルレス。趣味はゴルフ・ラーメン・絵恋ちゃん。

―[書店員の書評]―

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