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【内田雅也の追球】奇跡が起きる場所

スポニチアネックス / 2024年8月31日 8時3分

ニューヨークの地下鉄車内で「スポーツがなければ……」と問いかけるESPNの広告。写真はメッツのワールドシリーズ優勝の瞬間。

 マウンドで抱き合うバッテリーに駆け寄る三塁手のモノクロ写真が目をひく。大リーグ、ニューヨーク・メッツがワールドシリーズで初優勝した瞬間である。1969年だ。大リーグ取材でニューヨーク支局にいた2003年、地下鉄車内にあったスポーツ専門局ESPNの広告である。

 「スポーツがなければ……」とキャプションが問いかける。「誰も奇跡など信じないだろう」

 1962年創設の新興チームは「お荷物球団」だった。初年度の40勝120敗をはじめ4年連続最下位。だから69年の快進撃は「ミラクル・メッツ」と呼ばれた。8月13日時点でカブスに8・5ゲーム差をつけられていたが、残り49試合で38勝し、逆転でナ・リーグ東地区優勝。下馬評を覆し、リーグ優勝決定戦、ワールドシリーズと制したのだった。優勝パレード当日、天気予報は「ニューヨーク地方、晴れ、ところにより紙吹雪」と粋な放送で祝福した。

 ポスターが語るように、古今東西、野球場は奇跡が起きる所、夢がかなう非日常的な所なのだ。

 甲子園球場も幾多の奇跡、ドラマを見届けてきた。夏の長期ロードを終えた阪神はこの日、開場100周年だった今月1日以来、29日ぶりに甲子園に帰ってきた。台風10号の影響で予定の巨人戦は中止。午後2時から2時間足らず、練習を行った。雨は降らなかった。

 2008年を思い返したい。阪神が最大13ゲーム差をつけていた巨人に大逆転で優勝をさらわれた苦い思い出である。

 この日と同じ8月30日時点で首位阪神は2位巨人に7ゲーム差をつけていた。追う側が同じ残り24試合の9月9日でも5ゲーム差だった。今と全く同じ状況である。

 あの年、9月に12連勝など巨人の驚異的な追い上げにあい、優勝を逃した。当時も監督だった岡田彰布は責任を取り、辞任した。恐怖に襲われたという岡田は9月初旬には「優勝を逃せば辞める」と心に決めていた。

 あれから16年。再び監督となった岡田は今度は追う立場だ。やり返す時である。選手に16年前を知る者はいない。それでもタテジマを着る猛虎たちには、DNAとして組み込まれていよう。

 この台風による中止が流れを変えるか。岡田は「そんなん、わかるかいな。後で思うことよ」と言った。そう、誰にもわからない。何が起きるかわからない。 =敬称略= (編集委員)

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