井之脇海 出演舞台で見せる新境地「全力で板の上で進化して、深化して、常に新化する!」
スポニチアネックス / 2024年9月22日 13時27分
俳優の井之脇海(28)が出演する舞台「ボクの穴、彼の穴。W」が東京・スパイラルホールで29日まで上演されている。「これまで出会ってきた発見を全て持って、全力で板の上で進化して、深化して、常に新化する!」と臨む舞台で新境地を見せている。
9歳で俳優としての活動をスタート。20年目の節目を迎えたことしは、ドラマ「9ボーダー」、「ブラック・ジャック」に出演したほか、10月には主演映画「ピアニストを待ちながら」の公開が控えるなど活躍している。
映像はもちろん舞台では、その冷静な眼差しが観客の心を捉えている。
2022年は「エレファント・ソング」で主演。昨年は、岩松了演出の「カモメよ、そこから銀座は見えるか?」などで、しっかりとした演技を披露してきた。
節目に選んだ作品は、フランスの童話作家デビッド・カリ著・セルジュ・ブロック絵の絵本「ボクの穴、彼の穴。」(千倉書房)が原作。二人芝居初挑戦の井之脇は「絵本と戯曲を読み、登場人物が、得体の知れない存在に疑心暗鬼になっていく様は、現在の社会に通じるものがある」と理解を深めていった。
◇舞台には、井之脇が演じる「ボク」と、上川周作(31)の「彼」のみが登場。「戦争マニュアル」を熟読し、戦場で「モンスター」に銃口を向ける二人の若者は、それぞれ穴の中に潜み、互いの出方をうかがっている。
一日の始まりは、銃声が知らせる。鋭い響きには緊張感があるが、上川演じる「彼」は「スイーツ好きで内向的な僕が、銃を撃っているなんて、信じられない」と吐露。訓練を積んだ兵士ではない、普通の若者の嘆きは、日常と戦争が地続きにあることに気づかされる。
対する井之脇も相手を想像していく中で、対峙しているのは男ではなく、「女性かもしれない」と妄想。「女ソルジャーと恋がしたい!」と暴走するが「男として至極まっとうな思いだ」と分析していく。
相手を想像していく中で二人は「早くこの戦争を終わらせたい」という思いにたどり着く--。
二人芝居だが、それぞれの穴で過ごす両者が言葉を掛け合う場面はほぼない。
「これまでどんなことに耐えたことがある?」など井之脇や上川が発した言葉に、舞台上で回答する者はいないが、全身を使ってぶちまける言葉に観客は「自分なら」と考えずにはいられない。
ボクと彼と共に、観客も思考を巡らせる90分。舞台は井之脇と上川が結成した「ボクチーム」と、舞台初挑戦の窪塚愛流(20)と篠原悠伸(32)の「彼チーム」の2組がダブルキャストで出演する。
29日まで同地で。10月4日から6日まで大阪・近鉄アート館で上演される。(西村 綾乃)
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