【スポニチスカウト部(30)】帝京・富浜琉心捕手 勝負強さ光る打てる捕手 指名漏れも進学せず独立L
スポニチアネックス / 2024年9月24日 6時2分
今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手の素顔を紹介する。第30回は帝京(東京)の富浜琉心(りゅうしん)捕手(3年)。名門から唯一、プロ志望届を提出した強打者に決意を聞いた。
最後の夏を終えても、黙々とバットを振り続けてきた。名門・帝京から唯一、プロ志望届を提出した富浜は「この先は厳しい世界になるが、そこで勝負していきたい」と強い覚悟を明かした。
高校最後の本塁打は衝撃の一発だった。関東第一との東東京大会決勝。2点を追う3回2死一、二塁で打席に立つと、初球の甘く入ってきた直球をフルスイング。今春から完全移行した低反発の金属バットとは思えない鋭い打球は、神宮の左翼スタンド中段に突き刺さった。だが、5―8で敗れ甲子園出場はかなわず。勝ち越しを許した5回に2失策するなど計4失策と守備が乱れ「自分が逆転ホームランを打って一球の重みを知った分、一つのミスで流れが変わってしまう恐ろしさもよく分かった」と野球の怖さを痛感した。
この一年はチーム事情もあり一塁を守ることも多かったが、この先は「捕手一本」と決めている。小学5年から捕手を始め「試合の流れとかを感じながら守るのが面白くて」と楽しさを実感。守れるだけでなく打てる捕手が理想で、夏以降は木製バットでの振り込みを続けてきた。
強い覚悟はこれだけではない。ドラフト会議で指名漏れした場合は、大学への進学ではなく独立リーグへの入団を志望。「大学は4年あると思ってしまうと自分に甘くなってしまうので」とあえて厳しい世界に飛び込む。この決断には帝京で過ごした3年間の経験が大きく影響。「帝京でも厳しい中でやって結果が出たので、一日も無駄にできない環境でこれからも過ごしたい」と見据えた。
高校通算7本塁打のうち、5本を公式戦で放つなどチーム随一の勝負強さを誇ってきた。「一振りで流れを変えられるような選手になりたい」。ここぞで頼りになる強打者を目指し、新たなステージでの活躍を夢見ている。(村井 樹)
≪大一番で打てる理由≫強打者が並んだ今夏の帝京打線の中で、チーム一の勝負強さを誇ったのが富浜だった。夏の東東京大会では準決勝、決勝と2試合連続本塁打。東海大菅生との春の都大会決勝でも9回にサヨナラ3ランを放った。大一番で力を発揮できる要因は「この一年はネクスト(バッターズサークル)での過ごし方を変えた。ピッチャーの分析はもちろん、それだけでなくメンタルを安定させることに集中したらいい結果が出るようになりました」と分析した。
≪「現状維持は退化」ナイン鼓舞する指揮官の言葉≫
帝京の練習場は、いつも公式戦以上の緊張感に包まれている。全員が日本一を本気で目指しているからこそきつい言葉もかけ合うが、決して雰囲気は悪くならない。
練習からこの空気感をつくっているのが金田優哉監督だ。熱血な指揮官が練習の間、何度も選手にかける言葉がある。「現状維持は退化」だ。「毎日、何かは昨日の自分を超えてほしい」という願いを込めており、きつい練習の時ほど選手を鼓舞するために口にしている。「金田監督の指導は技術だけでなく、人間的に成長できる。だからここで甲子園に出たいという選手がたくさん集まると思う」と感謝したのは富浜。甲子園は11年夏を最後に遠ざかっているが、名門復活を果たす瞬間はもうすぐ訪れそうだ。(アマチュア野球担当・村井 樹)
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