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ソフトバンク「美しい野球」結実V 小久保監督「懸命に戦った選手たちに胴上げしてもらえて本当最高」

スポニチアネックス / 2024年9月24日 5時32分

胴上げされる小久保監督(撮影・岸 良祐)

 ◇パ・リーグ ソフトバンク9―4オリックス(2024年9月23日 京セラD)

 大きく羽を広げた鷹が、4年ぶりに頂点へ舞い上がった――。優勝マジックを1としていたソフトバンクは23日、オリックス戦の終了直前に2位・日本ハムが西武に敗れ、優勝が決まった。試合には9―4で勝ち、2020年以来、22度目となるリーグ優勝(1リーグ制含む)に花を添えた。就任1年目の小久保裕紀監督(52)は巨大戦力を持て余すことなく使いつくした上「王イズム継承」や「美しい野球」といったテーマを打ち出し、首位を譲ったのはたった2日の独走劇。完璧で美しかったが、スポニチ本紙へ寄せた色紙には「よかった、ありがとう」の文字。どれだけゲーム差は離れても、重圧からは逃れられなかった。開放された夜。次に狙うのは10月12日に開幕するクライマックス・シリーズ(CS)を勝ち抜き、20年以来、4年ぶりとなる日本一を狙う。

 敵地ドームの天井が近づくたび、満面の笑みは美しくなっていった。春先から習慣化した夜食後16時間のプチ断食と1日2食で、体重は82キロ。最重量時より12キロ減った小久保監督は8度、宙を舞った。優勝監督インタビューで、その目は少しずつ赤くなっていった。

 「2月のキャンプからこの日のためにチーム全員でやって来たので。懸命に戦った選手たちに胴上げしてもらえて本当最高でした」

 23年10月23日。就任会見に臨んだ指揮官は「王イズム」の継承をテーマとし「主力が先頭に立って引っ張るチームづくりをしたい」と構想を明確にした。

 ダイエー初優勝の99年。4番・小久保は球宴まで打率・185。監督室で「4番を外してください」と懇願した。ただ、当時の王監督の返答は「俺は外さん」。猛練習後に部屋に一人こもって瞑想(めいそう)を続けるなど心身でもがいた。指揮官に教えられた言葉も響いた。「人は勝っているときの後ろ姿は変わらない。負けているとき、逆境のときこそ、真価が問われるんだ」。そして自分で答えを見つけ、真の主砲に成長した。

 今季、姿が重なる男がいた。4番・山川だ。5月末から30試合連続本塁打なし。球宴前夜に札幌市内の日本料理店で「もう覚悟を決めとけ。どんなに悪くても4番を外さんから。逃がさんから」と縮こまる巨体に熱を注入した。「俺の99年より打ってるよ。おまえが全然、上や」と和ませながら奮起を待った。

 さらに7月上旬に黒星が連なる事態。当時2位のロッテに6ゲーム差とされたが4番は不動。揺らぎ、悩むも恩師のように「俺自身がそこはブレない」と腹を決めた。そして山川は復調し、打撃2冠を快走中。これぞ、主力が躍動する野球の実現。この日の激闘後、王会長と右の拳がつぶれるほどの固い握手を交わし頭を下げた。四半世紀を経て「王イズム」の継承者となった。

 勝負で隙をつくることを許さない姿も世界の王と重なる。6月8日のDeNA戦。周東が投ゴロをアウトと自己判断。一塁手が捕球ミスもラインの内側を通ってベンチに戻ろうとして挟殺になった。試合直後、4軍までの指導者にフェアエリアからベンチに戻ること禁止する通達を出した。トップダウンで伝え、認識を共有した。

 そんなストイックな男が時代に合わせて変化した。「僕の時みたいに“日が暮れるまでバットを振れ”という時代でもない。1軍は自分で考えて個人でやれるから一流。“任せたよ”で責任感は生まれる」。昨秋の時点で大まかな今季の全休日を決め、選手のケアの予定を支えた。全体でのウオーミングアップ、ベンチ前の声出しも廃止。本拠地での2軍の「親子ゲーム」もやめさせ、実在投手の球質を忠実に再現する最新マシンの活用を促し、控え選手の実戦勘を持続させた。

 全員で戦った。投手関連は倉野投手コーチに任せ、打順は村上、村松両打撃コーチに月交代で提案させた。「人の言うことを受け入れ、人をちゃんと使うもんだと感じた」と笑う。気配りはグラウンド外にも。6月中旬に仲田、緒方の支配下昇格祝いに右脚負傷で離脱中の柳田を2人へのサプライズゲストで呼んだ。すし店のカウンター席で「野球人生、ネタ探しや」とおどけ現役時代に41本の骨が折れ、8度も手術した男は過去を笑い話にした。「むちゃくちゃ楽しすぎた」と柳田。その主砲は20日の2軍戦から実戦復帰。再び、戦力になろうとする。

 「長丁場をいかに健康であるか。健康じゃないと直感力はさえない」と最高品質のオイルを積極摂取するなど体とも向き合った。「見ている方が不快な思いをしない優しさ、強さ、美しさを伝えたい」と語る「美しい野球」を背中でも示した。

 次は20年以来4年ぶり日本一を狙う。小久保監督は「今日は余韻に浸り、楽しみます。しかし、明日以降はクライマックスシリーズを見据え、どこの球団が上がってくるかの分析、戦術を切り替えていきたい」と誓った。再び強く、美しく、制する。(井上 満夫)

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