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“気遣い右腕”日本ハム・鍵谷 一度は断った引退試合で魂の零封締め

スポニチアネックス / 2024年9月26日 7時59分

<日本ハム鍵谷引退会見>家族から花束を贈られ笑みを見せる鍵谷(撮影・高橋 茂夫)

 ◇パ・リーグ 日本ハム1ー3楽天(2024年9月25日 エスコンF)

 今季限りで現役を引退する日本ハム・鍵谷陽平投手(34)が25日、引退試合となる楽天戦に打者2人限定で先発し、2/3回を無安打に封じ、プロ12年間の現役生活を締めくくった。通算420試合目の登板は、チームの6年ぶりのクライマックス・シリーズ(CS)進出が懸かった大事な一戦。新庄剛志監督(52)の粋な計らいで用意されたマウンドで有終の美を飾った。また、チームは1―3で敗れてCS進出は持ち越しとなった。

 最後まで涙をこらえようとしたが、鍵谷の目には光るものがあった。試合後の引退セレモニー。サプライズで流された懐かしい友人たちのメッセージ動画に胸を熱くした。同期入団のドジャース・大谷からは「少し悲しいですが、またそれと同時にもっと頑張りたいなという気持ちになっております」と伝えられると、驚きながら笑顔でこう答えた。

 「びっくりしました。(試合前の)会見で“知らないんじゃない”と言ってしまい、申し訳なかった。すみません。失礼しました」

 真剣勝負の9球だった。先頭の小郷は直球で入り、2球目をフォークで二ゴロ。当初打者1人の予定も新庄監督からの指示で鍵谷は続投し、続く小深田はフルカウントから“代名詞”の147キロ内角直球で遊直に仕留めた。「小郷君も小深田君もやりづらい雰囲気で真っ正面から対戦を受けてくれて感謝している」。花束を持った新庄監督に降板を告げられ、自軍ベンチ前で全員と握手を交わした。

 気遣いの人。チームメートはもちろん、スタッフもそう評す。この日の登板も一度は断った。「チームが大事な時期に、余計な気を使わせたくない」。当初はセレモニーだけの予定だったが、それを聞いた新庄監督が球団に交渉。指揮官からSNSのダイレクトメッセージで「25日先発!楽しく格好いい姿を最後見せてくれ!」と伝えられ、登板を決意した。

 先輩、後輩関係なく誰からも慕われた。17年に2軍降格した際には、鎌ケ谷の勇翔寮で食べ盛りの後輩たちに何度も食事を振る舞った。若手が自主トレ中、一人で大型スーパー「コストコ」まで出かけて食材を調達。調理までこなし、「食トレ」と題して自室に呼んだ。当時新人だった田中瑛は「全部一人でやってくれるから逆に申し訳なくて。でも、本当にお世話になった」と感謝する。

 「北海道に生まれ育って、途中修業に出ましたが、最後プレーヤーとして戻ってこられて良かった。これからどういう形になるか分からないが、何かの形で恩返しがしたい」。未来の道産子球児たちのためにも身をささげた12年間。最後は仲間の手で胴上げされ、現役生活に別れを告げた。(清藤 駿太)

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