どうしようもない変態?それともクセのある女子に翻弄される純な子羊?映画『惡の華』に見る中2男子に共感必至!?

Suits-woman.jp / 2019年9月28日 10時30分

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押見修造による原作漫画を井口昇監督が気合いの演出で実写映画化した『惡の華』。『今日から俺は‼』などで注目度急上昇中の伊藤健太郎くんが演じる主人公の春日高男は、ついうっかり、出来心で、大好きなクラスメイトの体操服をこっそり盗んでしまう中学2年生。そこから始まる怒涛の物語とは?

『惡の華』(C)押見修造/講談社(C)2019 映画『惡の華』製作委員会

『惡の華』
(配給:ファントム・フィルム)●原作:押見修造「惡の華」(講談社『別冊少年マガジン』) ●監督:井口昇 ●脚本:岡田麿里 ●出演:伊藤健太郎、玉城ティナ、秋田汐梨、飯豊まりえ、高橋和也、佐々木すみ江、坂井真紀、鶴見辰吾ほか ●公開中

(あらすじ)
ボードレールの詩集『惡の華』を愛読書にする中学2年生の春日高男(伊藤健太郎)。山に囲まれた地方都市で周囲への嫌悪を募らせ、息苦しい日々を送っていた。ある日放課後の教室で、密かに想いを寄せる佐伯奈々子(秋田汐梨)の体操着を咄嗟に盗んでしまう春日。その姿を目撃したクラスメイトの仲村佐和(玉城ティナ)から、ある契約を持ちかけられる。

Mな心が炸裂する暗黒の青春映画

周囲を山に囲まれた地方都市。商店街には錆びついた看板が並んでいて、心をトキメかせるような、見るべきものなんてなにもなくて、ただ“ここからは出られない”という閉塞感ばかりが漂うような街です。主人公の春日高男は、中2のくせにボードレールの詩集『惡の華』を愛読書にする、いや「俺は『惡の華』を愛読する人間なのだ」という自分に酔う孤独な男子。彼にとって毎日はただぬるいグレーに塗り込められたような、閉塞感というずぶずぶの海をもがくような日々でした……。

映画『惡の華』はある種の地方出身にとってとても他人事と思えない、「わかる~!」に満ちた日常を生きています。原作は『スイートプールサイド』(←この映画版もサイコー)、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の押見修造。監督は『恋する幼虫』とか『電人ザボーガー』とか、最近だと『覚悟はいいかそこの女子。』みたいなラブコメを撮っちゃったりした井口昇。原作者が「これを井口監督に撮って頂くことが長年の夢だった」といい、そんな井口監督も「『惡の華』という星があったらそこに住みたいくらいに自分にフィットした」と6~7年前から映画化を熱望していたという幸福な組み合わせが実現。そんな2人の、どうにもならないMな心が炸裂する暗黒の青春映画――それが『惡の華』なのです。

このブルマを盗んだために、巻き起こる悲喜こもごも。

緻密な演技で、原作を超えた!?見た目で、どハマリなキャスト陣

主人公の春日高男を演じるのは伊藤健太郎。最近だと話題の連ドラ『今日から俺は‼』で髪の毛がトンがり過ぎたツッパリ、伊藤を演じていたのがこの人。身長179cmのスラリとした長身で、大きなおめめが印象的な爽やかイケメンで、学生時代はバスケットに打ち込んだスポーツマン……って、全然春日じゃないじゃん!そこをおどおどした表情とかもたもたした仕草とか猫背とか、周囲から自分の身を守ろうとするかのようにカバンを抱きかかえるように持ったりするなど、細かい演技の積み重ねで春日を構築、ナチュラルな説得力を持たせます。

しかも春日はハンパなイジメられキャラ、ではありません。彼が心密かに憧れるのはクラスのマドンナで、体育時のブルマ姿も清らかな佐伯奈々子。誰もいない放課後の教室で彼女の体操服(とブルマ)を発見した春日は反射的に胸いっぱいに匂いを嗅ぎ(→このときの恍惚とした表情!)、これまた反射的に自宅に持ち帰ってしまいます。しかもそんな春日を、そこまでやるか!?と思うほどに全力で演じる伊藤健太郎。やるな!と思わせる役者魂を見せつけます。

そうして、春日のその決定的瞬間を目撃するのが仲村佐和です。お人形のように整い過ぎた顔立ちに無口で近寄りがたい空気を身にまとい、白紙でテストを提出した彼女を叱責する教師に向かって「うっせー、クソムシが!」と鋭く言い放つ、すべてがキレっきれの女子です。そんな仲村さん役を演じる玉城ティナ、ハマり過ぎ。原作の漫画以上に漫画ちっく(←いい意味で!)。仲村さんは春日の決定的瞬間を目撃、「バラされたくなかったら、私と契約しよう」――春日は仲村さんに振り回されることになります。

その他、佐伯奈々子役の秋田汐梨も、男子にとっての夢の女子!だけではない佐伯さんの暗黒面をじわっとにじませてなかなかの演技力。注目の女優さんです。高校生になった春日が出会う常磐文役で飯豊まりえも登場。よく考えたら、春日の回りは美女ばっかりじゃん。モテモテ~!?みたいな気になります。でもその内に渦巻くものは?

契約の果てに、得たものは……?

ただの変態、と思わせない理由とは?

春日は佐伯さんの体操服の匂いを「繊維まで全部吸い取って!」(←ブルマへの思い入れの深い井口監督の演出)という勢いで吸うわけで、そうした行為は簡単に言って、いやかなりのレベルで変態と言えましょう。なのに映画を観ていると、春日への嫌悪感が湧かないから不思議です。感じ方はもちろん人それぞれかもしれませんが、彼の姿が必死過ぎるからなのか、「そうだよね。好きになった女の子の体操服、匂いを嗅ぎたくなるよね……」と、気づけば共感してしまっているのです。

それは原作の持つ力か、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』そして絶賛公開中の最新作『空の青さを知る人よ』でも山に囲まれた秩父を舞台に生きづらさを抱える若者たちを繊細に描いてみせる岡田麿里による脚色の的確さなのか?異様なまでの気合いを感じる井口監督の演出か、どハマリなキャスト陣の演技力か?……わかりません。なんなのでしょう?

それから春日がたどる女性遍歴、というと華麗ですが中学生から高校生へかけての女子を巡る(振り回される)ドタバタはリアルにも思えます。現実よりずっと妄想の方がひりひりとした力を持っていて、徹底して自分に自信がなく、初めて遭遇する出来事やそこから湧き起こる初体験の感情に、文字通り死にそうなまでに振り回される日々。ああ自分にも、そんなころがあったなあ――。『惡の華』が上等の青春映画であることは、確かに間違いなさそうです。

文・浅見祥子

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