同一労働と同一業務の違いは!?元派遣社員の弁護士が、同一労働同一賃金の5つのポイントを解説~その1~

Suits-woman.jp / 2020年11月1日 14時0分

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先日、正社員と非正規社員の待遇格差をめぐる各裁判について、最高裁判決が出ました。

これらの判決を受けて、派遣時代の知人からは「非正規は、退職金とかボーナスが出ないってことだよね」と、企業からは「非正規社員には、手当は出さなくちゃいけないけど、退職金とボーナスはいらないんだよね」といった質問を受けました。

これは、どちらも正しくありません。今回は、具体例をあげつつ、同一労働同一賃金を考える際のポイントなどを考えてみたいと思います。

賃金額の話はお互いタブーだった派遣時代

本題に入る前に、筆者の経験を少しお話したいと思います。

筆者は、弁護士になる前は、派遣社員として各社を転々としていたのですが、職場の規模が大きくなるほど、非正社員の割合が大きかったと感じていました。
非正社員の種類も様々で、企業と直接契約を結んでいる契約社員やアルバイトと、派遣会社から派遣されている派遣社員が混在している職場も少なくなく、派遣社員も、異なる数社の派遣会社から派遣されている職場もありました。

いずれにしても、互いに「賃金額や待遇についてはお互いに質問してはいけない」という暗黙のルールがありました。

非正社員の中でも、賃金額や待遇が違っていたからです。
しかし、人の口に戸は立てられません。「A派遣会社だと時給〇円なのに、B派遣会社は×円、契約社員は△円」といった話が漏れてきます。

時給が50円でも違えば、月額で1万円近く違ってくるので、非正社員の中でも、嫌な空気が流れたものです。

プログラマーなど技術職の派遣の方は、もっと格差が大きく、同じ職場で同じ業務を行っているのに、派遣会社が違うだけで、倍以上も賃金に差がある方々もいました。

そんな職場の正社員はどうかというと、よくある光景かと思いますが、これぞ正社員という姿勢で責任をもって仕事をされている方と、延々とマインスイーパ(フリーセル派もいる)をやっている方や30分ごとに化粧直しや喫煙をしている方など、いろいろでした。

振り返ると、正社員と非正社員との間で不公平感が生じるのは、筆者の経験では、以下のような場合でした。
・働いていないように見える正社員がいる場合
・非正社員の業務が賃金に比べてキツい場合
・正社員と非正社員で特に業務に差がないのに待遇が違う場合

業務内容に差がないのに!……そんな不満を抱える人は多い。

同一労働同一賃金の原則は、2021年4月1日にはすべての企業が適用対象

同一労働同一賃金の原則とは、同じ企業の正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇格差の解消を目指す考え方をいいます。

これまでも、労働契約に期限の定めがあるか否かで不合理な格差を設けることは労働契約法やパートタイム労働法で禁じられていました。しかし、依然として正規雇用と非正規雇用の待遇格差が改善しなかったため、働き方改革の一環として派遣法も含む労働法制の改正がされました。

正規雇用労働者とは、無期雇用フルタイム労働者、いわゆる正社員のことです。
非正規雇用労働者とは、パート、アルバイト、契約社員、嘱託社員、派遣社員など非正社員のことです。

現在、改正派遣法は全企業に、パートタイム・有期雇用労働法は大企業に適用されていますが、2021年4月1日には、中小企業も、パートタイム・有期雇用労働法の適用対象となります。

詳しくは後述しますが、大切なポイントは、解消の対象は「不合理な」待遇格差ということで、待遇に差があること自体は否定されていないことです。

不合理な格差かどうかは、ケースバイケース、あくまで個別に判断するもの

正社員と非正社員との待遇の格差についての、各最高裁の結論は以下のようなものでした。

・アルバイトのボーナス
 →支給しなくても不合理とまではいえない

・契約社員の退職金
 →支給しなくても不合理とまではいえない

・契約社員の手当など(扶養手当、年末年始勤務手当、夏期冬期休暇など)
 →正社員には与えられるのに、契約社員には与えられていなかったことは、不合理な格差(支給しないことは違法)。

このような結果に対しては、「非正社員には、ボーナスや退職金がいらない」という結論が一般論であると誤解し、不愉快に感じた方や安堵した経営者の方もいたようです。

しかし、「不合理な」待遇格差かどうかは、個々の具体的ケースについてそれぞれ判断されるもので、今回の最高裁の判決も、あくまで、それぞれの事件についての結論であって、一般論として、非正社員には退職金やボーナスが不要であるという判断がされたのではありません。

不合理な格差かどうかは、個々のケースごとに判断されるため、経営者の方は、自社の取組状況を点検・確認された方がよろしいでしょう。
厚労省では、自社の状況を点検できるツールやマニュアルを公開しています(厚労省ホームページ「同一労働同一賃金特集ページ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html)。

なんとなくイメージはできる同一労働同一賃金ですが、その文言から、誤解も生じやすいように思います。
そこで、その2では、同一労働同一賃金について考える際の視点について触れてみたいと思います。~その2~に続きます。


弁護士
熊王斉子

弁護士。派遣で働きながら司法試験の受験を続け、度重なる不合格にめげず弁護士となる。司法試験合格までに転々とした派遣先は30社以上。図らずも、この多業種での職場経験が活きることになり、現在は企業にまつわる案件を主に取り扱っている。日本化粧品検定1級合格。好きな言葉は、「あきらめたら そこで試合終了ですよ」「来た船には乗ってみる」。島村法律会計事務所https://simamura-law-ac.jimdofree.com/

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